時代劇で殺陣の技術が活かせると思いきや……

――映画『近江商人、走る!』のオファーを受けた時はどんなお気持ちでしたか?

上村侑(以下、上村) 僕は殺陣をやっているので、時代劇と聞いて「よしっ!やっと殺陣の技術が活かせるぞ」とよろこびました。

――脚本を読んだ印象はいかがでしたか?

上村 商いの才で活躍していく近江商人の役で、自分が想像していた時代劇とはまったく違う世界が広がっていました。脚本を読み進めても、一向に刀が出てこなくて「はあ……、これが時代劇か」と正直拍子抜けしました(笑)。最初にいただいた脚本は情報量が多くて、内容の理解が追いつかず「うん?待てよ、いやいや」と、読んでいて視線が行き来することもありましたが、最終的にはかなり分かりやすい形にまとめていただきました。商人だから数字を説明するセリフも多くて、数字を強調しちゃうと、「どれがどの数字だ?」と気を取られちゃうし、強弱のポイントを探るのが難しかったですね。「なかなか難しいな~」という印象でした。

――銀次は、刀ではなくそろばんで活躍するヒーローでしたね。先物取引が行われた江戸時代を舞台にした映画ですが、世界初の先物取引市場が日本で生まれたことはご存じでしたか?

上村 監督とプロデューサーに「先物取引は日本が世界初なんだよ!」と言われて知りました。投資に興味を持った時期があったので、先物取引という言葉は知っていましたが、歴史までは調べていなかったので驚きました。近江商人のビジネス感覚を知るにつれて「こんなことが当時の日本で行われていたんだ、刀が出てこなくても面白いじゃん!」と思うようになりました。

――先ほど、「説明的なセリフが難しかった」と仰っていましたが、映画ではそういう印象を受けませんでした。

上村 本当ですか?そう受け取っていただけたら良かったです。米問屋の大善屋のみんなや困っている町の人など、目の前に相手がいて説明をするシーンだったから、会話に抑揚が生まれたんだと思います。もともと脈絡のないセリフを覚えるのが苦手なので、僕ひとりでカメラに向かって淡々と話していたらきつかったと思います。しかも苦手な数字の話(笑)。映画の冒頭で銀次が「帳簿を覚えた」と言うシーンがあるんですが、内心では「僕は算数苦手だから無理だよ」と泣きつつ、でも、銀次だから覚えなくちゃいけない。「ここが減ったから、ここでこうなるのか」と脚本の流れに沿って、自分なりに数字の仕組みを理解するように努めました。

――奥行きのある画面で、前後でさまざまな人の動きがみられて、時代劇らしい立体感のある映像でした。

上村 この映画のポイントのひとつが、大善屋を中心に人が集まるワチャワチャ感なんです。いろんなキャラクターがいて、時代劇らしくない仕掛けもたくさんあるけど、スカっと痛快に楽しめるストーリーはやっぱり時代劇ならではだと思いました。「時代劇としての土台になる部分はしっかり残しつつ、ヒューマンドラマと金融の部分はメリハリをつけるようにしよう」と、監督とよく話していました。