海外での撮影を経験して少しだけ生きやすくなった

――お二人は演技のお仕事をするなかで、ターニングポイントのようなものはありましたか?

若葉 僕は21、22歳ぐらいの時ですね。それまで、この仕事を全くやりたいと思っていなかったので、1年間は何も俳優活動をせずに、ただバイトをしていた時期があったんです。自分にとっては、その時期が一番の地獄でしたね。

――なぜ、1年間の空白があったんですか?

若葉 単純にこの仕事をやりたくなかったからですね。俳優っていうものに興味が全くなくて。もう一回ちゃんと本腰を入れてやってみるかって思ったのが20代前半ぐらいです。みんなが就職し始めて、遊んでくれなくなって、そこで再び俳優をやってみようかと。

――周りの友達が遊んでくれていたら、まだモラトリアムな期間は続いていた?

若葉 そうですね。今もバイトしていた可能性すらあります。僕自身は何も動いてなくて、周りに突き動かしてもらいました。

――穂志さんはどうですか?

穂志 最近のことなので、それがターニングポイントになったかどうかも分かっていないんですが、今年の6月頭まで海外に行って撮影をしていたんです。私は日本しか知らなかったから、選択肢がもう一つできたような感覚で、今は少しだけ生きやすくなっている気がしているんです。また海外でやりたいなと思えるくらい、日本にいただけでは感じなかったものをたくさん得られたと思っています。

――アメリカテレビシリーズ「SHOGUN」の撮影ですよね。

穂志 そうです。アメリカ制作で撮影地がカナダ。江戸時代に日本に漂着した三浦按針(ウィリアム・アダムス)のお話なので、日本人のキャストもたくさん出演していて、すごく楽しい撮影でした。

――若葉さんは海外志向ってありますか?

若葉 日本映画を海外に持っていくことにはすごく興味があるんですけど、積極的に海外の作品に出たいという気持ちはないです。自分の悪いところでもあるんですけど、それぐらい日本映画が好きなんです。幸いなことに、自分の出た作品で海外の映画祭に行ったこともありますし、海外のお話も幾つかいただいたことがあります。ただ最終的に出演するジャッジを自分がしなかったので、今は本当に興味がないんだなって思います。

――もしかしたら今後、考え方が変わる可能性もありますか?

若葉 どうですかね、もう33歳なので、この年で変わってないってことは、これからも変わらないのかなと(笑)。ま、来年再来年あたり「英語勉強してます!」とか言ってたら、「なんだコイツ……」くらいに思ってください(笑)。

――最後に改めて『窓辺にて』の注目ポイントを教えてください。

穂志 観終わった後に、言語化するよりも、自分の心に耳を澄ませて、何を感じたか、何が残るのかということを感じてください。

若葉 最近どんどん映画がファスト化されていって、思考停止で観られると言うか……展開が早かったり、過激な描写があったり、やたらとアングルを切り替えたり。観ている側の想像力を掻き立てる様な映画が少なく感じていて、そういう世の中の流れを今泉さん自身は全く意識していないと思うんですけど、僕は個人的に今泉さんが作る作品に、日本映画に対する、世間に対するアンチテーゼ的なものを常々感じています。ファスト化する映画とは違うエッジの効き方が、『窓辺にて』にはあると思うので、その辺を観てほしいですね。それに世間がどう反応するかがすごく楽しみです。

Information

『窓辺にて』
絶賛公開中!

稲垣吾郎 中村ゆり 玉城ティナ
若葉竜也 志田未来 倉 悠貴 穂志もえか 佐々木詩音/斉藤陽一郎 松金よね子

監督・脚本:今泉力哉
音楽:池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)
主題歌:スカート「窓辺にて」(ポニーキャニオン/IRORI Records)
配給:東京テアトル
©2022「窓辺にて」製作委員会

フリーライターの市川茂巳(稲垣吾郎)は、編集者である妻・紗衣(中村ゆり)が担当している売れっ子小説家と浮気しているのを知っている。しかし、それを妻には言えずにいた。また、浮気を知った時に自分の中に芽生えたある感情についても悩んでいた。ある日、とある文学賞の授賞式で出会った高校生作家・久保留亜(玉城ティナ)の受賞作「ラ・フランス」の内容に惹かれた市川は、久保にその小説にはモデルがいるのかと尋ねる。いるのであれば会わせてほしい、と……。

公式サイト

Twitter

若葉竜也

俳優

1989年6月10日生まれ、東京都出身。2016年、映画『葛城事件』で第8回TAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞。主な映画出演作に『台風家族』(19)、『ワンダーウォール』(20)、『生きちゃった』(20)、『AWAKE』(20)、『くれなずめ』(21)、『前科者』(22)、『神は見返りを求める』(22)、『ぜんぶ、ボクのせい』(22)などがある。NHK連続テレビ小説「おちょやん」で朝ドラに初出演し注目を集める。また、『愛がなんだ』(19)、『あの頃。』(21)、初主演した『街の上で』(21)と今泉作品の常連である。公開待機作に今泉力哉監督のNetflix映画『ちひろさん』(23年2月23日よりNetflixにて全世界配信&劇場公開)がある。

穂志もえか

俳優

1995年8月23日生まれ、千葉県出身。約4000人の応募者から「ミスiD2016」グランプリを獲得。映画『少女邂逅』(18)で初主演。その他出演作に、ドラマ「獣になれない私たち」(18/日テレ)、「デザイナー渋井直人の休日」(19/テレビ東京)、「ラジエーションハウス」(19/フジテレビ)、「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(20/フジテレビ)、「大豆田とわ子と三人の元夫」(21/カンテレ)。映画、『愛がなんだ』(19)、『8日で死んだ怪獣の12日の物語』(20)、『花束みたいな恋をした』(21)、『街の上で』(21)。公開待機作に『生きててごめんなさい』(23年2月3日公開)、アメリカテレビシリーズ「SHOGUN」がある。

Editor:Keita Shibuya,Photographer:Yu Tomono,Interviewer:Takahiro Iguchi