根本にあるのはシンプルな愛のストーリー

――映画『世界は僕らに気づかない』のオファーを受けた時はどんなお気持ちでしたか?

堀家一希(以下、堀家) この作品は僕が所属しているレプロエンタテインメントが主催する映画製作プロジェクト「感動シネマアワード」でグランプリを受賞したことで映画化が決まったのですが、「どうなるんだろう」とフワフワした気持ちでした。

――堀家さんは主人公の純悟として自身のセクシャリティとアイデンティティの危機に対峙する姿を表現されていますが、どのように役作りをされたのでしょうか?

堀家 映画の設定と同じ環境で生きる方に話を伺ったりもしましたが、行きつく先はシンプルな愛のストーリーなんだと理解しました。純悟は、フィリピンと日本のダブルとか、父親がいないとか、男性だから、女性だからという以前に、「母親に愛してもらいたかった」という思いが根底にあり「どうせ俺なんか幸せになれないんだ」と思っていたけれど、今まで受けていた母親からの愛情に気づいて次第に気持ちが変化していく。そこがこの物語のコアになっています。

――ともすると重めに感じるテーマを、登場人物の日常にスポットをあてることで、サラリと描いている印象を受けました。

堀家 飯塚花笑監督は「LGBTQとかそういう社会の局面は、世の中に当たり前に存在すると思っている。だからこの映画では、わざわざそこに触れることはしなかった」と話されていました。

――本作はすべて群馬県で撮影されたとお聞きしました。

堀家 夜は静かだし自然豊かな環境です。僕の地元の岡山県に環境が似ていて、落ち着きました。撮影の1ヶ月間は純悟の家に住んでいたんです。そこで、ずっと役のことを考えながら過ごしていたので、純悟として周囲に溶け込みやすかったです。

――町の少し閉塞的な雰囲気が、映画にマッチしていました。

堀家 『世界は僕らに気づかない』というタイトル自体に、閉塞的なニュアンスがあるので、もしかしたら監督の意図でそういう雰囲気を作られたのかもしれません。

――現場の雰囲気はどうでしたか?

堀家 人数が少なかったので、スタッフさんたちと仲良くなれました。1ヶ月間も一緒にいると、名前や性格、癖も分かってくるから、ものまねしたりして、めちゃくちゃ楽しかったです。「どの現場もこんな感じだったらいいのにな~」と思うくらい、自分としては理想的な現場でした。

――母親を演じられたガウさんとは本当の親子のように見えました。

堀家 先日、ガウさんと監督と僕の3人でインタビューを受けた時に、ガウさんが「すごく生意気だった」と僕の印象を語っていました(笑)。僕としては、あんまり仲良くすると役に影響しそうだから、撮影中はあえて距離を置いていたんですが、ガウさんはそのことを知らないから「この子大丈夫かな」と思っていたみたいです。でも、「そのおかげで怒りやすかった」ともおっしゃっていました。

――感情表現が激しい役でしたね。

堀家 ここまで感情的なシーンが多い役は初めてだったので、毎日緊張していました。「うわ、3日後、このシーンだ……」と気が重くなることも多かったです。お風呂場に撮影スケジュールを貼って、撮影シーンが終わるたびに外して「よし、終わった!」というのを繰り返していました。うれしい辛さなんですが、プレッシャーとの闘いでした。

――監督の演出はいかがでしたか?

堀家 飯塚監督は演技の勉強をされたことがあるらしくて「カメラワークの関係でこう撮りたいからこっちに動いて」という客観的な演出ではなく、「この役は今こんな感じだから、こうなるかな」と役者側に立った演出をしてくださったので、すごくやりやすかったです。

――ティーンに映画の注目ポイントをアピールしてください。

堀家 僕が演じた純悟は「お母さんに愛されなかった」と不平不満を抱え、あることをきっかけに母親と向き合うことになるのですが、そういうことって多かれ少なかれ、どの家庭にもある問題だと思います。優しいしお金はあるけど休日遊んでもらえなかったとか、相手をしてくれるけどお金がないとか。純悟と同世代のティーンの方は、主人公と視点を重ね合わせて観ていただけると思います。