著書執筆で見えた歌舞伎町の魅力「誰にでも居場所があって、肯定してくれる場所」

――最新著書『歌舞伎町モラトリアム』のタイトルに込めた意味とは?

佐々木チワワ(以下、佐々木) 取材や制作の段階で編集者の方と「歌舞伎町の魅力って何でしょう?」と話し合ったときに、何者でもない自分を受け入れてくれて、お金さえ使えば居心地のよさを得られる場所だと思ったんですよ。だから、ぬるま湯というかモラトリアムのようにあの街に居続ける人もいますし、何かを見つけて卒業していく人もいて、私も実際、大学へ入ってから「やりたいことがない」となった時期に歌舞伎町に救われた想いがあったので、このタイトルにしました。

――2021年12月刊行の前著『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社)でも、歌舞伎町から見える「ぴえん系女子」や「トー横キッズ」などの実態に迫っていました。前著と最新著書の違い、今回ならではの軸はいかがでしょうか?

佐々木 前著では現代の若者像を広く浮き彫りにしましたが、今回は、歌舞伎町のホストとホス狂いの子たちに焦点を絞りました。前著の第五章『ホストに狂う「ぴえん」たち』を広げ、ホストにハマる女の子たちの感情に迫り、エッセイテイストでまとめました。ホストの何を価値と感じているかは女の子によって違いますし、何を商品としているかも男性によって違うので、お金を費やして「もったいない」と感じる方もいるかもしれませんが、女の子たちが「何に価値を感じていて、何を消費しているのか。何に思い入れがあるのか」を、物語のように描いたのが今回の主軸です。

――高校1年生で初めて歌舞伎町に足を踏み入れたときから、大学4年生の現在までの足跡も詳細に描かれていました。記憶をたどりながらの執筆は大変だったのではないかと。

佐々木 そんなに大変ではなく、執筆は10日間ほどで書き上げたんですよ(笑)。ホストクラブへの入店が可能になる18歳の当時から現在までの4年間に重点を置いて、昨日のことのように覚えているものをギュッと凝縮した感じです。

――佐々木さんにとって、歌舞伎町での体験がそれほど濃かったのかもしれませんね。

佐々木 普通に生活していると味わえないシチュエーションやセリフもあったので。例えば、出会って1ヶ月の記念で、普通の飲食店で花束を渡してきたらサムいじゃないですか。でも、ホストクラブだとロマンチックで「ここまでしてくれるんだ」と感じられるものに代わりますし、ロマンチシズムの舞台装置としての強い役割がホストクラブにあると思っているので、美化された思い出として強く残っていたのかと思います。

――現在も、歌舞伎町にはよく通われているのでしょうか?

佐々木 週4〜5日ぐらいです。自宅が近いし、私の中では「ドラえもん」の空き地感覚なんですよ。「今日はのび太がいるからしずかちゃんも呼ぶ?」「スネ夫がインスタ(グラム)にストーリーを上げていたら、出木杉君も来た」みたいな感覚。学区のように集まる人達が同じ生活圏で暮らしているし、働くのも消費するのも「歌舞伎町で全て済ませる」といった人も多いんです。外から来る人達も「歌舞伎町にいるから、一応、チワワに声をかけるか」と思ってくれているので自然と人が集まるし、ホストクラブでなくとも飲み会へ参加してみたり、仕事の打ち合わせも歌舞伎町が多いのでついでにどこかへ寄ってみたり、毎日のように歌舞伎町で過ごしています。

――なじみの場所ではありながら、最新著書での入念な取材で新たに気づいた街の魅力もありそうです。

佐々木 誰にでも居場所があって、肯定してくれる場所だと改めて感じました。歌舞伎町は何者かになれた気がする場所ですし、それこそホストクラブでお金を使うとしても、誰かの一部に数字で貢献できれば何かを残せる街だと思いました。本で描いた1人ひとりの物語は陳腐に思えるかもしれませんが、アンダーグラウンドな仕事へ就いた子のエピソードを通しても、陳腐だとしても真髄は宿るというか、人それぞれの余白が伝わると思います。

――読者の方々には、どのように楽しんでいただきたいですか?

佐々木 全体の作りとして、見開きを基本に「一文を短くしてほしい」と要望があったので最初は不安でしたが、セリフだけで余白を残した部分もあり、読者の方々も自分の思い出を振り返り、想像しながら読んでいただけると思います。私は「読んでいて全員がしんどい気持ちになれ」と書いたんですよ(笑)。歌舞伎町って幸せなことだけではないから、楽しいんです。しんどいことがあって病んで傷つけられるからこそ一瞬の嬉しかった出来事がとても尊く感じたり、絶対的なお金の価値基準があるからこそ大切なものに気づけると思っていて。ルールがある上での不自由があるからこそ自由に気がつける感覚に近いなと、執筆中も思いました。