この作品を通して「誰かが見守ってくれていることが支えになる」を実感できた

――常盤さんと共演してみていかがでしたか?

吉田 私はずっと「芯のある女性になりたい」と思っているのですが、常盤さんはまさに理想の女性像そのものです。常盤さんがいるだけで現場が安心感に包まれ、同時にすごく引き締まる感じがするんです。大先輩の俳優と演技でやり取りができる貴重な経験ができたのもうれしかったですね。常盤さんが演じた中で、私が特に好きなのは三浦誠己さん演じる木村とのシーンです。一見暗くなってしまいそうな場面なのにクスッと笑える雰囲気に持っていく、そんな間のとり方や表情がとても勉強になりました。

――透子役を演じた前田敦子さんの印象はいかがでしたか?

吉田 前田さんは、現場でよく声をかけてくださるとてもフレンドリーな方でした。千夏にとって透子ちゃんはあこがれのお姉さん的な存在ですが、そのままの印象でしたね。千夏は母と透子ちゃん、それぞれとぶつかるシーンがあります。そこの演じ分けを意識し、透子ちゃんとのシーンでは、女と女のぶつかり合いをより強く出すようにしました。前田さん自身、お姉さんでありながら対等に会話してくださる方だったので、千夏と透子ちゃんのもどかしい気持ちを共感しながら演じることができたと思っています。

――光輝役を演じた奥平大兼さんは同世代の俳優さんですが、印象はいかがでしたか?

吉田 奥平くんは私の1歳下なのですが、年下だと思えないくらい堂々としていて、雰囲気もあって、自分をしっかり持っている印象です。千夏が光輝に抱いている「頼もしいな」という印象は奥平くん自身にも感じられるので、人としてすごく魅力的ですね。おかげで、彼にちょっと背伸びをして大人っぽく接する千夏を、自然に演じられたと思います。

――奥平さんとは所属事務所が同じですが、これまで面識はありましたか?

吉田 以前少し話をしたことはありましたが、本当に他愛のない内容で。光輝役が奥平くんに決まってから、監督と3人でワークショップをさせてもらい、そのときに奥平くんの人柄や演技について改めて知りました。あのときに、演技に対する価値観などについてたくさん話すことができて、とても勉強になりましたね。

――若年性乳がんを患ってしまう千夏を演じて、心境の変化などはありましたか?

吉田 正直、この作品と出会う前は「乳がんなどの病気はまだ先のこと」と思っていました。役づくりのためにネットでいろいろと調べましたが、情報が多すぎて何を信じていいのかわからなくなることもあって……。そのときに「きっと千夏も不安だったんだろうな」と思ったんです。そしてそれは、病気を抱えている方だけでなく、コンプレックスや周囲に打ち明けにくいことがある人、みんな同じ気持ちなのではないかとも思いました。千夏の周囲にいる人が千夏を見守って支えてくれたように、 “見守り続けることが誰かの支えになる”と気づけたのはこの作品のおかげです。

――劇中では病気や恋愛、将来についてなど考えることが多く、さまざまな感情があったと思いますが、どのような表現を意識していましたか?

吉田 千夏が自分の病気や恋愛、母親の恋などについて悩みながら、ずっとブレずに生きられているのは、周囲の人たちのおかげだと思っています。周りが千夏を見守り支えてくれているからこそ、“全てのことに平等に思いきり悩もう”と意識して演じました。