きつかったはずの舞台出演経験がいい思い出になっている
――高校生の頃から群れることがあまり好きではなかったそうですが、いまだに俳優として務まっているか分からないという感覚が続いているとお聞きしました。
吉村 映画やドラマのお芝居ってチーム戦ですから。でも、本来の自分とは違いすぎているからこそ、続けられているところはあるのかもしれません。
――芸能界に入ってから、本格的にお芝居を始められたとか。
吉村 いまだに恥ずかしくて、たとえば朝早い現場で「朝8時に泣けって言われても」と思うくらい(笑)。
――俳優の仕事を一生の仕事にしようと思われたきっかけのようなものはありましたか?
吉村 2018年の「第10回TAMA映画賞授賞式」で最優秀新進男優賞を受賞した際、僕と吉沢(亮)くん、(伊藤)沙莉さん、安藤サクラさん、松岡茉優さんの5人と一緒にステージに並んだ時、「俺もちょっとだけ評価されているのかな」と思えました。
――ご自身についての評価をチェックされることはありますか?
吉村 Instagramでたまに。ただ、最初は気になってましたが、今はそうでもないですね。自分と世間ではいいなと思うものがズレてることに気づいてからはあまり見なくなってしまいました。
――吉村さんはミュージックビデオの出演も多いうえ、「Cigarette Coffee」では作詞や歌唱も担当されています。好きな音楽のジャンルを教えてください。
吉村 マイケル・ジャクソンやR・ケリー、坂本九も好きでした。家族が音楽好きで、家ではずっと音楽の話をしていました。今なら「これやばいよ」って誰かが好きな音楽をYouTubeで流すと、「次は俺のだから」って友達同士で言いあったりするのは普通だと思うんですが、僕は14~15歳の頃からそういうことを家族でしていました。そのために一生懸命探して、シュガー・レイとか、オフスプリングとかを家族に聴かせていました。
――吉村さんにとって、ターニングポイントになったお仕事は何でしょうか?
吉村 2018年に、初めて舞台に出演したんです。坂元裕二さん脚本の「またここか」という作品で、当て書きでした。小泉今日子さんが手紙を書いてくださったり、坂元さんも絶対やろうって言ってくださったりしていたにもかかわらず何度か断っていたんですが、結局出演させていただくことになって。毎日稽古が本当にきつかったので、逃げ出したこともあります(笑)。でも、ここ最近は「あ、俺、この作品好きだったな」って思うようになりました。
――舞台と映像作品では演じるうえでの感覚はやはり違うものでしょうか?
吉村 違いましたね。舞台は始まったら止められないからきつかったです。今でも覚えているのですが、ドーンって幕が開いた初日に最初の一言が出てこなかったんです。10分ぐらいに感じましたが、多分10秒ぐらいの間です。めっちゃくちゃ怖くて、死ぬかと思いました。
――最後に読者のティーンに向けて、進路を考えるうえでのメッセージをお願いします。
吉村 僕がティーンたちにアドバイスを聞きたいくらいですが……言いたいことを言っていったほうがいいと思います。言霊みたいなものがあるらしいので、言い続けているうちにフォーカス(焦点)が合ってきます。あとはもう、サイコロを投げて進むしかないです。
――吉村さんご自身が、言葉に出したことで、願いがかなったことはありますか?
吉村 言葉に出したり、心の中で強く祈ったりですかね。「この人いいなぁ」って思ってる役者さんと仕事で会ったりすると、現場ではそれほど喋らなくても、あとから聞くと、その方も僕のことをいいと思ってくださっていた、ということはありますね。
Information
『人』
2022年8月26日~ 全国順次ロードショー
吉村界人 田中美里
冨手麻妙 木ノ本嶺浩 五歩一豊
津田寛治
監督:山口龍大朗
脚本:敦賀零
千葉・九十九里浜。実家のサーフショップで働く青年・健一(吉村界人)は、不慮の事故で命を落とし、幽霊になってしまう。幽霊になった健一が実家に帰ると、そこには数年前に他界し、健一と同じく幽霊になった父・拓郎(津田寛治)の姿が。さらに、母・彩子(田中美里)が幽霊が見えるということも発覚し……!?幽霊になった父と息子、そして幽霊が見える母。家族三人と彼らを取り巻く人々が過ごす3日間のファンタジー。

吉村界人
俳優
1993年生まれ。東京都出身。2014年『ポルトレ PORTRAIT』で映画主演デビュー。2018年第10回TAMA映画賞にて最優秀新進男優賞を受賞。主な代表作として、映画『ミッドナイトスワン』『太陽を掴め』『サラバ静寂』『悪魔』『ミッドナイトスワン』『神は見返りを求める』などがある。8月13日に『遠くへ,もっと遠くへ』、9月19日に『人間、この劇的なるもの』が公開される。
Photographer:Takuro Miyasato,Interviewer:Takahiro Iguchi, Stylist:Yoshie Ogasawara(CEKAI), Hair&Make:Takami Yamaguchi
衣装提供
Tシャツ ¥19,000、パンツ ¥35,000/Azuma. その他スタイリスト私物
問い合わせ先:Azuma. / ANTICRAFT design info@azuma-anticraft.com