自分の答えを人に押しつけたくないし、常に「点」でありたい

――8枚目のアルバム『ReLOVE & RePEACE』は前作のアルバム『PERSONALITY』から2年ぶりのリリースになります。『PERSONALITY』はコロナ禍を反映した内容でしたが、今回はいかがでしたか。

高橋優(以下、高橋) 今回は「再会」を大きなテーマにしていて、歌詞にもそれが反映されています。

――前作とは気持ちの上で臨み方も違いましたか?

高橋 全然違うかもしれません。たとえば『PERSONALITY』収録の「room」という曲は、部屋の中にこもって、分断されている中で書きましたし、「PERSONALITY」という曲もリモートでラジオ収録をしている時に、ガラス越しにスタッフがいるスタジオの景色に思いを馳せて書きました。でも今回は、また叫び出しているというか、より自分の感情が露わになってきました。

――12曲が収録されていますが、多彩な楽曲が並んでいます。

高橋 バラードが入っていたり、アッパーな曲が入っていたり、できるだけバランスのよい構成にしたかったんですけど、ライブを意識している部分もあり、アッパーな曲が多めかもしれません。この2年間、人と話す機会が減ったので、溜め込むものも多くなりました。そうして溜め込んじゃったものが、アッパーになって出てきたのかもしれないです。

――日本はもちろん、世界的にも混沌とした今の状況が、創作活動に及ぼした影響もありますか?

高橋 元から混沌はあった気がするし、危なっかしいムードは感じていたけど、それでもどうにか保てていた均衡が、今は崩れだしている気がします。ちょっと前までは「なんで人のことを殺しちゃダメなんですか?」と聞くことに危うさを感じていたけど、その質問を投げかける前に殺しちゃう人が現れたり、殺されたいと願う人が出てきちゃったりして。それを危ないとも思わない価値観も出てきている。何でもネタ化して、動画で切り取って「草」ってつけたら面白いみたいなノリになっていますよね。それを不気味に感じているのは、僕だけなのかどうかは分からないですけど、一緒になって誰かのことを指さして笑うとか、誰かのことを刃物で傷つけに行くみたいなことをやりたいと思ったことはありません。だからってきれいごとを歌うのは違うというのは、今回のアルバムでも気をつけましたし、絶対に表現したいと思ったことです。

――ただ単に理想を歌うのではないということでしょうか?

高橋 自分自身も人のことを嫌いになったり、憎たらしいと思いながら生きてるし、いろんな感情があるのに、「人はこうあるべきだ」とか「愛」とか「理想」とか、きれいなことばかり言えないですよね。僕の答えを人に押しつけたくもないし。常に「点」でありたいというか。どう「線」を結ぶかは聴いてくれた人たちに委ねる。毎回、曲を作る上で思うことかもしれないですけど、今回は特にそこを大事にした気がします。

――自分の答えを押し付けずに、バランスを保つために、どんなことを心がけていますか?

高橋 ポジティブな言葉が、めっちゃ嘘くさい人っているじゃないですか。選挙でも、「絶対ムリじゃん!」みたいなこと掲げている人には、「悪い人ではないんだろうけど、この人が政治家になっちゃって大丈夫かな?」とかありますよね。僕は自分を立派な人間と思ったことは一度もないけど、僕の中に理想と思うものはある。人と人が仲良くして、戦いのない世界があったら素晴らしいと思うけど、昭和58年に生まれて38年間生きてきて、戦争をしていない人類を見たことがないんです。「人は平和であるべき」というのは確かにそう。みんなで楽しくバーベキューとかして、子どもも大人も老若男女、笑っていたら素晴らしいと思う。ライブをしている時は本当に「幸せだ」と思います。その幸せがブチ壊れて欲しくないけど、自分の中にも、誰かと誰かが憎しみ合ったりしていることに対してシンパシーを感じてしまっている部分があるかもしれない。場合によっては、目の前で誰かが殺されてしまった時、殺した人に共感するかもしれない。そういった、いびつなものが自分の中にはある。だから会話でもどっちかに振り切りすぎていたら「この人怖い」「そっち系の神様が登場するのかしら」と思われる可能性もあるから、バランスを考えますよね。

――自分の中のいびつさを認めた上で、いろいろな視点を共有するということでしょうか。

高橋 こうして会話をしている時って相手の気持ちを想像しますよね。今って、想像力がなくてもいいような便利さが世の中にいっぱいあるじゃないですか。想像しなくても動画を観れば理解できたり、考えなくても答えを出してくれるものがたくさんある。古い考え方かも知れないけど、僕は話す上でも、物を作る上でも、想像力がまず大事だと思っています。自分はクズかもしれないし、もちろん正義だけでもないし、悪だけでもないかもしれないし、中途半端な人間かもしれない。中途半端だけど、中途半端なりに相手の気持ちも想像することで、話も広がる気がするんですよね。そこで意固地になっちゃったら、そんな奴の歌なんて誰も聴かないだろうし(笑)。自分なりの想像力があるから、いろんな人と繋がれているのかもしれないですね。