帰国子女ならではの生きづらさがあった

――学生時代は主に海外で生活していたそうですね。

古川 父の仕事で7歳からカナダに住んでいて、自分は日本人がいる高校に行きたいと思っていたけれど、帰国子女すぎて敬語もろくに話せなかったんです。それでニューヨークに日本人の高校があると知って急遽受験しました。

――その時から芸能界に対する憧れはあったんですか?

古川 全くなかったです。別世界の話で考えたこともなかったですし、普通になれるって思わないですよね。興味を持ったのは大学3年生以降で、就活中でした。

――高校卒業後、帰国して慶應義塾大学理工学部に進んだそうですが、どういう基準で選択したんですか。

古川 理工学部に行けば、医学部、理系、文系に行けますけど、一回文系に行ったら理系、医学部には行けなくなっちゃう。だから、一番選択肢の広い理系を選択するべきという理由でした。

――海外で過ごした経験が、日本に戻ってきて生かせているなと感じることはありますか?

古川 英語力もそうですし、客観的に双方の考え方が見えるというのはすごく良かったなと思います。その反面、海外で培った性格は、日本だと生きていけないという面もあります。というのも物事をはっきり言うのがダメという国民性で、これは世界規模で見ても日本人が変だと思います。ただアメリカで過ごすのも大変でしたね。

――俳優というお仕事は、はっきり言うこと、自己主張することは良いほうに働くのでは?

古川 意外に働かないですし、難しいところですね。インタビューも形式上の答えしかしない方もいますよね。でも自分ははっきり物事を言うから、気に入ってくださるインタビュアーさんもいれば、そういうのはいいから形式上の答えをちょうだいっていうインタビュアーさんもいる。そこは分かれますよね。

――進路を検討しているティーンにアドバイスやメッセージをお願いします。

古川 自分が大学生の時は、就職する人のほとんどの考え方が、「給料がいいから」「いい企業だから」など、明確な理由がない人がほとんどだったんです。これがやりたいから、この大学に入って、この勉強をして、みたいな人はほとんどいなくて。少なくとも自分は、しっかりとやりたいことをイメージして就活をしていました。やりたいことが決まっているなら、世間体とか給与に関係なく、一回はやったほうがいいですね。何も見つからないなら、学生時代を延ばすなり、一回就職して考えるなりしたほうがいい。人生の大半は仕事をしている時間になるので、きちんと考えてやるべきだし、自分が思ったことをやったほうがいい。自分も就活をパーン!とやめて役者一本に絞っていったので、周りがどうこうとか、この会社がいいからじゃなくて、思ったらすぐにやったほうがいいです。

――大学での勉強の取り組み方も、日本と海外では違うものですか?

古川 当たり前のことですけど、海外だと大学で勉強しますよね。日本の場合、大学は遊ぶ場ですから、それだと行く意味がないと思います。あとはランクですよね。〇〇大学だから、どこに就職できるとか、そのためだけに行って、遊んでいるだけで。自分は大学院も受かっていたんですけど、お金の無駄だと思ってやめました。

――最後に改めて『劇場版 ねこ物件』の見どころをお聞かせください。

古川 タイトルが「ねこ物件」なので、猫がメインみたいに思うかもしれないですけど、意外と取り上げられているのがグルメです。かわいい猫を見るだけでもいいんですけど、食べ物も相当時間をかけて撮影しているので注目してほしいですね。もう一つのメインは、主人公の優斗が成長していくところ。最初は全くコミュニケーションが取れない、働いたこともない、社会性が全くない人間が、すぐに辞めちゃいますけど外で働くようになるし、仲間もできて、有美さんとの恋愛的な要素もある。人が成長する姿や人間模様がしっかりと描かれているので、猫好きじゃなくても楽しめる内容です。

Information

『劇場版 ねこ物件』
絶賛公開中!

古川雄輝
細田佳央太 上村海成 本田剛文(BOYS AND MEN) 松大航也
金子隼也 山谷花純
長井短 竜雷太

監督・脚本:綾部真弥
制作・配給:AMGエンタテインメント
🄫2022「ねこ物件」製作委員会

2匹の猫、クロとチャーと暮らす二星優斗(古川雄輝)、30歳。唯一の肉親である祖父・幸三(竜雷太)が亡くなったことから始めた“猫付きシェアハウス・二星ハイツ”には、それぞれの夢を持つ四人の同居人が住んでいたが、みな次のステージへと巣立っていった。不動産会社の有美(長井短)から、かつての入居者たちの活躍を聞かされ、二星ハイツの再開を促されるが気乗りがしない。しかし、祖父が遺した手紙に書かれていた、幼い頃に離ればなれになった弟の存在を想い出して、探し出すことを決意する。その方法とは、“猫付きシェアハウス”と自分の存在を全国に知らしめて、再び住人を募ることだった。そんな優斗をサポートしようと入居者だった、修(細田佳央太)、毅(上村海成)、丈(本田剛文)、ファン(松大航也)の四人が二星ハイツへと帰ってきた。そんなある日、加納直人(金子隼也)と名乗る人物が入居希望者として現れたのだが―。

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古川雄輝

俳優

1987年12月18日生まれ、東京都出身。7歳でカナダに移住し、中学卒業と共に、単身アメリカ・NYへ渡る。2009年にミスター慶應コンテストでグランプリ、翌10年に「キャンパスターH★50with メンズノンノ」で審査員特別賞を受賞。2013年主演ドラマ「イタズラなKiss~Love in TOKYO」は中国でも配信され、中国版ツイッターWeiboのフォロワー数は430万人超と、中国でも絶大な人気を誇る。代表作に『曇天に笑う』(18)『となりの怪物くん』(18)、『屍人荘の殺人』(19)などがある。

Photographer:Toshimasa Takeda,Interviewer:Takahiro Iguchi