周りと同じようなことができない劣等感があった

――現代社会の中で愛と希望を渇望する少年の行方を描いた映画『ぜんぶ、ボクのせい』で、主人公の優太を優しく支えるヒロインの女子高生・詩織を演じていますが、初めて脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか?

川島鈴遥(以下、川島) 家族愛がテーマで、血の繋がりや自分の大切な人を思う気持ちが、生きる活力になっているなと感じられる脚本でした。松本優作監督が「絶望だけじゃなく、希望にも見えるようにしたい」とお話しされていたので、孤独な悲壮感が漂うヒロインではなく、等身大で共感しやすい女の子をイメージしました。詩織は高校2年生で、周りは将来の夢が決まっているのに、自分は決まっていないことへの焦燥感や、悩みや不安を抱えています。その悩みを誰にも言えない、伝えられる人がいない状況で生きている詩織は、「悲しい」というよりも、「別に一人でいても大丈夫」とちょっと強がっている女の子に思えたので、毎日笑うようにするなど、ネガティブさを前面に出さないように演じました。

――学生時代に、詩織と同じような焦燥感を感じた時期はありましたか?

川島 まさに今がそうかもしれません。現在、大学3年生なので周りは就職活動をしているのですが、「自分はこの仕事一本でやりたい」と思っていても、どこかで「周りは動いているのに私だけ動いてないんじゃないか」ということを感じてしまいます。

――順調にお仕事していてもそう感じるんですね。

川島 周りと違うことをしているので、ちょっとした優越感みたいな感じもありつつ、でも周りと同じようなことができない劣等感もある。高校生の時から、そういう焦りみたいなものは、常に持ち続けています。

――優太は児童養護施設でも学校でもいじめられ、孤立する中、施設を抜け出して母親に会いに行きますが、「施設へ戻ってほしい」と言われてしまいます。絶望した優太は施設に戻らず、ホームレスの男・坂本(オダギリジョー)や詩織と出会い、そこに家族のような温もりを見出します。優太の気持ちは共感できましたか?

川島 思ったような形にならなくても、自分の信念を信じて行動に移すところはすごく分かる気がします。私自身、周りと違うことをしていても強く生きていきたいと思うので、その気持ちはすごく理解できますね。

――優太を演じた白鳥晴都さんには、どんな印象を持ちましたか?

川島 普段の晴都くんと優太は、そっくりな部分とかけ離れているような部分があって。可愛らしくて抱きしめたくなるような幼さと、大人びているところを持ち合わせているところが、すごく似ているなと感じました。ただ晴都くんは、撮影以外の時はおしゃべりなんですよ。そこは優太と違いますけど、そこも含めて愛らしい。でも現場に入ると声質とか目がガラッと変わるので、その瞬間に「あ、スイッチが入ったんだな」と分かるんです。そこで私もピッとしなきゃいけないなと引き締めてもらったような気がします。

――映画内でも前半と後半では、優太の表情は大きく変化しますよね。優太と一緒のシーンでは、どんなことを意識しましたか?

川島 詩織は同じテンションで変わらないんですけど、優太が心を開いてくれるか開いてくれないかが肝だと思っていたので、どんな風にアプローチをかけたら、返してくれるのかなとか、関係性の部分は現場で何度も試行錯誤しながらやっていました。

――オダギリジョーさんとは縁が深くて、川島さんはオダギリさんの初長編映画監督作品『ある船頭の話』(2019年)のヒロインに抜擢され、本作での演技が評価されて、第34回高崎映画祭最優秀新人女優賞を受賞しました。久しぶりとなるオダギリさんとの対面はいかがでしたか?

川島 監督の時は遠い存在でしたが、今回は現場で待ち時間も一緒だったりしたので、ちょっと不思議な感じがしました(笑)。私は監督としてのオダギリさんから入っているので、俳優としてのオダギリさんのほうが不思議でした。普段はあまりお話しするタイプではないんですけど、共演者の皆さんとご飯に行ったりする時はオダギリさんから誘ってくださるんです。一緒にご飯を食べた時は、ジム・ジャームッシュ監督の映画や、テリー・ギリアム監督の『フィッシャー・キング』など、おすすめの映画をお話してくれて、すぐに観ました。