今しかできない役を優先するために大学を中退

――高校生活の半ばから俳優のお仕事が増えはじめますが、大学にも進学されました。

貫地谷 この仕事が続くのかどうか不安だったので、大学に行くって決めたんです。でも大学に入ってみたら、キャンパスが遠かったのもあって、全然単位が取れていなくて。大学に行くためだと朝起きられないのに、朝イチの仕事は起きられるんですよね(笑)。だから、私はやっぱりこの仕事がやりたいんだと思い始めて、いろんな方に「大学を辞めたいんですが、どう思いますか」と相談しました。

――周りの方々からはどんなアドバイスがありましたか?

貫地谷 賛否両論でした。「やりたいことがあるなら、辞めてもいいんじゃない?」と言う人もいれば、「行ったほうがいいよ」っていう方もいて。でも、今しかできない役があるなら、そっちを優先したいなと思って、大学を辞めると親に伝えました。辞めた半年後くらいに、朝ドラ『ちりとてちん』のヒロインが決まったりもしたので、あのまま大学に通っていても卒業できなかっただろうなと思います。

――俳優を一生の仕事にしていこうと決意したきっかけはありますか?

貫地谷 2006年、二十歳の時に『労働者M』という舞台に出た際、演出のKERAさんから「どういう女優になりたいんだ?」「将来何をやりたいんだ?」と聞かれて、「その時やりたいことをやりたいですね」と、ちょっと斜に構えて答えたんです。単純に続くか不安だったから、出来もしないことを口にするのが恥ずかしかった時期というか、夢を語るのが恥ずかしかったんですよね。だけどKERAさんから「俺は今、将来女優をやりたいと思ってない奴と仕事しているのか」と言われて、いろいろ考えるきっかけになりました。

――最後に改めて『サバカンSABAKAN』の見どころを教えてください。

貫地谷 小学生のあの時期にしか感じられない、誰もが通ったことのあるような、ちょっと甘酸っぱい、切ない、でも楽しいものがたくさん詰まった作品です。当時を思い出して、自分はこういう環境で育ったんだと改めて思えるような映画になっていますので、ぜひいろんな方に観てもらいたいです。

Information

『サバカン SABAKAN』
8月19日(金)公開

番家一路 原田琥之佑/尾野真千子 竹原ピストル 貫地谷しほり 草彅剛 岩松了
村川絵梨 福地桃子 ゴリけん 八村倫太郎 茅島みずき 篠原篤 泉澤祐希

監督:金沢知樹
脚本:金沢知樹 萩森淳
配給:キノフィルムズ

愛情深い両親に育てられ、クラスの友達も多い小学5年生の久田(番家一路)。家が貧しく、クラスメイトから避けられている竹本(原田琥之佑)。あまり接点もなかったはずの二人だが、ある日突然、久田は竹本から「ブーメラン島にイルカを見に行こう」と誘われる。海で溺れかけたり、不良に絡まれたりして、この冒険をきっかけに親友となった二人。しかし竹本の身に悲しい事件が起こってしまう。

公式サイト

貫地谷しほり

俳優

1985年12月12日生まれ、東京都出身。2002年映画デビュー。04年の映画『スウィングガールズ』で注目を集める。07年NHK連続テレビ小説「ちりとてちん」で初主演を務め、13年の初主演映画『くちづけ』では第56回ブルーリボン賞最優秀主演女優賞を受賞。主な映画出演作に、『望郷』(17)、『この道』(19)、『アイネクライネナハトムジーク』(19)、『夕陽のあと』(19)、『総理の夫』(21)などがある。主なテレビ出演作に、「テセウスの船」(20/TBS)、「ディア・ペイシェント〜絆のカルテ〜」(20/NHK)など。

Photographer:Akihiro Saga,Interviewer:Ryoko Ozawa,Hair&Make:Ichiki Kita(Permanent)
衣装協力
Edwina H𝚘̈rl