舞台で輝く先輩方を見て頭でっかちになっている自分を反省した

--出演される舞台「歌妖曲~中川大志之丞変化~」の公演が始まりました。

中屋柚香(以下、中屋) 昭和の芸能界が舞台です。(シェイクスピアの)『リチャード3世』を下敷きとした、すごくユニークな音楽劇です。歌も踊りも豪華ですが、芝居自体はストレートなので、いろんな人の心に刺さるのではないかと思っています。

--今回演じられる峰田希子は、中村 中さん演じるスター、そして歌手である一条あやめの娘です。どのような役どころですか?

中屋 華麗なる芸能一家に生まれた女の子という設定です。一見生意気なようで、実は素直ですごく強い子だという印象です。

--お芝居をする上で、舞台と映像では心構えもまた違ってくるものでしょうか?

中屋 瞬間をカメラでとらえる映像のお芝居と違って、舞台では継続した物語をずっと表現し続けなければなりません。その中で、さっきまで冗談をおっしゃっていたのに、役に入ったら別人のようになる先輩方はプロだなと思いますし、ある意味「芝居の化け物」です(笑)。そういったオンオフの切り替えが私には難しくて、絶望的な気持ちになることもありました。特に最初は自分が何をしても間違っている気がしていたんです。でも、次第にいい芝居ができるという驕りや期待は捨てて、自分にできる最大限のことを日々愚直にやっていくしかないという気持ちになっていきました。今までは「ここで悩んでもしょうがない。もう今日は悩むの終わり!」って切り替えていたことを思うと初めての経験です。

--主演の中川大志さんは、昭和の歌謡界で大スターに上り詰めながらも、自分の一族に復讐を仕掛けるという役どころですね。

中屋 爽やかな方というイメージでしたが、お会いしてみたら芝居に対して真面目でストイックな方でした。稽古が終わったオフの時はとても柔らかな雰囲気ですが、どれだけいい芝居をできるかということを第一に考えていらっしゃるからか、稽古中にふと見せる表情は「この役を演じている時しか見られないんじゃないか」と思えるほどなので、皆さん驚かれると思います。

--倉持 裕さんの演出はいかがですか?

中屋 倉持さんが「そこをもうちょっとこうしてみて」とおっしゃった後の皆さんのお芝居を見ると、「なるほど!」って納得できるものになるんです。舞台の中で登場人物をどれだけ魅力的に、立体的に浮き上がらせるかといったことを間近で勉強できてすごくありがたいです。

--中屋さんが倉持さんに意見を投げかけることもあるのでしょうか?

中屋 私は頭で考え過ぎてしまうところがあって、気になることは逐一聞くんです。だからなのか、最近は「考えすぎるな。セリフを聞いて相手に伝えるだけでいいんだよ」と言われることもあります。台本がすごく面白いし、舞台だと何度も稽古ができる分、自己解釈になってはいけないと思いながらも、「もしかしたらこれはこういうことなのではないか」という思いが次々に出てきて、だんだん分からなくなってくるんです。そこが舞台の面白さでもあり、難しさだなと。

--今回の舞台が初めての挑戦だそうですね。

中屋 もう初めてのことばかりで。だからこそ、どこまでできるか、自分を試すような気持ちで臨んでいます。休憩中に自分の芝居に満足できなくて暗い顔をしていることもあるのですが、舞台上でいきいきとしていらっしゃる先輩方が「楽しんでる?」って声をかけてくださるたびに「頭でっかちになっていたな」って気づかされることも多いです。

--改めて「歌妖曲~中川大志之丞変化~」の見どころをアピールしてください。

中屋 私がソロで歌わせていただくシーンがあるんです。私は中村 中さん演じる一条あやめの娘ですから、それをどのように引き継いでいくべきか日々試行錯誤しています。そのあたりをぜひ見ていただきたいですね。中さんの歌声は格好よくて美しいので、稽古中も自然に涙が出てきてしまうほどです。

--12月25日の大千穐楽は大阪公演で迎えることになりますが、それまでに希子がどのように変わっていくかが楽しみです。

中屋 私自身、きっといろんな気持ちの変化もあると思います。慣れたなと思えたはずなのに、全然うまくいかないな、とか。その辺りも楽しみながら、私にしかできない希子を作っていけたらなと思っています。