役作りをし過ぎると、足し算になっていく気がする

――『MIRRORLIAR FILMS Season 4』の一編『おとこのことを』は、主演が窪田さん、監督が水川あさみさんですが、企画をお聞きした時の印象はいかがでしたか?

窪田正孝(以下、窪田) 夫婦の共作に関しては、周りに気を遣わせたりするのと、正直、ちょっと戸惑いはありました。でも、お互いに役者としてのリスペクトがあるし、「いつか一緒に作品を作りたいね」という話をしていたので、面白い企画だなと思って引き受けることにしました。

――脚本を読んだ時はどんな印象を持たれましたか?

窪田 情報が少ない(笑)。

――(笑)。ほぼセリフがないですし、一人芝居に近い内容ですからね。

窪田 情報がない分、何が出てくるのかは現場でやってみないと分からなかったです。人間って、体から情報を出そうとはしていないけど、無意識に出している。たとえば同じ空間に人が3人いて、その3人の一人が違うだけで全く違う空気になって、異なる雰囲気になるというのは、普段の生活でも感じているので、現場にあるものをスタッフさんと感じながら作り上げていくイメージでした。

――音や照明の使い方が繊細だったのが、とても印象的でした。

窪田 現場に入る前に、監督・役者という立場で話し合ったのが、「結局は自分次第」というのが作品のテーマの根本だろうと。「見る視点によって世の中はどんどん変わってくる。見え方を一つ変えるだけで、良くも見えるし、悪くも見える。再生していたものを逆再生すると、全く違った視点になって、小さな幸せに気づくことができる。それを表現するために、少しずつ色を帯びていくという風にしたい」というところから、細部に渡って、いろいろな工夫を凝らしています。

――役作りは、どんなことを意識しましたか?

窪田 トゥーマッチというか、役作りをし過ぎると、足し算になっていく気がするんです。どちらかというと引いていくイメージでやりました。どうしても役者って波や波長を立てなければいけないと考えて、そこに醍醐味や、やりがいというものを感じる。でも、そうすると、どうしても過度な芝居をしてしまうことがある。そうしないためにも、その空間にどれだけ溶け込んで、どれだけ普通の一人の男の人でいられるかということに重きを置いて演じました。

――監督としての水川さんはいかがでしたか?

窪田 2日間という短い期間の中ですが、やっぱり他人とは違う距離感なので、ちょっと不思議な感じはありましたが、彼女はすごく陽気で、人に好かれる人物なんですよね。今回は水川監督が以前、ある作品でご一緒した渡辺良平さんに照明をやっていただいたり、その作品で監督をやられていた関和亮さんにカメラを担当していただいたり、人とのつながりの中でできた映画なんです。たくさんの人の助けによってできた作品だし、仕事場での彼女を久しぶりに見れたので嬉しかったです。