自分の気持ちを言葉にできるアイコと飛坂は知的な二人

――映画『よだかの片想い』で松井玲奈さん演じる顔にアザのある前田アイコの恋人、飛坂逢太を演じていらっしゃいます。シリアスな内容ですが、悲観的ではなく、ほどよい距離感を保った作品に仕上がっていると感じましたし、現代的なモチーフというか、結末も新鮮だなと思いました。

中島 最後のダンスのシーンは特にそうなっていると思うし、すごく感動しました。小説ではできない表現で、とても映像的な言語だと思います。

――いろいろな捉え方ができるシーンですよね。

中島 それが、映画をさらに良くしていると思います。脚本には、どんなダンスになるのかも、どのようにして撮っていくかとも書かれていないので、実際に観て、ものすごく感動しました。松井さんの芝居は、のっけからコントロールされているのですが、それがアイコという役に緊張感を与えていると思います。最後に、カメラが彼女の顔に寄っていくことで彼女を応援していたということに気づかされるし、こうなってよかったなという気持ちにさせられました。

――アイコと飛坂はそれほど感情的にならず、互いの思いを伝え合います。

中島 自分の気持ちを言葉にできる人たちだなと。言葉にしていることで、こぼれ落ちているものもあるとは思いますが……。飛坂はアイコの書いた本の感想を非常に整然とした言葉で伝えますし、アイコも飛坂の監督した映画を観て思ったことを言葉で伝え、そしてお互いが恋に落ちていく。知的な二人だなと思いました。

――飛坂は仕事人間で、恋人との関係をおざなりにしてしまいますが、悪意のない役柄だと思います。共感できる部分はありましたか?

中島 なかったですね。そんなに忙しかったことがないから(笑)。ただ、仕事のために彼女に冷たくなってしまうということも台本に書かれているし、監督からもアイデアが出ます。たとえば撮影現場にアイコが来て差し入れを持ってきてくれたのに、それをポイって他の人に渡してしまうところ。そこは特に冷たい男を演じる必要は全くないと思っていました。ただ、目の前で愛を伝えて、彼女の愛を獲得したいという男がいればいいなと思ったんです。

――長回しで絶えず動いているかと思えば、フィックス(※カメラを固定して撮影すること)もあったり。カメラワークが印象的でした。

中島 その緩急がフィックスの画と、手持ち(※三脚などに載せずに、カメラを手で持ったり、肩に担いで撮影すること)の画で表現されていたと思います。僕は手持ちの画はそれほど好きじゃないんですが、この作品では効果的だなと感じました。たとえば、彼女が初めて飛坂の家に来るところの一連の流れはカット割りでは撮れないし、伝わらないなと思います。彼の部屋に入っていって、彼の読んでいる本に触れながら、という動きが彼の内面に入っていくのと同じように見えたんです。あれは一連で撮っているからこそ成立するもので、ワンカットの連続では実現できなかったはずです。引いて割ってとなると、ちょっと白々しくなっちゃうと思うんです。