やりたいことが決まらなくても、慌てなくていい

―――演じながら手応えを感じることはありますか?

浅沼 演じている時は、ほぼないですね(笑)。舞台ではお客さんのリアクションがリアルタイムでわかりますが、映像作品などでは作っている最中は観ている方のリアクションが届かないので、そこは演出家のOKを信じるしかないし、それを指針に進んでいくしかありません。

――「四畳半」シリーズであれだけエネルギッシュな芝居をされている時も、手応えや確信を感じることはない?

浅沼 ないですないです。とにかく必死に演じるだけでした。今回の『四畳半タイムマシンブルース』は、ほかの作品よりも思い入れが強かったぶん、収録が始まったころは先ほど言った「客観視」の部分で少しブレてしまったかもしれません。いつもは捨て去るべきだと考えている「こう演じたい」という自分の意識が少し顔を出して、邪魔をしてしまったんですね。

――それでも「私」を演じることに、喜びはありましたか。

浅沼 それはもちろんうれしかったです。でも、それよりもプレッシャーのほうが大きかったのと、自分のなかで特別な存在だったからこそ持っていた「執着」に気づかされたという印象です。良い意味でも、悪い意味でも。最終的には、自分でも納得して収録を終えることができました。あとは映画館で、あるいは「ディズニープラス」で、皆さんに楽しんでいただければと思っています。「四畳半神話大系」をずっと好きでいて下さった方々にも、本作でこの世界に初めて触れる方々にも。

――最後に、この記事を読んでいる10代の読者に向けてのメッセージをお願いします。

浅沼 夢を追いかけるにしても、諦めるにしても、自分が納得したうえでその道を進んでほしいということですね。やりたいことが決まらない人は、慌てなくていいと思います。僕も、この歳になってもまだ自分の夢を叶えられていませんから。やりたいことが思いがけず棚から落っこちてくることもあれば、ずっと執着していた夢が形を変えることもある。だからそんなに焦らなくてもいいと思いますよ。もちろん、責任は持てませんけど(笑)。

Information

『四畳半タイムマシンブルース』
ディズニープラスにて配信中

原作:森見登美彦『四畳半タイムマシンブルース』(角川文庫/KADOKAWA刊)
監督:夏目真悟
原案・脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
キャラクター原案:中村佑介
音楽:大島ミチル
主題歌:ASIAN KUNG-FU GENARATION「出町柳パラレルユニバース」(Ki/oon Music)
制作:サイエンスSARU
配給:KADOKAWA アスミック・エース
声の出演:浅沼晋太郎 坂本真綾 吉野裕行 中井和哉 諏訪部順一 甲斐田裕子 佐藤せつじ 本多力

🄫2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

8月12日、灼熱の京都。その夜、下鴨幽水荘で唯一のクーラーのリモコンが水没するという大事件が発生。この危機を乗り越えるべく、住人の大学生「私」、そして映画サークル「みそぎ」のクールビューティー明石さんらが対策を協議していると、そこにモッサリした風貌の見知らぬ男子学生・田村が出現。彼は25年後の未来からタイムマシンに乗って現代にやってきたのだという。その時「私」は閃いた。このタイムマシンで昨日に戻り、壊れる前のリモコンを持ってくればよい! しかし、悪友の小津、先輩の樋口師匠や羽貫さんたちはタイムマシンで勝手気ままに過去を改変。宇宙消滅の危機を予感した「私」は慌てて軌道修正を図るのだが……。

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浅沼晋太郎

脚本家・演出家・俳優・声優・コピーライター

1976年1月5日生まれ。岩手県出身。多摩美術大学卒業。2006年TVアニメ『ZEGAPAIN -ゼーガペイン-』のソゴル・キョウ役をきっかけに声優としても活動を始める。2007年より、エンターテイメント・ユニット「bpm」に参加。bpm作品の全脚本と演出を担当する。舞台作品以外にも、映像脚本、イベント用脚本、CDドラマ脚本なども執筆。

Editor:Keita Shibuya,Interviewer:Atsushi Okamoto
取材場所
京都タワー