ちょっとでも元気になったり、明るい気持ちになったりしてもらえれば
――『愛ちゃん物語♡』は東京藝術大学在学中の大野キャンディス真奈監督の初長編作品ですが、監督の印象はいかがでしたか?
坂ノ上 ギャルだなと思いました(笑)。喋り方とかも「え~、分かんないけど」とか「なんか~」「なんとなく~」という感じで、すごくポジティブで明るい方です。台本も大野監督が書いているのですが、ト書きの書き方もギャルっぽかったりして、今まで読んだ脚本や台本とは違いました。
――坂ノ上さん演じる愛ちゃんは、毒親の⽗に束縛され、⾃由を知らずに成⻑した友達のいない孤独な女の子ですが、それほど悲壮感はありません。役作りではどんなことを意識しましたか?
坂ノ上 私の周りにもなかなかいないタイプで、非現実的な要素もありますが、大野監督のキャラクターがそのままこの作品になっていると思ったので、監督の話し方やノリを参考にさせていただきました。学生映画なので、スタッフさんも大野監督の大学の友達が多くて、その方たちとお話ししているところも観察しました。
――学生映画の現場は今まで経験したことはありましたか?
坂ノ上 初めてでした。私のマネージャーさんが普段から学生映画祭に行く人で、その流れでオーディションを受けさせてもらいました。当時、私は23歳で、年上の方とお仕事する機会が多かったから、マネージャーさんとしては、同世代と対等な目線で話し合ったりして、一緒に作り上げていく現場を体験してほしいという思いがあったみたいなんです。だから、この現場では自分の意見を言うことが多かったですね。一応、台本はあるけど、シーンの後をアドリブで繋いだりして、それが映像の中でも使われていました。リハーサルもそこまで入念ではなくて、「とりあえずやってみよう」「回そう!」みたいなこともありましたし、そういうテンポ感がお芝居の勢いに繋がったと思います。
――現場の雰囲気はいかがでしたか?
坂ノ上 大野監督は学生映画で作品を撮ったことはあるけど、プロの俳優さんを使って映画を作ることが初めてだったので、現場で試行錯誤を重ねて、どうやったらスムーズにいくか、こうやったらみんながやりやすいんじゃないかなどを考えて、みんなで作っていくという感じでした。
――色彩が独特でしたが、現場でもこういう色になるんだろうなという感覚はありましたか?
坂ノ上 ロケ地や小物へのこだわりは現場でもすごく感じていたんですけど、実際に完成した作品を観たら、鮮やかでとても美しいなと。監督が東京藝術大学で油絵を専攻しているからこそ、色彩豊かな映像になったんだろうなと思いました。
――『愛ちゃん物語♡』の見どころを教えてください。
坂ノ上 とにかくかわいい!かわいいに尽きる作品だと思います。出てくるキャラクターも誰ひとり嫌な人がいない。お父さんも、最初はうざったい気持ちになるけど、なんやかんや憎めないキャラクター。みんなちょっとズレていて、まともなキャラクターがいないんです(笑)。その世界観も素敵だし、撮影をしていたのはコロナ前なんですが、コロナ禍の今だからこそ、ただただハッピーで、マイナスな気持ちにならない『愛ちゃん物語♡』を見て、ちょっとでも元気になったり、明るい気持ちになったりしてもらえればと思います。