やりたくないことを先に全部書き出しておく

――松井さんはSKE48のオープニングメンバーとしてデビューしましたが、お芝居のお仕事を志したのはいつ頃ですか?

松井 もともとお芝居がしたくて芸能界に入ったので、最初からですね。ステージから客席に向けて歌って踊ることで、人に見られる耐性がつくと思ったし、表現の勉強にもなると考えていました。アイドル活動をしている間も、お芝居をしたいという気持ちはずっと変わらなかったです。

――お芝居をしたいという気持ちはどんなきっかけで芽生えましたか?

松井 小さい頃から学芸会で、表現したり、人に観てもらったりすることが好きでした。母が宝塚を好きだったのもあって、天海祐希さんが出ている舞台を観に行ったこともあります。蜷川幸雄さんが演出されている舞台を映像で観た時に、舞台っていろんな表現があって、自由なんだなと感じたんです。たとえば「ここが火星です」と言ったら、それだけで舞台が火星に変わる。その自由さと、生でお芝居をしている俳優さんたちの熱量や集中力みたいなものが伝わって来てすごく感動して、私も舞台の上で、何かを表現する人になりたいなと思ったのが最初のきっかけです。

――アイドルグループでの経験が、お芝居にも活きている部分はありますか?

松井 ずっとライブ活動をしていたので、何が起きても動じない力というか、ハプニングとかイレギュラーなことに関しての耐性はついたのかなと思います。

――グループを卒業して、一人で活動するようになって、意識が変わったと感じることはありますか?

松井 現場は基本的に初めて会う人たちばかりで、その時のチームでひとつのものを作るので、現場ごとに転職しているみたいな感覚です。現場ごとに新しい職場に行って、そこで人間関係を作ってコミュニケーションもとらなきゃいけないし、もちろんお芝居もしないといけない。その大変さは一人になってから常々感じています。でも、数を重ねていくと、何回もご一緒できるスタッフさんや共演者の方々、「お久しぶりですね」と言える方が増えていくことがうれしいですね。

――最後に進路選択を控えているティーンにメッセージをお願いします。

松井 よく「やりたいことが分からないです」と聞かれることがあります。私の場合、お芝居がしたいというのは決まっていましたが、それよりもやりたくないことのほうが多くて。これはやりたくないけど、これだったらやりたいというのが、結構はっきり決まっているタイプの人間なんです。そう考えられるようになったのは、学校の先生に「やりたくないことを先に全部書き出しておくといい。それ以外は許容できることで、やってもいいよって思えること。まずは自分の苦手なことや、やりたくないことを理解しておくと自分に向いていることや、やりたいことが見えてくると思う」と言われたことが大きくて。それを実践した時に、「これも無理だ、あれも無理だ」となったけど、私の好きなもの、やりたいことは、お芝居で表現することなのかもしれないと明確に気づけたんです。だから、やりたくないことをはっきりさせると、見えてくるものもあるのではないでしょうか。

Information

『よだかの片想い』
2022 年9 月16 日(金)新宿武蔵野館ほか全国公開

松井玲奈、中島歩
藤井美菜、織⽥梨沙、⻘⽊柚、⼿島実優、池⽥良、中澤梓佐、三宅弘城

原作:島本理⽣『よだかの⽚想い』(集英社⽂庫刊)
監督:安川有果
脚本:城定秀夫
主題歌:⾓銅真実「夜だか」(ユニバーサル ミュージック)
企画協力:グリック、SPOTTED PRODUCTIONS
制作プロダクション:ダブ / 配給:ラビットハウス
©島本理⽣/集英社 ©2021映画「よだかの⽚想い」製作委員会

理系女子大生の前田アイコ(松井玲奈)の顔の左側にはアザがある。幼い頃、そのアザをからかわれ、恋や遊びには消極的になっていた。しかし、「顔にアザや怪我を負った人」のルポルタージュ本の取材を受けて話題となってから状況は一変。本の映画化の話が進み、編集者・まりえ(織田梨沙)の紹介で、監督の飛坂逢太(中島歩)と出会う。初めは映画化を断っていたアイコだが、次第に彼の人柄に惹かれていく。飛坂への片想いを自覚し、不器用に距離を縮めていくアイコ。しかし、飛坂の元恋人の存在、そして飛坂は映画化の実現のために自分に近づいたという疑心暗鬼が、アイコの「恋」と「人生」を大きく変えていくことになる……

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松井玲奈

俳優

1991年7月27日生まれ。愛知県出身。主な映画出演作に、『はらはらなのか。』(17/酒井麻衣監督)、『21世紀の女の子』(19/坂本ユカリ監督)、『女の機嫌の直し方』(19/有田駿介監督)、『今日も嫌がらせ弁当』(19/塚本連平監督)、『幕が下りたら会いましょう』(21/前田聖来監督)など。NHK連続テレビ小説「まんぷく」(18)「エール」(20)、TBS火曜ドラマ「プロミス・シンデレラ」(21)にレギュラー出演。役者として活躍するだけでなく、小説集 「カモフラージュ」(集英社)で小説家デビューを果たし、その後も「ひみつのたべもの」(マガジンハウス)、「累々」(集英社) などを執筆。

Photographer:Hirokazu Nishimura,Interviewer:Takahiro Iguchi, Stylist:Hanae Sato, Hair&Make:Kumiko Shiraishi
衣装協力
HIMIKO