太鼓の音が一緒になったときはすごく気持ちよかった

――初めて『藍に響け』の脚本を読んだときの印象はいかがでしたか?

久保田 私の演じたマリアは幼いころに交通事故にあって言葉を発することのできない役ですが、マリア主体に物語を読んでみて、演じるのが難しそうだなと感じました。しっかり役作りして、いろいろ学ぶことが必要だなと思いました。

紺野 私の演じた環は、場面場面でちょっとずつ表情が変わっていく役柄です。最初こそテンションは低めですが、太鼓に出会って一瞬テンションが上がったり、太鼓が叩けるようになるまで時間がかかりながらも、次第に闘志を燃やしていきます。太鼓部の部員と打ち解けてからの、環の役回りも大きく変わりますし、マリアと他の部員では見せる表情も違っていて、いろいろ考えないといけないことがあるなと思いながら台本を読みました。

――確かに環は、映画の最初と最後で別人のように変化をしますよね。

紺野 最初のほうで見せる思い詰めたような表情と、クライマックスでみんなと太鼓を演奏するシーンで見せる表情は、全く違う表情にしたかったので、かなり意識しました。

――「女子高生だけの太鼓部=熱血!」というイメージを抱いていたんですが、実際の映画は、熱い部分と繊細な部分が共存している印象を受けました。

紺野 あまり女子っぽくしないように心がけていました。太鼓という存在があったからこそバランスが取れていたなと感じました。

久保田 女子だけの部活なので、男子が主役の熱い青春映画みたいにはならないのですが、「熱血!」という部分は環のセリフの端々から滲み出ていて、よかったかなと思います。

――映画のキャッチフレーズは「人とうまく繋がることが出来ない女子高生たちが「音」で自分の世界を変えていく。」というものですが、太鼓を通して部員たちが心を通わせる姿を表現するのは難しくなかったでしょうか?

久保田 台本をいただいてから期間を空けずに太鼓の稽古が始まりました。稽古中に太鼓の音で人は繋がれることを実感していたので、あまり撮影で苦労することはありませんでした。

――太鼓の練習期間はどれぐらいあったのでしょうか?

久保田 撮影が始まる3か月ぐらい前から練習が始まって、本格的に太鼓を叩き始めたのは撮影まで1か月を切っていた時期でした。

紺野 何とか叩けるかもって手ごたえを感じたのは本当にギリギリだったよね。

久保田 大変だったことはたくさんあるけど、まず筋肉痛がすごかった。

紺野 手のマメもつぶれるしね。

久保田 石鹸がしみて手を洗うのもしんどかった。でも毎日、稽古があるから太鼓を叩き続けなきゃいけないし、リズムを覚えるのも大変だし、とにかく必死に練習していました。

紺野 太鼓を叩く姿勢が、普段は取らない姿勢なので、それをキープするのも苦労しました。

久保田 練習の甲斐あって、徐々に太鼓の音を聴いているうちに、一体感があるなとか、これはバラバラだなって分かってくるようになってきました。みんなの音が一緒になったときは、すごく気持ちよかったです。

――海岸でお二人が気持ちをぶつけ合うシーンが美しくて印象的でした。

久保田・紺野 海岸!

久保田 これまでのお仕事で一番寒かったです(笑)。

紺野 撮影は12月だったんですけど、風がすごくて、さらに雨も降ってきて……。夏まで海は行きたくないと思いました(笑)。

久保田 生まれて初めて12月の海に入りましたからね。ただ一方でスタッフさんの温かみも感じました。みなさんが私たちのために暖を取ってくれたんですよね。

紺野 そういう過酷な状況でしたが、カメラを回す直前まで入念にリハーサルをして、一回で撮りきったので思い出深いです。

――監督はリハーサルを重視する方なんですか?

紺野 特に重要なシーンは入念にやられますね。

久保田 クランクインの前にもリハーサルだけの期間を設けて、何日かリハーサルをしました。

――海岸以外で印象的なシーンはありますか?

久保田 環とマリアが気持ちをぶつけ合ったり、部員たちが話し合ったり、部室の中で起こっているシーンは、どれも印象深いです。マリアがたじたじになるぐらい、環に言葉を浴びせられる教会のシーンも好きですね。