観客に想像力を働かせてもらえるような余白を残す作品を作りたかった

――監督デビュー作『おとこのことを』が『MIRRORLIAR FILMS』で上映される運びとなりました。監督デビューにいたった経緯をお聞かせください。

水川あさみ(以下、水川) 『MIRRORLIAR FILMS』のプロデューサーでもある山田孝之から、「監督やらないか?」と電話でオファーを受けました。

――今まで監督というお仕事に興味を持たれたことはありましたか?

水川 考えたこともなかったし、自分が監督を務めるとも思ってなかったのでびっくりしました。でも、『MIRRORLIAR FILMS』のプロジェクトは、「誰でも映画が撮れる時代」をテーマに、新しい映画制作のあり方を目指しています。一般の方でも参加できることに夢を感じたし、5分以上15分未満と長編ではないので、挑戦してみようと思ったんです。

――映画の状況設定も水川さんの発想ですか?

水川 そうです。私と、昔からの親友でスタッフでもある脚本家の桃井麻矢と一緒に作品を作りました。日常的にいろんなことを共有している彼女となら面白いことができそうだなと思いました。

――セリフに頼らず、照明が効果的に使われていると思いました。

水川 このタイトルの『おとこのことを』もそうですが、上から読んでも下から読んでも同じ言葉のような「そういう面白いものを、映像のトリックを使ったりして、撮れたらいいね」という発想から始まって、そのあとに自分たちのメッセージを含めたストーリーを形にしていきました。

――実験的な取り組みですね。

水川 そうですね。今までやったことがないもの、見たことがないもの、違和感があるものでも、「変化」というテーマにはまれば、面白く表現できるかなと。15分という短い時間に何を残すかということを考えました。

――セリフに頼らない演技を成立させるために、どのような工夫をされましたか?

水川 最近の作品という言い方をすると語弊があるかもしれませんが、状況や登場人物の感情などをセリフで表現し過ぎだなって思う時がたまにあって、観ている人が「これはどういう風に受け取れるんだろう」と、想像力を働かせるというか、余白を残す作品が少ないと感じていました。セリフがないって難しいけど、役者としては一番やりがいがあったりもします。環境音というか、機械や空気の音、窓を開けた時に入ってくる外の情景、ため息などを大事にしながら作るように意識しました。