プレッシャーを感じさせない「セパレート系」の家族

――キャリアについてお伺いします。高校時代から、芸能界でお仕事をすることに興味はありましたか?

吉村 全然です。出たがりでもなく、恥ずかしがり屋だし、スポットライトを浴びるのも苦手でした。

――高校時代から映画を観ることがお好きだったそうですが、たくさん観るようになったのはいつ頃からですか?

吉村 大学に入った18、19歳の頃ですね。毎日がつまんなかったし、一人で何かしていることが好きだったので。特に70~80年代の作品が好きでした。流行っているものって、圧倒的に真新しいものって実はあんまりないじゃないですか。だからそういうものを否定したかったんだと思います。みんなが好きだというものを否定してクラシカルなものに行くことで自分を納得させて、僕はまた新しいことをするんだ、と。そんなことをずっと思っていた気がします。

――当時は焦りに似たものがあったのでしょうか?

吉村 そうかもしれないですね。今みたいにYouTuberもいませんし、公務員か、芸能人か、自営業か。スポーツ選手は無理だからってなると……俳優しか思いつかなかったのかもしれません。

――会社員になろうと思ったことはありますか?

吉村 あんまりなかったですね。親が勤めていた会社によく遊びに行っていて、「大変だろうな。スーツ着て」って思っていたので。

――当時は将来のビジョンはありましたか?

吉村 全然なかったです。その一方で「どうなっていくんだろう」という不安はありました。うちの家族は各々がしたいことをする、いわゆる「セパレート系」で、それほど干渉し合わないんです。兄は「パソコンで起業しようかな」、絵を描くのが好きな母は「あんた、来年一人暮らししなよ」などと言っていました。

――それから夜間の大学に進学されます。

吉村 高校を卒業する頃、大学へ行く、行かないという話になって、「どうすんの?」と。うちは常に「どうすんの?」系で、常に問われるんですよ。今気づいたんですけど、「系」が多いですね (笑)。「何を食べたいの?」「黒い服と白い服、どっちがいいの?」って、はっきり答えを示さないとすごく詰めてくるので、大学も「行くの?行かないの?行く場合は自分で学費を出しなよ」と。

――金銭面の支援はしてくれないんですね(笑)。

吉村 「マジか!?大学に行かないと俺、再来月ぐらいからバイトか~」と。惰性で生きてるのも嫌だったし、大学に行けば箔も付く。「じゃあ、行こうかな」くらいの気持ちでしたね。

――芸能界に入ることになったきっかけを教えてください。

吉村 二十歳くらいの頃、オーディションを受けるという友達がいて「頑張れよ」と思う一方で、僕も映画を観ているうちに「何かしようかなぁ」という気持ちになって、オーディションに行ったんです。

――吉村さんのお仕事に対して、ご家族の反応はいかがでしたか?

吉村 家族は今でも全然興味がないようです。2、3年前、電話がかかってきたと思ったら「CM見たよ。よかったね」って。よく聞くと、僕じゃなく菅田将暉さんじゃねえかと(笑)。菅田将暉さんが金髪の鬼に扮してるCMでした。たまに話をしても1年前の作品のことを言ったりするので「いや、それ随分前に終わってるから」と(笑)。ある意味、プレッシャーはないです。