同じ名前のキャラクターを演じることに運命を感じた

――『LOVE LIFE』は一組の夫婦を襲った悲しい事件をきっかけに、夫婦と、その周辺にいる人たちの関係性に不穏な変化が生じていく内容ですが、脚本を読んだ印象はいかがでしたか?

山崎紘菜(以下、山崎) 深⽥晃司監督が、「人間は誰もが孤独を抱えて生きている」と仰っていたのですが、抱えている孤独が誰かによって引き寄せ合ったり、反対に反発し合ったり、膨れ上がっちゃったり。一緒にいるのに、すごく孤独を感じたり、反対に孤独が和らいだり。その人間模様が繊細に描かれている脚本だなと思いました。

――今回演じた役名は「山崎理佐」と、苗字が同じです。

山崎 オーディションを受けた時は、下の名前が書いてなくて、「山崎」とだけ書いてあったんです。その時はオーディションを受ける人のために、分かりやすく役名を同じ名前にしているのかなと思っていたのですが、合格後に役名が山崎だと知りました。なかなか同じ名字の役を演じる経験はないので、運命めいたものを感じました。名前以外にも元陸上部という設定など、役との共通点も多かったです。

――街中を疾走するシーンがありますが、素晴らしい走りでした。

山崎 元陸上部としての意地を見せました(笑)。結構な長い距離を走ったのですが、カメラから離れる時は、近づく時より速度が遅く見えます。画面上では、あまりスピード感が出ないと分かっていたので、これまでの人生で一番の走りをしようと思いました。

――理佐は主人公・妙⼦の夫・⼆郎の元恋人で、今も思いを寄せていますが、どんな気持ちで演じられましたか。

山崎 失恋をして、傷口がまだぐちゃぐちゃしたままの状態で、喪失感や罪悪感などを抱えて生きている理佐を演じるのはただただ苦しかったし、心が痛かったです。

――深田監督の演出はいかがでしたか?

山崎 たとえば、顔を一瞬上げてほしいという演出の時、「もうちょっとゆっくり」「もうちょっと滑らかに」と、速度などの細かいところまでこだわって見てくださっていて。ちょっとでも、「ここが違うな」という部分があったら、ちゃんと指摘してくださいます。時間などの制限がある中で、監督がOKだと思えるまで、一緒に付き合ってくださるので、すごく愛情を感じました。

――役について具体的な説明はありましたか?

山崎 実はキャラクターについてや、こう演じてほしいなど、あまり説明は受けていないんです。最初の本読みの時に、「この役を任せられると思ってキャスティングをしているので、皆さんが演じる姿を撮れば、素晴らしいものになると思います」と、ありがたい言葉をかけてくださいました。オーディションの時点で、すでにお芝居を見てくださっていて、それを踏まえてのキャスティング。決めていただいた時点で、お芝居の方向が監督の望むものに近かったのかなと思ったので、大きく何かを変えることなどは考えずに、今できる自分の精一杯を出そうという気持ちで現場にいました。