さまざまな相乗効果を狙って大みそかをテーマに描いた

――今回どういう風に企画が始まったのか、お聞かせください。

アベラヒデノブ(以下、アベラ) 主演の吉村界人君から「何かしようぜ」と声がかかって。彼自身、「今よりもっと痺れることがしたい」という熱があったんです。それで色々考えていたのですが、映画づくりは時間がかかるじゃないですか。けれど彼は「今年中に撮影までいきたい」と。

――随分スピーディーだったのですね。

アベラ そうですね。同じく主演の武田梨奈さんとは10年前にお会いしていたんですが、この企画が始まった3年前には、すでに武田さんとも「何かつくろう」と話していて。ただ僕自身は自主制作が中心、彼らは事務所所属だったため、なかなかチャンスがなかったんです。ただ、二人もアラサーになって、とにかく事務所を超えて周りを巻き込んでつくろう!となりました。

――それで今回の映画が動き出したと。

アベラ 企画が動き出したのは撮影の2か月前でした。クランクインは2019年の大みそかで、クランクアップが2020年1月4日。日本人の感情は口元によく出るらしいので、一目で今怒っている、今笑っている、がわかる(マスク無しの)時代に撮影できたのはよかったですね。

――公開が遅れたのはやはりコロナ禍の影響でしょうか?

アベラ はい。色々な映画館で上映がストップや後ろ倒しになって。今から1年前には、公開しようと思えばできる状態にはなっていたのですが、この映画は大みそかから新年を描いています。どうせなら公開時期を年の瀬に近づけたいね、ということで今年12月23日の公開になりました。

――なぜ大みそかから年越しをテーマにしたのでしょうか?

アベラ はじめはスタッフやキャスト、俳優部も含めて、大みそかやお正月期間って皆予定が空いているんじゃないかと思ったんです。

――単に撮影条件が良かったから、ということですね(笑)。

アベラ そうですね。そこから、どうせ大晦日にクランクインするならリアルな大晦日の様子を撮るチャンスじゃないかと。横浜のカウントダウン花火といった実際のイベントも撮影できるし、そういったドキュメンタリー的な要素を足して、ヒリつくような作品を作ろうと思いました。僕ら自身もどうしても年内に撮りたいという熱量があったので、その相乗効果も狙って大みそかをテーマにしました。

――大みそかや年始の撮影で、ゲリラ的なシーンもあって、予測できないこともあったと思います。もともとの脚本と実際完成したものとで、違いはありましたか?

アベラ 意外と脚本に対して忠実に撮っています。脚本には忠実なんですが、お芝居や演出はその場での思いつきや化学反応をいかしています。主演のお二人は、もともと違うタイプのお芝居をする人です。すごく丁寧に役作りをしてプランを立てるのが武田さん。自分の中のあらゆる感情をほとばしらせて体現できるのが界人君。その二人がぶつかり合うことで、良い効果がうまれました。

――具体的にはどのような効果がありましたか?

アベラ 武田さんは「プラン通りなんてことはもうどうでもいい!目の前の界人君に負けてたまるか」となっていましたし、界人君は撮影後に「武田ってこんなにできるんだな」と想定を悠々と上回ってぶつかって来た武田さんへの感想を漏らしていました。事前にリハーサルをたくさんしていないからこそ、でしたね。

――ぶっつけ本番に近い、その場で演出していくような形だったのでしょうか?

アベラ そうですね。テストはするのですが、それで納得をしてからというよりもテストとディスカッションをしたうえで、本番で爆発させるという感じでした。テストは打ち合わせに近いというか。撮影も、撮影場所に行って初めて行いますし。キャストさん全員で顔を合わせてリハをやったわけでもありませんでした。