器用な人間じゃないから、作り込み過ぎると逆に嘘っぽくなる

――『神田川のふたり』はアドリブ的な要素の強い作品ですが、平井さん演じる智樹には、どれくらい平井さんご自身の要素が入っていますか?

平井 かなり入っていますね。喋り方は自分の感じを出すようにしましたが、関西出身なので関西弁にならないようにしながら、空気感は普段の自分を投影するようにしました。

――こういう自分自身に近い役柄はいかがでしたか?

平井 自分はわりと普段からそういうアプローチでやっています。器用な人間じゃないから、作り込み過ぎると逆に嘘っぽくなっちゃう。自分のフィルターを通さないと、リアリティは出ないと思っています。

――冒頭から長尺の長回しシーンがありますが、かなり緊張されたのではないでしょうか?

平井 めちゃくちゃ緊張しました。40分の長回しなので、どうしても一般の方が映りこんじゃうんです。そういう方たちを全く映さずに撮るのは不可能なので、不測の事態というか、不意に通行人が現れた時に、自分の体で隠せるかなとか、そんなことをぼんやり考えていました。小さい子だと、「何かの撮影してるよ~!」とか平気で言いますからね(笑)。

――画面を見る限り、一般の方がカメラを意識している雰囲気はなさそうでしたが。

平井 意外とあったんですよ。そこはカメラマンさんが上手に角度で隠したり、僕たちもその動きに合わせて角度を変えたりして対応していたんです。だから今回は、普通の映画では絶対に気にしないようなところに気を遣いました。移動も大変でしたね。智樹が一度、画面から離れて、後から神社で舞(上大迫祐希)と合流するシーンがあるんですが、そこも別カットでなく、長回しの撮影中です。なのでカメラに映り込まないように回り込んで、神社に向かったんです。スタッフさんがトランシーバーで連携を取ってくれているので、なんとなくのタイム感は分かるんですが、舞が自転車で神社に到着するタイミングに間に合わせて歩かなきゃいけないから大変でした。

――やり直すのも大変ですしね。

平井 1回の撮影にすごく時間がかかるから、何度も撮影できないんです。1回リハをして、本番が2回ぐらい。計3回、1日でやりました。役者がセリフをトチって撮り直すことはできるだけ避けたいので気をつけましたし、毎回力量を試されている感覚でしたね。

――脚本についてはどう感じましたか。

平井 話自体はシンプルで、神田川沿いで巻き起こる男女のお話です。死んだ同級生を悼んで井の頭公園のボート乗り場で働く女性に亡きクラスメイトの想いを伝えようと行動を起こすところが、話のフックなのかなと思います。初めの40分のワンカット撮りが、すごく大きな意味があるのかなと感じました。

――二人はクラスメイトの死を、ことさら悲しむ訳でもないですし、全体的にドラマチックな展開を抑えたところが独特のトーンを生み出していました。

平井 この映画における同級生の死のように、現実感のない死ってあるじゃないですか。そこをドラマチックに描き過ぎないところは、個人的にすごく好きでした。

――智樹が舞に告白するシーンも案外サラリとしていますよね。

平井 高校生ぐらいだと、こんな感じの告白なんじゃないのかなと思います。舞は危なっかしいところもある子だからこそ、智樹は重くではなくサラっと告白する。その感じがいいのかなと。