距離を置いたほうが親の大事さが分かることもある

――『心の詩~扉の向こうに~』は父と家族の関係性を描いたヒューマンな映画ですが、初めて脚本を読んだときの印象をお聞かせください。

松本 わりとリアルな内容で、どんな人でも登場人物の誰かに自分を重ね合わせることのできる映画だなと思いました。

――松本さん自身、この映画の登場人物のように、家族とのコミュケーションに苦労した経験はありましたか?

松本 ありました。僕は中学生のとき、父親に対しての反抗がひどかったんです。いわば、ちゃんと反抗期を通ってきたタイプと言えます(笑)。だから僕の演じた聡の、父親に対する接し方などは似ている部分がありました。

――松本さんの反抗期は年齢特有のものでしょうか?

松本 かもしれません。今ではすごく仲がいいんですけど、中学生くらいだったので反抗したんでしょうね。ただ、反抗期を経て、仲直りをしてから気づいたのは、親って大事なんだなということ。僕は親元を離れて、東京に出て来てから気づいたことも多かったですね。距離を置いたほうが分かること、見えてくるものはあるのかもしれません。

――聡は松本さんの年齢よりも年下の大学生ですが、演じる上で心掛けたことはありますか?

松本 弟だけど弟っぽくないというか、姉を引っ張っていったり、支えたりするシーンが多いんですよね。でも実際、姉弟で話すときってそういうものかなと。なので、弟だからといって、わざわざ弟っぽく演じるのも変だなと思ったので、なるべく普通の家族ということを意識しました。

――聡の姉・未来を演じた主役の矢倉楓子さんの印象はいかがでしたか?

松本 役柄上での設定と違って、妹みたいで可愛らしい方なんですが、周りも見えているし、自分を持っている方だなと思いました。

――現場の雰囲気はいかがでしたか?

松本 5日間で撮らなければならないタイトな日程で、監督、キャスト、スタッフを含めて全員の息が揃わないと間に合わない撮影でした。それだけに大変なこともありましたが、みんなで力を合わせて撮り切ることが達成できたのはすごいなと思います。すごく濃密で、みんなと話す時間も多くて、面白いし、とてもやりやすい雰囲気でした。監督とも「こういう風に演じたい」「このセリフだったらこっちの方がいい」など、コミュニケーションをしっかり取りながら演じられたのも良かったです。

――改めて『心の詩~扉の向こうに~』の見どころをお聞かせください。

松本 当たり前のことが当たり前ではないということに気づかされる映画です。失ってからじゃないと気づけないことも多いということも描かれているので、この作品を観た後、家族との時間を大事にして、大切なものを失わないようにしようと思ってもらえたらうれしいですね。