憧れの人とのお仕事はターニングポイントになった最高の経験

――上坂さんは昭和歌謡や昭和アイドルに詳しいですが、小さい頃から音楽に興味があったんですか?

上坂 子どもの頃は、リアルタイムでテレビを観る習慣がなくて、どちらかというと車でお父さんがかけていたディスコのCDを聴いたりしていました。流行りをよく知らなかったので、結果的に時代に左右されない音楽を聴いていました。リアルタイムで聴いていた音楽もありますけど、CDのライナーノーツを見ながら昔の音楽を聴くのが好きでした。

――どうやって知識を深めていったのでしょうか?

上坂 外に出て遊ぶタイプではなかったので、小学生くらいからネットでいろいろ調べ始めて、中学生くらいになると、ネット掲示板などでいろんな趣味の人がいることが分かって、そこから深めていきました。

――昔の邦画もお好きなんですよね。

上坂 私が学生の頃、NHK BSのリバイバル放送で、黒澤明監督の特集などを観たりしていました。昔の映画は真面目な印象があるので、家のリビングで見ていても両親に叱られないし、古い映画は逆に新鮮な感じがするんです。もちろん洋画も観ますが、当時は俳優さんの名前がなかなか覚えられなくて、邦画だと「このシリーズは、この人が主役」というのが分かりやすいし、本数もたくさんあったので、より記憶に残っています。

――上坂さんは「サブカルの聖地」と言われる中野ブロードウェイもお好きですが、いくつぐらいから行き始めたんですか?

上坂 中学生の時に初めて行きました。「まんだらけ」に行ってみたくて、どこにあるんだろうと調べたところから始まって、中野ブロードウェイの建物の外にもディスクユニオンがあったり、付近の商店街にもたくさんいいお店があったりして、一度行ったらハマりました。中野ブロードウェイは品揃えが充実していて、あらかじめ「今日はこれを買いに行く」と決めていないので、散歩に近い気分でぶらぶらするイメージです。

――9歳の頃から芸能事務所に所属していたそうですが、その時から声優を目指そうと思っていたんですか?

上坂 小さい頃からお世話になっている芸能事務所には声優部門もありましたが、当時は前に出るタイプではなくて、声優の仕事もそんなに詳しくはなかったので、明確な夢は持っていませんでした。声優になりたいと思ったのは高校生の時で、声優部門の社内オーディションを受けて、声優部の所属になりました。

――声優を目指す前から、アニメやゲームは好きだったんですか?

上坂 「おジャ魔女どれみ」や「プリキュア」のシリーズ初代は観ていましたし、ゲームだと『ポケットモンスター 赤・緑』が発売された頃で、実際にプレイしていました。でも、それが自分の中で声優の仕事に結びつくことはなかったので、普通に好きなものという感じでした。

――上坂さんは尊敬する声優さんとして桃井はるこさんを挙げていますが、どういうきっかけで好きになったのでしょうか?

上坂 2000年代の初めに「ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて」というアニメがあって、すごくネット掲示板で話題になりました。題材がコスプレアイドルで、魔法少女。今まで自分が観たことのない、いろんな要素が詰まっていて、桃井さん自身が歌を歌われていたり、キャラクターとのリンクもありました。それを観たのは小・中学校の頃だったんですけど衝撃的でした。

――今でこそ、声優さんがアイドル活動をするのも珍しくないですが、桃井さんはその先駆けですよね。

上坂 当時の桃井さんは「アキバの女王」みたいな存在でしたが、アキバ系そのものが珍しかったというか。コミケとかオタクカルチャーの話題は、なかなか言いにくいものだったんですけど、自分の好きなことを堂々とやっている桃井さんの姿勢が格好よくて影響を受けました。

――後に桃井さんは、上坂さんの楽曲も手掛けられますが、尊敬している方とお仕事する気持ちはいかがでしたか?

上坂 尊敬している分、一生ファンのままでいたいなと思っていたんですけど、アーティストデビューをして間もなく、桃井さんに曲を書いていただけることになり、本当にびっくりしました。憧れの人なので、緊張しましたし、当時は100%素直にハッピーというより、少し複雑な気持ちもあったんです。でも今思い返すと、最高の経験だし、自分にとってターニングポイントになる、活力をいただいた瞬間でした。