人の心に寄り添えて、優しい気持ちになれるような映画を作りたかった

――公開中の中編映画『夜のスカート』では、主演兼初プロデュースを務めています。どういう経緯で制作が始まったのでしょうか。

小沢まゆ(以下、小沢) 2020年にコロナが始まって、緊急事態宣言でみんながステイホームをしていた時期に、ちょうど私は40歳を迎えようとしていて、自分自身について考える時間がたくさんあったんです。10年間、育児のために俳優業を休んでいまして、40歳からの人生をどう過ごしていこうか考えた時に、本格的に俳優復帰をして、しっかりと仕事をしていきたいという思いがありました。いつ、こんな風に世の中が変わるかも、自分の人生が終わるかも分からない。だったら、やりたいことはチャレンジしていかないといけないなと感じて、以前から漠然と映画を作りたいと思っていたので、何作かご一緒している小谷忠典監督に、「小さい作品でもいいから映画を作りたいです」みたいなお話をしたのが始まりでした。

――その時期は俳優さん主導で映画を作る流れがありましたよね。

小沢 私も別の監督さんと完全リモートで、短い映像作品を作ったこともありました。ただ当時、多くの方がやっていたリモート画面の映画とかではなく、クオリティの高い作品として、ちゃんと映画祭に出して、劇場でかけられるような映画を、短くてもいいから作りたかったんです。

――『夜のスカート』は、家族とは何かを問う映画でもあると思うんですが、テーマやストーリーは小沢さんから提案したんですか。

小沢 テーマやストーリーは小谷監督です。小谷監督がご友人たちとオンライン飲み会をした時に、久しぶりに顔を合わせたご友人の一人が、実はお母さんを最近亡くしたんだというお話をされていて。「8年間、母親の闘病に付き合ったのに、逝ってしまう時に看取れなかったんだよね」と仰っていたそうなんです。その話を聞いて、心の中にある少しの後悔や心残り、そういうものを解放してあげられるような映画を作りたいと小谷監督が思われて。ちょうど私が映画を作りたいねという話をしたので、「こういう話はどうですか?」と持ってきてくださって。私も共感する部分がすごくあって、そこからストーリーを発展させて、『夜のスカート』ができました。

――脚本を作る過程で、小沢さんから内容について意見を言うことはあったのでしょうか。

小沢 今お話しした企画の前に、小谷監督が持ってきてくださった企画は全然違っていて、もっと尖ったハードな話だったんです。というのも私が「国際映画祭にも出したい」という話をしたんですが、国際映画祭で観てもらえる作品は何か特徴がないと難しい。これまで小谷監督は30カ国くらいの映画祭に作品を出品されているので、どういう内容が受け入れられるかを熟知しているんです。ただ、最初の企画は、すごく面白いと思うけど、コロナ禍で世の中が疲れて閉鎖的になっている時に、あまり刺さらないかもしれない。せっかく作るんだったら、もっと人の心に寄り添えて、優しい気持ちになれるような話のほうがいい。私自身、今はそういう方向性でやりたいという話から、『夜のスカート』を持ってきてくださいました。脚本について、あれこれ口を出すことはなかったんですけど、女性の目線から意見を言うことはありました。

――37分という上映時間は、当初から予定していたのでしょうか。

小沢 最初は私、小谷監督、脚本で入ってくれている堤健介さんの3人でお金を出し合って、15分くらいの短編映画を作ろうと話していたんです。ところが、いざ作り出すと尺が伸びて15分で収まらなくなってきて、そうすると予算が増えて、あっという間に3人で出し合った額を超えたんです。これは、ちゃんと予算をつけないと、みんながしんどい思いをしてしまうとなった時に、プロデューサーをやるんだったら予算のことはちゃんとしようと思って、「一旦、お金は全額私が負担して作って、予算をどこからか取ってくるようにします」という話をして、覚悟を決めました。

――ものすごい決断ですね。

小沢 そうすれば小谷監督も気持ちが楽になって、クリエイティブな思考にしっかりと入っていただけると考えたんです。私は小谷監督が、お金のことを気にしながら準備を進めていくことを、とても申し訳なく思っていて。クリエーターですから、お金のことは私が全部請け負うので、お好きに考えてくださいと。ただダメなものはダメと言いますし、できないものはできないのでという話をして始めました。だから中編映画を予定していた訳じゃないんですけど、結果的に37分になりました。初めてのプロデュースということで、さすがに私には力量がないので、長編にはしなかったです。結果的に予算は、文化庁の助成金申請が通って、それで補うことができたので良かったです。

――プロデューサーとして映画に関わって良かったことは何でしょうか。

小沢 企画から携わって、しっかり作品を完成させて、劇場公開まで繋げていく。映画の始まりから終わりまで面倒を見られるのは、すごく楽しい経験でした。