みんなに笑っていてもらいたいという思いは落語の経験から生まれた

――キャリアについて伺います。高校時代から芸能界でお仕事をすることは選択肢の一つでしたか?

中島 僕は中学生の頃から先生になるつもりでいました。周りの大人といえば、親か先生くらいしかいなくて、他の選択肢を知らなかったんですよね。進学した大学ではいろんな奴がいて、ミュージシャンをしている、もしくは、なりたい、っていう奴がいるのを知って、「それでいいのか!」と可能性が広がったんですね。じっくり焦らず、自分の可能性をつぶさずに、いろんな世界に触れていったらいいんじゃないかなと思えたんです。

――さまざまな人との出会いが、教師を目指すという夢を考え直すきっかけになったんですね。

中島 そうですね。大学では教員免許も取ったんですが(笑)。暇だった大学生の頃にモデルを始めて、カメラマンやスタイリストなど、色んなかっこいいプロフェッショナルな方に出会うわけです。そこで更に「好きなことをやっていいんだな」と思えるようになりました。自分で麻布の都会的な場にあるモデル事務所のインターホンを押して「使ってください」って言ったんですよ。僕の中では、人生で3本の指に入るぐらい大きなアクションでした。とても怖かったし、どうしたらいいかよく分からなかったんですが、今振り返ると怖いのは当たり前だし、やってよかったと思います。

――そんな中島さんの意気込みを事務所が買ってくれたんですね!

中島 「やべえ奴が来た!」って思ったはずです(笑)。普通にバイトの面接で出すような履歴書を持っていきましたからね。

――大学時代は落研に所属していたとお聞きしました。お笑いの世界に進むことは選択肢の一つとしてありましたか?

中島 実は今もお笑いをやろうと思っています (笑)。基本的にはみんなに笑ってほしいと思っているので。ただ、お笑い芸人は無理だなとは思います。敵が多すぎます。芸人だったらパッとは売れないだろうし、勝てる気がしなかった。ただ落語はとても楽しかったし、人前に立って、皆に笑ってもらいたいという思いも、落語の経験があるからだと思います。でも一方で「落語家じゃねえだろう」って何となく思ったんですよね。俳優の仕事は周りに迷惑がかかるから、やらなきゃいけないって頑張れるけど、落語家のように自分一人で努力するのは、俺にはできないなって。

――『よだかの片想い』の脚本も手掛けた城定秀夫監督の映画『愛なのに』(2022年)に出演した時も、中島さんの役柄はコメディ要素がありましたね。

中島 すごく楽しかったです。ワンシーン・ワンカットが多くて、笑いのロジックのようなものがある程度活かされている。演じていてもすごく楽しかったし、反響もありました。うれしかったですね。

――最後に進路選択を控えるティーンにメッセージをお願いします。

中島 進路を考える際はやりたいことをやったほうがいいと思います。面倒くさいし、怖いかもしれないけど、やりたいことを見つけに行ったほうがいい。それが思いつきでもいいんです。失敗するのは当たり前だし、恥をかいたとしても先は長いです。若い時はいろいろやったほうがいいと思います。

Information

『よだかの片想い』
2022年9月16日(金)新宿武蔵野館ほか全国公開

松井玲奈、中島歩
藤井美菜、織⽥梨沙、⻘⽊柚、⼿島実優、池⽥良、中澤梓佐、三宅弘城

原作:島本理⽣『よだかの⽚想い』(集英社⽂庫刊)
監督:安川有果
脚本:城定秀夫
主題歌:⾓銅真実「夜だか」(ユニバーサル ミュージック)
企画協力:グリック、SPOTTED PRODUCTIONS
制作プロダクション:ダブ / 配給:ラビットハウス
©島本理⽣/集英社 ©2021映画「よだかの⽚想い」製作委員会

理系女子大生の前田アイコ(松井玲奈)の顔の左側にはアザがある。幼い頃、そのアザをからかわれ、恋や遊びには消極的になっていた。しかし、「顔にアザや怪我を負った人」のルポルタージュ本の取材を受けて話題となってから状況は一変。本の映画化の話が進み、友人の編集者・まりえ(織田梨沙)の紹介で、監督の飛坂逢太(中島歩)と出会う。初めは映画化を断っていたアイコだが、次第に彼の人柄に惹かれていく。飛坂への片想いを自覚し、不器用に距離を縮めていくアイコ。しかし、飛坂の元恋人の存在、そして飛坂は映画化の実現のために自分に近づいたという疑心暗鬼が、アイコの「恋」と「人生」を大きく変えていくことになる……

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中島歩

俳優

1988年10月7日生まれ。宮城県出身。美輪明宏主演の舞台「黒蜥蜴」で雨宮潤一役に抜擢され、2013年に俳優デビュー。連続テレビ小説「花子とアン」(NHK)で、仲間由紀恵が演じた蓮子の駆け落ち相手、宮本龍一役で出演し、知名度を高める。2015年、初主演映画『グッド・ストライプス』で、第7回TAMA映画賞最優秀新進男優賞を、2022年、『いとみち』『偶然と想像』で第35回高崎映画祭最優秀助演俳優賞を受賞。現在放映中のドラマ「量産型リコ-プラモ女子の人生組み立て記」(テレビ東京)にも出演中。

Photographer:Toshimasa Takeda,Interviewer:Takahiro Iguchi