さよならする寂しさや名残惜しさ、決意がぎゅっと詰まった「青藍遊泳」
――ニューアルバム『1999』のタイトルには、どういう由来があるんですか?
にしな 2つあるんですが、1つは昨年、1枚目のアルバムを出して、今回は2枚目で1歳になったこと。私が1998年生まれなので、そこから1年間、時を刻んだということです。もう1つは1999年にノストラダムスの大予言があって、もちろん私は全然記憶がないんですけど、「地球が終わっちゃうと宣言された人たちって、どんな気持ちなんだろう」「今も戦争があるけれど、本当にみんなが『明日地球が終わっちゃう』と信じていたら、嫌いな人のことを考えて過ごすよりも、好きな人と時間を過ごすだろうな。地球が最後の日って悲しく聞こえるけど、実は人類にとって素晴らしい日になるのかもしれないな」なんて思いながら書いたのが表題曲です。今のこの時代に戦争があるって、自分の中では現実的に捉えられない部分もあるんですけど、そんなタイミングだからこそ希望も込めて、このタイトルを付けました。
――約1年ぶりのアルバムですけど、歌い方やレコーディングも含めて、自分の中で成長を感じたことはありますか?
にしな 制作時期はバラバラだったんですけど、この1年間、自分らしさを大切にしていて、その期間に録ったものがアルバムに入っています。自分で自身を縛らない、自由な状態で歌った曲が詰まっているのかなと思います。
――コロナ禍が落ち着いて、有観客でのワンマンライブを行い、曲作りに変化はありましたか?
にしな ある気がします。もともと、私は自分一人のところからスタートして自分のことを歌ってきたけど、広い世界が見えるようになってきたし、いろんな人に聴いてもらえる曲になったらいいなという思いが湧いてきました。
――先行配信の「青藍遊泳」は、「仲間と離れて自分の道を進むことを決意して作った楽曲」とのことですが、どういう背景があったのでしょうか。
にしな 音楽を始めたときから、ずっと弾き語りという形は貫き通してきているので、基本は一人なんですけど、途中、バンドを組んだり、グループに入ったり、いろんな形態を経てきて。「青藍遊泳」は「ここから先は”にしな“として、一人だけでやっていこう」と思ったタイミングでできた曲なんです。曲の背景には、グループを抜けるときの最後のライブで、スタッフさんがBGMにユニコーンの「すばらしい日々」を流してくれたんです。そのときは気づかなかったんですけど、それを後から聞いて、「そんなことしてくれてたんだ」と歌詞を読みながら改めて聴きました。”君は僕を忘れるから、そうすればもうすぐ君に会いに行ける“という最後のフレーズが、グループを抜ける身として響いて。ここから先、一人で自分のことに対して夢中になっていく。いい意味でみんなのことを忘れちゃうぐらい夢中になれる自分であるべきだし、そうなったらいいなという思いから、「青藍遊泳」を書きました。学校の卒業と同じ感じで、さよならする寂しさや名残惜しさ、決意がぎゅっと詰まっている曲になったかなと思います。
――1曲目の「アイニコイ」は疾走感のある曲ですが、これを最初に置いたのは何か理由があるんでしょうか?
にしな 「アイニコイ」はバンド時代から演奏していた曲で、このレコーディング自体も、サポートで入ってくださっているバンドメンバーと「せーの!」で録った曲です。いい意味で荒削りというか、完成しきっていない、衝動感みたいなものが詰まった音になっていると思うので、それを皮切りにアルバムが始まっていくのがいいなと思って1曲目にしました。
――そのほかの新録曲についてお聞きしたいのですが、「ワンルーム」はいつ頃書いた曲ですか?
にしな 「ヘビースモーク」(1stアルバム『odds and ends』収録)ぐらいのタイミングで作った曲で、友達の恋の話を聞いたりしながら書きました。
――曲自体の制作時期はバラバラなんですね。
にしな そうですね。曲ごとに作ったタイミングが全然違います。最新で作った曲に対していいなと思う部分があるのと同時に、昔作った曲に対しての憧れみたいなものもあります。
――「モモ」はアコースティックな響きの温かみのある曲です。
にしな 仲良くしてくださっているスタッフの方に「こういう曲書いてよ」と言われて書いた曲なんですが、「モモというぬいぐるみを持っている女の子」というイメージだけをいただいて、その方の優しくて柔らかい人柄も含めて、自分の中で「モモ」というものを膨らませていって書きました。誰かにイメージをいただいて曲を書くことはあまりないので、とても面白かったですね。
――ティーン読者に、このアルバムをどう聴いてほしいですか?
にしな いろんな性格の曲があるので、カジュアルな気持ちで、聴きたいときに聴きたい曲を聴いてほしいというシンプルな思いが一番なんですが、その中からお気に入りの曲を見つけてくれたらうれしいですね。