「情けない男を演じることが楽しい」そう思える年齢になった

――『追想ジャーニー』の脚本を読まれた時、どんな感想を持たれましたか?

高橋和也(以下、高橋) すごく面白かったです。「ぜひやりたい!」と思ったんですけど、撮影期間が3日間と非常にタイトな上に、セリフの量がものすごく多い。クランクインまで1週間ぐらいで全てのことを覚えなきゃいけないから、かなり大変そうだなと思いました。それでもお引き受けしたのは、この物語に魅力を感じたからです。出ずっぱりの役で出演できるのも貴重なチャンスですし、俳優として挑戦しがいがあると思いました。

――高橋さんは主人公・文也の30年後を演じられました。ご自身に通じる部分はありましたか?

高橋 僕は文也みたいに自分の人生を後悔したことはないですが、逆にそこに興味を惹かれました。誰しも、自分ではどうにもならない苦しみを抱えていたり、情けない思いをしたりしながら生きていると思うんです。でも、それは人間として生きていく上ですごく大事なところだと思う。完璧な人間よりも、挫折や屈折、孤独、弱さを知っている人のほうが信用できるというか、そういう人間を演じることで伝えられることがあるんじゃないかなと思ったんです。情けない男を演じることが楽しい。そう思える年齢になったんでしょうね。

――タイトなスケジュールとお聞きしたのですが、リハーサルをする時間はありましたか?

高橋 一回だけテストしましたが、その後はどんどん回していく感じでしたので、俳優同士のリハーサルはほとんどできませんでした。監督には「リハーサルをしてほしい」とお願いしたんですけど(笑)。

――ほぼぶっつけ本番で臨まれたのですね。文也を演じられた藤原大祐さんとの掛け合いはいかがでしたか?

高橋 藤原くんとは衣装合わせで1回会ったきりで彼のこともよく知らないし、もちろん彼も僕のことをよく知らない状態でスタートしました。でも、藤原くんは勘がよくて、セリフもしっかり入っているから、1発勝負でOKが出ちゃうんです。「今ので大丈夫なのかな」と思う時もありましたが、出来上がった作品を見ると、すごく臨場感があって。通常の映画だったらリアリティーを求めて、突っ込みどころもありますが、監督は虚構の世界を表現したかったと思うと、すべてが奇跡的にうまく融合していました。どこか演劇的で、物語の中にぐいぐい引き込まれていく不思議な作品に仕上がっていました。

――公式サイトの高橋さんのコメントに「最近は役が『俺を演じろ!』と、向こうからやって来る気がする」とありましたが、まさにそんな心境ですか?

高橋 (笑)。年齢的なこともあるんでしょうけど、僕自身が醸し出す雰囲気に、人生に疲れた、敗北した男の感じが透けて見えているのかもしれないですね。そういう意味も含めて最近はこういう役をオファーされることが多いように思います。

――『追想ジャーニー』というタイトル聞いた時に、ドラマの「日本ボロ宿紀行」(19/テレビ東京系)を連想しました。

高橋 「日本ボロ宿紀行」の桜庭龍二も売れない歌手、そして、文也も売れない舞台役者。歌手も俳優も自分が経験していることなので、キャラクターには感情移入しやすかったです。女房に逃げられて、子どもにも会えないとか、こういう先輩をたくさん見てきましたから(笑)。売れていないけど夢を捨てきれずに頑張っている先輩の俳優たちとお酒を酌み交わしながら、演劇論とか俳優論をよく語り合ったりして、そこで学んだことが今の僕の栄養になっているんです。僕自身も男闘呼組というグループでは華やかな部分を見て、解散後は苦労した経験もしているので、こういうキャラクターにはシンパシーを感じます。