子どもたちの表現が素晴らしかった『サバカンSABAKAN』

――80年代の長崎を舞台にした青春映画『サバカンSABAKAN』には、どういった経緯でご出演されたのでしょうか?

貫地谷しほり(以下、貫地谷)金沢知樹監督とは以前舞台をご一緒させていただいたんです。「幽霊でもよかけん、会いたかとよ」という福士誠治君が初めて演出した舞台だったんですけど、その時の脚本を金沢監督が書いていて、そのお話も本当に素敵だったんです。金沢監督の作品にもっと出たいなと思っていたので、今回オファーがあった時は台本を見る前に「やります!」と。

――久田(番家一路)と竹本(原田琥之佑)という少年二人の友情の物語で、貫地谷さんは兄弟が多くて貧しい竹本の母親役です。脚本を読んでいかがでしたか?

貫地谷 今回もまた素敵なお話で。同じ体験をしている訳ではなくても共感できる、あの時の切ない思いというか。今の言葉で言うと、エモいっていうんですかね?キュンとするような感じでした。

――貫地谷さん演じる母親は、明るくて子どもたちへの愛情が深いキャラクターです。金沢監督の演出はいかがでしたか?

貫地谷 金沢監督は「しほりちゃんはそのままでいいから」みたいな感じでしたね。私がした役作りといえば、方言テープを聴くぐらいです。あとは子どもたちに作ってもらったようなところがあります。私のファーストシーンは子供たちが集合しているシーンで、現場に入ったら子どもたちが本当に自由で。

――久田が初めて竹本の家に行くシーンですね。幼い兄弟がたくさんいて賑やかな家ですが、撮影はいかがでしたか?

貫地谷 喧嘩しておもちゃの取り合いをしたり、水遊びを勝手にし始めたり(笑)。金沢監督も子どもたちを好きに泳がせて、いい感じだなというところで、こっそり「今、回します」と撮影をしていました。子供たちにバレないように撮っていたので、私はそこに乗せてもらいましたね。

――台本はあるけれども、即興劇に近いような感じですか?

貫地谷 そういう雰囲気もありました。金沢監督は書かれているセリフを緊張して言うんじゃなくて、生きた画面を撮りたいという思いが強くて、あえてそういう空気作りをされていました。子どもを野放しにして、私の息子役を演じた(原田)琥之佑くんもそれに合わせてセリフを言ってくれて、しっかりしてるなあって。

――原田さん演じる竹本健次は逞しい子ですが、原田さん自身はどんな子どもでしたか?

貫地谷 すごくクールで大人。子どもたちのまとめ役もしてくれたし、なんていい子だろうと心強かったですね。(番家)一路くんは本当にあの役のまま無邪気な子で、本当にいいバランスでした。

――二人の演技を見て、ここがすごいと感じた部分はありますか?

貫地谷 一路くんは彼の純粋なところがそのまま画面に映っていましたね。琥之佑くんも不器用なところや、言いたいけど言うのが恥ずかしいとか、そういう表現が本当に素晴らしくて。二人の存在によって、あの年齢特有の思春期の難しいところや、きれいな時間を切り取った映画になっていると思いました。

――長崎での撮影はいかがでしたか。

貫地谷 2日間しかなかったので、長崎をあまり堪能することもなく、撮影して帰るというスケジュールだったんです。でも朝、撮影現場に行く時にきれいな海が見えて、すごくいいところだなと。金沢監督がここで育ったんだなと思うと、感慨深いものがありました。

――長崎の方言はマスターしやすかったですか?

貫地谷 方言ってありがたくて、しゃべるだけでなんとなく役が掴めてくる感じがあるんです。すごく大事な要素をもらえたなと思っています。ついつい分からないから訛りすぎちゃったりするんですけど、その都度、金沢監督に「今の合ってました?」と確認して。金沢監督に方言指導していただいたような感じです。

――今回、金沢監督にとっては初めての長編映画になります。

貫地谷 撮影中は「もう監督はいいよ」「今回で終わりだよ」みたいな感じだったんですけど(笑)。試写を観て、私は号泣して、周りもみんなグズグズ泣いていたんです。後からメールで「素晴らしかったね」「あんなこと言ってたけど、次回作もあるの?」って聞いたら、「すごく面白かったから、またやってみたいと思った」と。私は金沢監督から声がかかれば出たいですし、一観客として金沢監督の作品は全部観たいと思いました。