何気ない会話劇の部分が『ひみつのなっちゃん。』の肝となっている

――映画『ひみつのなっちゃん。』では大切な友人・なっちゃんのお葬式に出かけるために集まったドラァグクイーンの一人、モリリンを演じていらっしゃいます。ドラァグクイーンぶりが板についていましたが、どのような演技指導を受けましたか?

渡部秀(以下、渡部) ドラァグクイーンに対する考え方・捉え方から、ダンスシーンでの表現の仕方までいろいろと教えていただきました。本読みの段階でも、どこまで誇張をしたらいいのかという点については滝藤(賢一)さんも前野(朋哉)君とともに意識していましたし、そのあたりのバランスは細かく監修の方からご指導いただきました。

――脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか?

渡部 字面だけでも結構笑えましたね。根本に人と人との物語があって、ドラァグクイーンだから面白いと言うわけでもないんです。ブラックジョークを含め、普通の会話も面白い。演じる前から台本を読んで笑っていました。

――確かに自虐ネタのバランスも絶妙です。ご自身が演じたモリリンについてはどのようなイメージをお持ちでしたか?

渡部 他の二人がビューティー、コミカル担当なら、モリリンはキュート担当です。そのあたりを意識しながら、あとはちょっと現代の子っぽく、現実的というかどこか冷めている部分が表現できればなと思っていました。僕もどちらかというと、そういうタイプなので、わりと普段通りかもしれません。

――今まで、ドラァグクイーンの文化になじみはありましたか?

渡部 「キンキーブーツ」などの舞台も観ていましたし、(新宿)二丁目にも行ったことがあります。今は昔とちがって、ドラァグクイーンをモチーフにした作品や表現の形も増えてきたので、自然に触れてきたのかなとは思います。ただ、今回は改めてドラァグクイーンって何ぞやというところから勉強しました。一口にドラァグクイーンといってもいろいろな方がいらっしゃるし、表現の方法も全然違う。新たな発見でしたね。

――映画の中ではダンスシーンも多いです。

渡部 僕も前野君もダンスは得意なほうではないので、先生にしっかりと教えていただきました。撮影後にスタジオを借りて練習した日もあります。ドラァグクイーンのダンスは僕が今まで目にしてきたダンスとは表現方法が違って、ただステップを踏めばいいというわけでもないんですよね。

――滝藤さん演じるバージン、前野さん演じるズブ子との東京から岐阜県郡上市への道中はロードムービーとしても楽しめます。

渡部 東京を出たというだけで、全然空気感が違いました。東京ではなかなか自分を開放できずに鬱屈していた思いが、郡上に着いたことによって開放されていく。東京でのロケが最初だったのは順番としてもありがたかったし、自然な流れになっていると思います。

――主演の滝藤さんの印象はいかがでしたか?

渡部 滝藤さんはもともととてもリスペクトしていた方です。共演できるだけでも光栄でした。実際、一緒にお芝居をしていても、話し方、現場でのふるまい方などを含め、バランスが素敵な方でした。僕が演じるモリリンは、バージンを突き動かす存在でもありますが、そんな役ができたのは役者冥利に尽きます。

――前野さんはいかがですか?

渡部 前野君は今回を機に何度かお酒もご一緒しました。前野君って、イメージとは違って意外に普段は静かだったりするんですが、そのあたりも僕と波長が合うなと思いました。

――お二人で飲む時はどのようなことを話されるのですか?

渡部 「しゃべらなきゃ!」と思わなくていいというか、気負いなく会話ができます。話は主に前野君の家族の話とかが多くて、仕事の話はほぼしないですね。

――滝藤さん、前野さんとのチーム感が後半にかけてどんどん高まっていくような印象を受けました。

渡部 どの現場でもそうですが、最後のシーンは最初に比べて座組みとしては出来上がってくるものだと思います。ただ、この作品については僕の感覚では本読みの段階で8割ぐらいは完成されていたのかなと思います。滝藤さんが音頭を取ってくださって、3人で話し合いを重ねました。

――改めて『ひみつのなっちゃん。』の見どころをアピールしてください。

渡部 目立つのはダンスシーンだと思いますが、何でもない会話劇の部分がこの映画のキモだったりします。3人の雑談は人間にとって核心を突いているものだったりするので、そこに注目してほしいですね。

――たまたまイケメンの男性に遭遇した後の3人の会話なんて、すごくリアルでした。

渡部 さっきまでの悩みはどこへ?という感じですよね(笑)。