家族に音痴だと指摘されて中学・高校と合唱部に所属
――映画の舞台となった千葉は、うらぶれた風景が作品の世界にマッチしていました。
川島 空気感が素敵だったので、その場にいるだけで自然と役になれたというか、雰囲気が映画そのものでした。現場も映画の一部になっているなという気がしましたね。
――中でも海のシーンが印象的でした。
川島 海のシーンは最後の3日間で撮影しました。マジックアワー(※朝焼けや夕焼けなど、日没後の僅かな美しい時間帯のこと)を狙ったシーンもありましたし、海での撮影は感情が動くシーンが多かったので、撮り終えた後にドッと疲れが出ました(笑)。これまで出演した作品は、私が優太のように闇を抱えていて、それを誰かに救ってもらう役が多かったんです。でも今回は、自分も苦しみを抱えた中で優太を引き戻す役割だったので、頑張らなきゃいけないけれど、でも自分も苦しいという葛藤する気持ちを表現するのが難しかったです。撮影が始まる前のマジックアワーを待っている時間には、優太と私で感情を高め合って、号泣していました(笑)。感情が高まって涙が止まらなかったんですけど、なかなか普段は泣かない晴都くんもずっと泣いていて。一瞬でも役じゃない自分に戻ってしまうと、感情が崩れていっちゃう気がしたので、お互いに会話は一切せずに、スタッフさんとも距離を取っていました。カメラは回ってないけど、いい距離感でお芝居に入ることができましたし、私も海のシーンはすごく印象に残っていますね。
――この映画で、詩織と同世代のティーンに注目して欲しいポイントを教えてください。
川島 詩織は等身大の女の子なので、感情移入しやすいと思います。悩みの中身は違っても、悩む気持ちは一緒です。詩織自身は悩みながら、それでも強く生きて、信じられる人を頼りながら進んでいきます。この映画を観ていただき、信頼できる人との出会いを大切に生きて欲しいなと思います。
――劇中で⼤滝詠⼀さんの「夢で逢えたら」を歌うシーンがありますが、この曲は知っていましたか?
川島 オーディションの時に初めて聴いたんですが、メロディーと歌詞が素敵だなと思いました。
――いろいろなアーティストがカバーされている名曲ですが、大滝詠一さんのバージョンで聴いたんですか?
川島 はい。こんな素敵な曲を歌わせてもらえるなんて光栄でした。普段は力強く歌うのが好きなのですが、今回は詩織という役のイメージと物語のメッセージ性が伝わるように、柔らかい雰囲気を残しつつ、抑えて歌うことを意識しました。ただ歌うこと自体が久しぶりだったので、緊張しました。
――学生時代は合唱部に入られていたそうですね。
川島 中学・高校の6年間、合唱部に所属していました。小さい頃から歌うことが好きで、よく歌っていたのですが、すごく音痴だったんです。でも音痴だということを自覚していなかったので、「音痴だから歌わないで欲しい」と家族に言われて(笑)。でも歌いたいから、どうすればいいんだろうと考えた時に、学校の合唱部を見つけて、先にいた友達に誘ってもらって入部しました。そこで徐々に歌えるようになって、より音楽が好きになりました。
――合唱部に入部後、家族の前で歌を聴かせたことはありますか?
川島 はい。「上手くなったでしょ?」って何度も何度も(笑)。
――どのパートを担当していたのでしょうか?
川島 最初は下手だったので、人数合わせみたいな形でメインではないアルトのパートでした。そこから徐々に歌えるようになって、アルト、メゾソプラノ、ソプラノと変わっていきました。高校3年生の合唱のコンクールでは一番高いソプラノで歌いました。