自分にとって響く大人がいっぱいいた映画の現場

――中村さんは中学生の頃から芸能活動を始めていますが、どのタイミングで、このお仕事を続けていこうという覚悟が決まったのでしょうか?

中村 最初からあったかもしれません。中学生の頃から、「どうすれば、しっかりしたお仕事をしていけるのか」と切実に考えていました。うちは母子家庭で、早く母親を助けてあげたいという思いが自分の中でありました。でも勉強はできない(笑)。どうせなら楽しいことをしたいなと考えていた時に、大阪のアメリカ村なんかに買い物に行くと、たまに雑誌の人に声をかけていただくことがあったんです。それで「もしかしたら私でもできるのかな」と思って、テレビ番組の歌手オーディションがあることを知り、思い切って応募しました。

――最初から俳優を目指していた訳ではなかったんですね。

中村 14歳でしたから、ふわっとしていました。運よくオーディションで選んでいただいて、アイドルデュオとしてデビューして、最初はただただ運だけでした。後々その分の苦労を味わったんですけど。

――学生の頃から、芸能活動は楽しかったですか?

中村 正直、苦しさのほうが大きかったですね。やっぱり子どもですから、環境も急に変わったし、誰かが細かくアイドルについて教えてくれる訳でもない。与えられたものに応えなきゃいけないけど、経験がないからどうしていいかも分からないし、私はうまく立ち回れるタイプの子どもでもなかったから、不安が大きかったです。それに、まだ母親のことも恋しい時期で、かなり寂しかったです。

――視聴者からみると楽しそうにされている印象がありました。

中村 一生懸命キャラづくりもしていたので、そう映っていたところもあるかと思いますが、それが逆によかったのかも。自分じゃないキャラクターでいなきゃいけないことに限界を感じ始めて、もっと自分らしいことを頑張りたいと思えるようになりましたから。その先に何かが待っていると思っていたので、一生懸命頑張ってはいたんですけど、アイドルデュオを解散して「次は自分が本当に頑張れるものを見つけなきゃ」と思いました。

――そこからお芝居を始めたきっかけは?

中村 しばらくは普通にアルバイトをしていたんです。そういうことも経験しなきゃだめだと思ったし、アイドル時代は自分を律していたから、「もっと遊びたい!」って気持ちもあったし。自由に友達とたくさん遊んで、すごく良い時間ではあったんですけど、ちょうど高校を卒業するくらいの年齢、18歳くらいの時に、大学に進む友人がいたり、就職する友人がいたり。「どうしよう……特別できることもないし」というタイミングで、たまたま映画プロデューサーの女性にお会いしたんです。前の事務所の人が紹介してくれて、先輩なんですが、普通にお茶しておしゃべりする友人みたいな関係でした。その方が「映画のオーディションを受けてみなよ」と仰ってくださって。「女優さんか……なれる訳ないな」と思ったけど、ちょい役で出させてもらいました。その時に自分が参加した映画を試写で初めて観て、とっても感動したんです。私は全然お芝居もできていないし、出演も1、2シーンだったけど、こんなにかっこいいお仕事の一員になれたんだって。アイドル活動をしていた時にはない充実感があったし、現場の方たちは心からかっこいいと思える仕事をしている方ばかりでした。生意気ですけど、自分にとって響く大人がいっぱいいました。本当に自分が心を動かされる瞬間にたくさん立ち会えたっていうことが大きくて、それが心から「この仕事を頑張りたい」と思える瞬間だったんです。

――過去にアイドル活動を経験しているからこそ、よりやりがいを感じたのかもしれないですね。

中村 一度挫折を経験して、この世界の厳しさが身に沁みて分かって。ここで頑張らないと後はもうないというのもありました。女優の仕事を始めてからは、人よりも自分ができることをしようと、いっぱい映画を観たり、いっぱい舞台を観たり、努力を惜しまないようになりました。その気持ちは今も忘れないようにしています。

Information

『窓辺にて』
2022年11月4日(金)全国ロードショー

稲垣吾郎 中村ゆり 玉城ティナ
若葉竜也 志田未来 倉 悠貴 穂志もえか 佐々木詩音/斉藤陽一郎 松金よね子

監督・脚本:今泉力哉
音楽:池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)
主題歌:スカート「窓辺にて」(ポニーキャニオン/IRORI Records)
配給:東京テアトル
©2022「窓辺にて」製作委員会

フリーライターの市川茂巳(稲垣吾郎)は、編集者である妻・紗衣(中村ゆり)が担当している売れっ子小説家と浮気しているのを知っている。しかし、それを妻には言えずにいた。また、浮気を知った時に自分の中に芽生えたある感情についても悩んでいた。ある日、とある文学賞の授賞式で出会った高校生作家・久保留亜(玉城ティナ)の受賞作「ラ・フランス」の内容に惹かれた市川は、久保にその小説にはモデルがいるのかと尋ねる。いるのであれば会わせてほしい、と……。

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Twitter

中村ゆり

俳優

1982年3月15日生まれ。大阪府出身。2003年から女優として活動を始め、『パッチギ! LOVE&PEACE』(07)で全国映連賞女優賞、おおさかシネマフィスティバル新人賞を受賞。主な映画出演作に『そして父になる』(13)、『ディアーディアー』(15)、『海よりもまだ深く』(16)、『破門 ふたりのヤクビョーガミ』(17)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17)、『Fukushima50』(20)、『DIVOC-12 海にそらごと』(21)、『愛のまなざし』(21)など。現在、ドラマ「クロサギ」に出演中。公開待機作に『母性』(22年11月23日公開)、『嘘八百 なにわ夢の陣』(23年1月6日公開)、『仕掛人・藤枝梅安 第一作』(23年2月3日公開)、出演舞台に「歌うシャイロック」(2023年2月9日~2月21日上演)。

Editor:Keita Shibuya,Photographer:Tomo Tamura,Interviewer:Takahiro Iguchi