20歳で怪我によりレーサーの道を断念。音楽の力が自分の人生を再び動かしてくれた

――ReNさんが音楽の世界へ進んだ経緯を教えてください。

ReN レーサーになる夢をあきらめたのが、音楽の世界へ進むきっかけでした。10代なかばで高校を辞めて、プロのレーサーになるためにイギリスへ渡ったんですが、怪我により夢をあきらめざるをえなくなったんです。それまで夢に向かって走り続けていたけど、止まらざるをえなくなった時期に、自分が聴いてきた音楽をもう一度聴き直して。ちょうどその時期ですね。今でも日付を覚えていますが、20歳だった年の8月6日に観たエド・シーランのライブが転機になりました。

800人のお客さんを前に1人で音楽を奏でて、自分の言葉でファンの方々の喜怒哀楽をコントロールするかのようなパフォーマンスを見て、「会場にいる人たちと感情を共有して、みんながクタクタになるほど発散させられるアーティストはすごいし、人として無敵だな」と思ったんです。そこから、当時感じていたプレッシャーなんかを誰に聴かせるわけでもなく、音楽にぶつけてみようと思い始めました。ライブの興奮が残っている状態で、終演後に自宅へ帰ってからギターを練習し始めて(笑)。そこからですね。何かに取りつかれたかのように音楽を作り続けて、今に至っています。

――その後は、レーサーへの思いは吹っ切れたのでしょうか?

ReN 20歳の頃の自分は選手としての分岐点にいましたけど、怪我で断念した時に初めて「人生が終わったかも」と思ったんです。自分の武器がなくなってしまったようで、人として落ち込みやすく、傷つきやすく、弱くなっていたし、友達からも「お前らしくねえな」と言われたほどでした。でも、音楽に出会ってからは「終わりじゃないな」と思うようになりました。

レーサーを目指していた時は、誰よりもサーキットを速く走るドライバーに憧れていましたが、それ以上に恐怖を押し除け期待を背負い走る男の姿、そうした人間のすごさや強さを、音楽でも表現することはできると思ったんです。そこからは第2の人生というか、現実逃避だったのかもしれませんが、悔しさや憤りをひたすら音楽へぶつけていき、20歳の若さもあったので「やれるところまでやるぞ!」とがむしゃらになっていました。

――シンガーソングライターとしてのやりがいを感じた瞬間は?

ReN 最初の数年間は、ライブハウスで対バンライブにたくさん出演していたんですけど、初めてチケットを買ってくれたお客さんのことを今でも覚えていて。自分の力でつむぎだした言葉に寄り添ってくれる人と初めて出会った時は、うれしかったし、気合いが入りましたね。今では、当時、サーキットで競いあっていた仲間たちがどんどん上にあがっていくのを見ているんですけど、みんなの耳に入るような曲を作りたいと思うし、鼓舞する曲を作りたいと思っています。当初、思い描いていた道と方向性は変わったけど、気持ちは変わらず走り続けている感覚もあります。