いろいろな人との出会いで考え方や歌い方が変わった

――今回カバーEP『白』をリリースしようと思った理由を教えてください。

川崎鷹也(以下、川崎) ここ数年でいろんな方と会う機会が増え、たくさんの方と歌わせていただくことが多くなりました。そんな方々に恩返しをしたかったんです。本来であれば自分の楽曲で完結させるのがベストなのかもしれませんが、今回は大切な人に向けて、たとえばおばあちゃんが大好きな美空ひばりさんの「愛燦燦」を歌うとか、その人の思い入れがある楽曲を歌いたいという想いがカバーEPをリリースするきっかけになりました。

――「白」というタイトルに込めた想いは?

川崎 いろいろな人との出会いで僕の考え方や歌い方が変わったように、大切な人との出会いで真っ白なパレットに、いろいろな色がのっていく。自分の原点は真っ白なパレットにあるという意味合いを込めて、『白』というタイトルにしました。また、カバーEP作品はシリーズ化して、今後もリリースしていきたいという夢もあり、色でシリーズ化するのも面白いなと思って。今後どんな色のカバーEP作品がリリースされるかも楽しみにしてほしいなと思ってます。

――川崎さんが生まれる前の曲もカバーしていますが、どのような基準で選曲したのでしょうか?

川崎 前提としては、先ほどお話した通り、対象となる誰かの好きな曲や、その人との想い出の曲ですが、裏テーマとしては僕自身、昭和の楽曲や昔から歌い継がれている名曲が好きなので、僕を応援してくださる若い世代とそういう曲を繋ぐ役割ができたらいいなと僭越ながら思っています。「愛燦燦」を一曲通して聴いたことがないという若い世代もいると思うので、僕がきっかけで「いい曲は、やっぱり何十年経っても色あせないんだな」という気持ちになってもらえればと、過去の名曲を歌わせていただきました。

――「愛燦燦」にはどんな印象を持っていましたか?

川崎 僕は作詞をする際、何気ない日々に対して分かりやすい言葉選びをしているんですけど、そうではない日本語の素晴らしさや漢字の趣、風物とか、そういう深いものを感じます。美空ひばりさんの歌唱の表現も繊細ですし、今回歌わせていただくことで学ぶことはたくさんありました。

――エレファントカシマシの「悲しみの果て」と玉置浩二さんの「メロディー」はどちらもエネルギッシュなヴォーカルの楽曲です。

川崎  歌力のある曲が大好きで、玉置浩二さんや宮本浩次さんのような歌心とパワーのある方を昔からよく聞いていました。宮本さんは上手いという概念を超えていらっしゃっていて、一声聴いただけで、グッとくるし、説得力がある。玉置さんは声の出し方だったり、ブレスだったり、体の使い方だったり、知れば知るほど圧倒される。音楽をやればやるほど気づくことがたくさんあります。たとえば低音の出し方。低いのに音量が下がらないどころか、むしろ上がったり。何から何まで勉強になる方なので、音楽を仕事にしてから更にリスペクトは強くなっています。

――「悲しみの果て」は、高校時代からの親友であり、現在のマネージャーとの思い出の曲だそうですね。

川崎 マネージャーはお笑い芸人になるために、僕はミュージシャンになるために東京に出てきました。当時は、いろんな葛藤があって、未来は見えないし、その先に待っているものが何なのか分からないし。「悲しみの果て」の歌詞も、それに近いことが描かれていて、なんとなくリンクするものがあったんです。高校時代から歌っている曲でもあるんですけど、当時の僕とマネージャーだけじゃなくて、夢に向かって一歩踏み出そうとしている人たちの気持ちを代弁していると思うので、ずっと僕の中にある楽曲の一つです。

――竹内まりやさんの「元気を出して」は、所属事務所の社長に恩返しの意味も込めてカバーしたとお聞きしました。

川崎 竹内まりやさんは社長にとってベスト・オブ・ミュージシャン。僕と社長の出会いもすごく古くて、なかなか売れなかったので苦労もかけました。マネージャーが入る前は、社長と僕の2人で。二人三脚で地方やショッピングモールを回ったりもしてきました。今回カバーEPを出させてもらうにあたって、「社長が喜ぶ曲を1曲入れよう、じゃあ竹内まりやさんでしょう!」と、この曲を選びました。

――HYの「366日」は、どうしてカバーされたのでしょうか?

川崎 高校時代に学園祭で歌って、「音楽をやろう!」と決めたきっかけの曲なんです。それから10年経って、いろんな方に僕の曲を聴いていただけるようになって、今歌うことに意味があるなと思ったので「366日」を選びました。

――玉置浩二さんの「メロディー」を選曲した理由は何でしょうか?

川崎 ずっと小さい頃から聴いていたというのもあるんですけど、どちらかというと玉置さんは、音楽を本気で志すようになってから改めて聴き直したミュージシャンです。歌い方や、歌に対する想いに惹かれて、「こういうミュージシャンになりたい」と思ったのが玉置さんなんです。ギターも弾いたことがなかった状態で、ミュージシャンを志し、東京に出てきて。初めて弾き語りができるようになった曲がまさに、「メロディー」だったんです。ただ僕にとって玉置さんという存在は、別格すぎて。元々、カバーEP『白』にも入れない予定だったんです。あまりにも恐れ多いし、勇気が出なかったんです。でも、今回アレンジを担当していただいた武部聡志さんが「大切な人との思い出を繋ぐ歌だから、玉置の曲を入れないとダメだよ!」と仰ってくれて僕の背中を押してくださり、収録を決めました。