撮影で滞在するうちに山口県の空気感が心地良くなっていった

――映画『凪の島』は⼭⼝県の瀬⼾内にある⼩さな島が舞台ですが、結木さんも出身が大分県なので、わりと近いですよね。

結木 大分には3歳までしかいなかったので、育ちは関東なんですよ。小さい頃から海に触れてきた人だったら、今回の舞台も落ち着くなと感じるんでしょうけど、僕は海を見たらテンションが上がるタイプなので、ひたすらテンションが上がっていましたし、どんどん山口県の空気感が心地良くなっていきました。

――結木さんが演じるのは漁師の浩平ですが、釣りの経験はありましたか?

結木 全くやったことがなかったので、出演が決まってから、釣り好きな友達に「連れて行ってよ」と言って、海釣りを経験しました。釣果は2、3匹でした(笑)。

――『凪の島』は⼩学4年⽣の主人公・凪が、母と離婚したアルコール依存症の父に対してトラウマを抱えながらも、温かい島の住人たちと暮らすことで心の平穏と家族の絆を取り戻していきます。初めて脚本を読んだときはどんな印象を受けましたか?

結木 ホッコリするお話だなと思いましたし、脚本から情景が浮かんで、早く映像化したいと思いました。浩平に関しては、自分の考えや意思をしっかり持っていて逞しいなと感じて、明るく⽣きる浩平からたくさんの元気をもらえました。

――浩平は吃音症で、普段はスムーズに話せないけど、船に乗ると正常に話せるという症状ですが、演じる上で意識したことはありますか?

結木 一口に吃音症といっても、人それぞれ違うので、いろいろ勉強を重ねた上で、長澤監督とすり合わせをしました。囚われすぎることなく、ひとつの癖というぐらいの軽い気持ちでいいということだったので、あえて意識しすぎないようにしました。

――現場の雰囲気はいかがでしたか?

結木 山口県在住のスタッフさんが多くて、都会とは違った時間軸でした。自分たちのペースでゆっくりと進んでいくような雰囲気だったので、普段のせわしない現場に比べるとギャップがありました。最初はちょっと戸惑いもあったんですけど、気づけば溶け込んでいました。

――付近にはコンビニやスーパーもなく?

結木 なかったですね。ホテルから車で10分、歩いたら30分ぐらいかかる場所にあったのかな。それで普段の生活の便利さに気づきました。ただ遠いからこそ、たまにコンビニやスーパーに行くと、「これ買ってみようかな」とワクワクして、小さな幸せみたいなものを感じました。

――長澤監督の演出はいかがでしたか?

結木 長澤監督は、「こうして欲しい」と言ってくるタイプではなくて。吃音に関してはワンパターンにならないように指示もありましたが、基本的には僕らのやりたいようにやらせてくれました。

――特に印象的だったシーンを教えてください。

結木 凪ちゃんが過呼吸になったとき、浩平が彼女を抱きかかえて海に飛び込むシーンが一番好きです。

――子どもを抱えて飛び込むのは責任も重大ですよね。

結木 そうですね。僕自身は泳ぎが得意ですし、シーン的にも浩平の意志で海に飛び込むので、ちせちゃんのほうが怖かったと思います。僕に身を委ねることしかできないですからね。だから、不自然にならないように、でもちせちゃんが危険な目に遭わないように飛び込みました。

――『凪の島』の注目ポイントを教えてください。

結木 男女問わず、どの年齢にも刺さる内容で、明日への活力になる作品です。登場人物それぞれが抱えているものがあるけれど、当事者である本人たちは前向きで、まっすぐ前に進んでいる姿が印象的な映画なので、同じように悩んでいる人の力に少しでもなれればなと思います。島の景色も素晴らしいので、温度感や空気感を大きなスクリーンで観てほしいです。