稲垣吾郎から感じた長年この世界にいるからこその緊張感

――お二人の共演シーンは、かなりの長回しでした。

若葉 本編ではなくなっていますけど、もっともっと長いシーンがあって、そのシーンは5分の1ぐらいになっていました。もうちょっとグロテスクなセリフも実はあって、正嗣はサラっと酷いことを言っていました。僕はやったほうがいいって話をしていたんですけど、映画の中で必要か必要じゃないかのジャッジを今泉さんがしたんだと思います。

穂志 カットされた部分のことは覚えています。正嗣がしゃべっていて、それをなつが受けているような状態で。ずっと集中していて、正嗣の言葉を聞きながら感情が動いたこともすごく覚えています。試写を観た後、今泉さんが、そのシーンのことを「ディレクターズカット版で盛り込む」と冗談めかして話していたので、私はディレクターズカット版を見たいなと思っています(笑)。

――改めて今泉監督の印象はいかがでしたか?

若葉 冷酷な監督だなと思いました。現場のノリには絶対に委ねないし、どこかで見たことがあるとか、俳優がある程度の方程式でやったものには絶対にOKを出さない。作品第一主義なので、映画にとって必要かどうかというジャッジも冷酷です。だからこそ信頼できるなと常々思っていますし、今泉さんは人間の「寂しさ」や「気まずさ」みたいな言語化できない空気を撮れる監督だと思います。

穂志 今泉監督は、堅苦しい雰囲気を一切出さず、役者と同じ目線に立ち、常にフラットでいてくださる方なので、とても信頼しています。撮影中は、粘ることもあれば一回でOKが出ることもあるので少しびっくりもするのですが、潔さと頼もしさを感じます。セリフ量や出番が多い少ないといったことに限らず、どのキャラクターもものすごく愛していて、背景もしっかり考えられている。役を息づかせて際立たせる今泉監督らしいリズムのある作品だと思いました。

――若葉さんは主演の稲垣吾郎さんとの共演シーンも多いですが、どんな印象を持たれましたか?

若葉 長年この世界にいらっしゃるからこその緊張感をすごく感じました。僕が小学校の時から見ている方が目の前にいるというのももちろんありますけど、それだけではなくて、この世界に長く居続ける人の緊張感があるんですよね。

――稲垣さんは今泉作品に初出演ながら、今泉さんの作品に溶け込んでいましたよね。

若葉 本当に今泉さんの映画が好きなんだなって思いました。今泉さんの温度も理解されていたんですよね。もちろん今泉さんの力量もあったと思うんですけど、今泉さんの温度を理解するまで、感覚をつかむまでは、役者さんによっては苦戦される方もいますが、稲垣さんは初めから理解されているような雰囲気で、本読みの時からそれを感じました。