子どもたちが自力で頑張る話に惹かれる

――今回、石田監督が自身のオリジナル企画として『雨を告げる漂流団地』を制作することになった経緯を教えてください。

石田祐康(以下、石田) 実を言うと、オリジナル作品は大変だから避けていたんです。前作『ペンギン・ハイウェイ』(2018年)の時から「オリジナルで作ってほしい」という会社からの要請はあったんですが、紆余曲折あった末に、自分で森見登美彦さんの原作を選ばせてもらったんです。それはとても素晴らしい出会いでしたし、いろいろな経験を積むこともできました。でも、そのあと社内で「今度こそは頼む!」という雰囲気があったので、ちょっと逃げられなくて(苦笑)。それで話を考えてみて、パッと浮かんできたのが、団地が海を漂流するというストーリーだったんです。

――少年少女の異世界サバイバルドラマともいうべき内容ですが、舞台は団地という親近感のある場所でもあります。そこでの主人公たちの冒険には、監督自身の子どもの頃の実体験が反映されているのでしょうか?

石田 もともと、子どもだけしかいない状況が好きなんです。『ホーム・アローン』(1990年)や、『ドラえもん』の劇場版シリーズみたいに、そういう状況になぜか惹かれます。幼い頃の僕も、いつも子どもたちだけで行動して、いろんなことを切り抜けていくという経験が人一倍多かったんです。大人にベタッとくっついて行動するタイプではなく、自分たちで楽しみながら何とかしていた。それはとても楽しいことだけど、やっぱり子どもしかいないと収拾がつかない場面や、危機的状況も訪れる訳です。その大変さ、過酷さと向き合うことも含めて、いい経験になったと思います。その頃の印象が大きいから、どうしても描きたくなるんでしょうね。『ペンギン・ハイウェイ』も、子どもが自分の力で知恵を絞って頑張る話だから惹かれましたし、今回もやるべきことは同じだったという感覚です。漂流団地に同乗するメンバーに大人も入れるという可能性も十分あり得たとは思いますが、やっぱり子どもたちだけの物語にしたかった。

――少年少女だけのユートピア的ファンタジーかと思いきや、けっこう大きなケガをしたり、シビアな危機に陥ったり、なかなか描写がリアルですよね。

石田 そんなに明確に「リアルに描こう」と意識した訳ではないんですが、必要なことだと思って描いていたのは確かですね。僕自身、小学生の頃は人一倍ケガをする子でもあったんです。サッカー部だったんですけど、練習中に同じツートップの子と走り回っていた時、転んで小指が90度ぐらい曲がっちゃって。また別の時は、野球部の校内一に大きな先輩にぶつけられて腰をやってしまったり。またある時は、ボールの蹴り方がよくなかったのか、右足の親指あたりの骨を折って足が短くなっちゃったこともあったり……。とにかくどれも頑張っていた中で生傷やら骨折やらが絶えない子どもだったんです。だから、劇中で子どもがケガする場面を描く時も、これみよがしな暴力的描写を意図している訳ではなく、体感として「こういう状況で子どもが全力で頑張ろうとしたら、こういうケガをしてしまうんだろうな」という正直な気持ちで描いているんです。

――なるほど!監督自身が子どもの頃からがむしゃらな性格だったから、それが作品に反映されているんですね。『フミコの告白』然り、『ペンギン・ハイウェイ』然り、今回の『雨を告げる漂流団地』然り。

石田 そうなんですかね?(笑)。でも、確かにすごく活発で、ケガすることも恐れず、やりたいこと、やるべきことを優先するタイプでした。子どもがケガする場面なんて実際にはなるべく見たくないものですけど、サバイバルという過酷な状況を描いているのに、それが全然ないと噓になる。自分に嘘をつかず、なるべく本当のことを描きたいという意識もあるものですから。ただ、商業作品としてバランスを欠くことになるかもしれませんが……その辺の折り合いは、まだ自分の中でついていませんね。