自分事として捉えることができた作品

――映画『夜明けまでバス停で』の撮影は、かなりタイトだったそうですね。

大西礼芳(以下、大西) 脚本が届いたのは、本当に撮影のちょっと前くらいでした。

――コロナ禍で実際にあった事件をモチーフにしている作品ですが、オファーの段階で内容は聞かされていたのでしょうか?

大西 事前には知らされていなかったです。脚本を読ませていただいて、2020年に起きた事件をモチーフにすると知ってびっくりしました。主人公の働いている場所などが違うフィクションですが、表現する上で慎重にならないといけないなと思いました。

――大西さんが演じたのは、居酒屋の店長で、恋人でもあるマネージャーのパワハラ・セクハラに悩まされる寺島千晴です。従業員とマネージャーの板挟みとなる実直な女性ですが、役作りではどんなことを意識しましたか。

大西 脚本を読ませていただいた時点で、やりがいのある役柄だなと思いましたし、すでに脚本でキャラクターが完成されているような気がしたんです。だから、あまり作りすぎないほうがいいのかなと思いました。板挟みになりながら飲食店で働いていますけど、店長としてお仕事で人と接する時の顔と、本当の千晴らしさが出る瞬間を、それぞれ表現できるように意識していました。

――高橋伴明監督から、こういう風に演じてほしいという具体的な指示はありましたか?

大西 特になかったです。伴明さんから「質問はあるか?」と聞かれた時も、「特にありません」と返事しました。何か質問したとしても、「書いてある通りだから」と仰るかなと思ったので(笑)。

――撮影の雰囲気はどうでしたか?

大西 撮影現場は本当に楽しかったです。そうそうたる役者さんたちの中で演じるのは、普通はものすごく緊張することだと思うんですが、皆さん優しく受け入れてくださって、緊張させてくれなかったです(笑)。撮影の合間もいろんな話を聞かせてもらって、ずっとしゃべっていました。ルビー(・モレノ)さんも、ずっと「店長、店長」と呼んでくれていて、大西礼芳というより、千晴として見られているような感覚でした。だから、撮影の合間と、「よーいスタート」がかかった瞬間の切り替えがほとんどなかったんですよね。

――スムーズに役に入っていける雰囲気だったんですね。

大西 「今から芝居する!」みたいなのがなかったんですよね。それは千晴を演じる上で、すごく良かったです。

――完成した作品の印象を教えてください。

大西 私が出演しているシーンは、主に飲食店のパワハラやセクハラなどの問題が描かれていますが、その他にホームレスの方たちの生活も描かれていて、その部分を私は撮影中に拝見していなかったんです。飲食店は私たちも利用することがあるし、過去に私もバイトしたことがあるので、自分事としても捉えることができました。ただ普段はホームレスの方たちの人間関係に触れることがないので、その世界を、映画を通して垣間見ることができたのは、とても新鮮でした。