笑いと涙が詰まったこの物語は、18歳の吉田美月喜にしか表現できないものだったと思う

――今回の撮影は和歌山県の港町での撮影でしたが、雰囲気はいかがでしたか?

吉田 和歌山県に行ったのは初めてでしたが、地域の方たちがみんな優しくて、あたたかさを感じました。実際の住宅街での撮影だったので、地元の方とすれ違う機会が多く、「撮影がんばってね」とか「映画が完成したら観るからね」と声をかけてくださって。母と二人で帰り道を自転車で歩くシーンは実際の地元の方々に見守っていただきながら撮影しました。

――実際のロケーションによって演技などが変わることもありますか?

吉田 今回は「こういう地域のあたたかさがある場所に住んでいる親子」というイメージがしやすかったので、家の中でも、道でも、すぐになじんで演技をすることができました。地域ならではのあたたかさを感じられたからこそ、生まれた演技や表現があったと思います。

――東京国際映画祭での反応はいかがでしたか?

吉田 ワールドプレミア上映で笑いが起こったのがとてもうれしかったです。まさか笑いが起きると思っていなかったですし、この映画が「18歳の少女の青春と成長の物語」ということを感じていただけた気がしました。

――撮影当時18歳だった自分の映像を見返してみていかがでしたか?

吉田 今観てみると、少し幼いなっていう気がしています(笑)。演じた千夏が同じ年齢であったことも大きいですが、私自身「大人になりたい」と思っていたときに演じた作品だったので、「これは千夏と吉田美月喜の成長物語だ」とも感じられました。今後俳優としての人生を歩んでいく上での覚悟や、大切なことをたくさん学ばせてもらいましたし、この映画の中には私の人生が詰まっているなと思えます。

――この年齢だからこそ出せた演技だったのかなとも思います。

吉田 そうですね。監督も「今の吉田美月喜にしか残せないものを残したい」と言ってくださっていました。正直、私は「そんな数年で人って変わるものなのかな?」と思っていたのですが、関係者のみなさんも「今と、撮影時の吉田美月喜は全然違うよ」とおっしゃっていたので、このときにしか出せないものがあったのだと感じています。

――『あつい胸さわぎ』は俳優・吉田美月喜にとってどのような作品ですか?

吉田 『あつい胸さわぎ』のことを考えるだけで泣きそうになるくらい、私にとっては大切な作品です。主題歌の「それでも明日は」を歌われているHana Hopeさんと対談させていただいた際、フルで楽曲を聞かせていただいたら涙が止まらなくなってしまって……。『あつい胸さわぎ』という作品が私の心の中で、それほど大きな存在になっていたのだなと思いました。

――ティーンに向けて、この作品の見どころを教えてください。

吉田 見どころは“周囲から見守られているあたたかさ”と、共感できるポイントや、新しい発見がたくさんあるストーリーであることです。私や千夏と同じティーン世代、お子さんを育てている親の世代はもちろん、多くの方から「素敵な作品だった」とうれしい言葉をいただいているので、ぜひ幅広い層の方に観ていただきたいです。

Information

『あつい胸さわぎ』
2023年1月27日(金)公開

キャスト:
吉田美月喜、常盤貴子、奥平大兼、前田敦子、三浦誠己、佐藤緋美

港町の古い一軒家に暮らす武藤千夏(吉田美月喜)と、母の昭子(常盤貴子)は、慎ましくも笑いの絶えない日々を過ごしていた。小説家を目指し念願の芸大に合格した千夏は、授業で出された創作課題「初恋の思い出」のことで頭を悩ませている。千夏にとって初恋は、忘れられない一言のせいで苦い思い出になっていた。その言葉は今でも千夏の胸に”しこり”のように残ったままだ。だが、初恋の相手である川柳光輝(奥平大兼)と再会した千夏は、再び自分の胸が踊り出すのを感じ、その想いを小説に綴っていくことにする。一方、母の昭子も、職場に赴任してきた木村基春(三浦誠己)の不器用だけど屈託のない人柄に興味を惹かれはじめており、20年ぶりにやってきたトキメキを同僚の花内透子(前田敦子)にからかわれていた。親子二人して恋がはじまる予感に浮き足立つ毎日。そんなある日、昭子は千夏の部屋で“乳がん検診の再検査”の通知を見つけてしまう。娘の身を案じた昭子は本人以上にネガティブになっていく。だが千夏は光輝との距離が少しずつ縮まるのを感じ、それどころではない。「こんなに胸が高鳴っているのに、病気になんかなるわけない」と不安をごまかすように自分に言い聞かせる。少しずつ親子の気持ちがすれ違いはじめた矢先、医師から再検査の結果が告げられる。初恋の胸の高鳴りは、いつしか胸さわぎに変わっていった…

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吉田美月喜

俳優

2003年3月10日生まれ、東京都出身。「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」(20/日本テレビ系)では自称・天才美少女囲碁少女の楓役を務めた。近年の主な出演作に、Netflixオリジナルシリーズ「今際の国のアリス」、ドラマ「ドラゴン桜」(21/TBS系)、映画『鬼ガール!!』(20)、『MIRRORLIAR FILMS Season1 Petto』(21)がある。2022年には主演映画『メイヘムガールズ』が公開。2023年には主演映画『あつい胸さわぎ』、『カムイのうた』をはじめ『パラダイス/半島』など出演作品の公開が多数控えている。趣味は、読書、旅行、バレエ。

Editor:Keita Shibuya,Photographer:Yasukazu Nishimura,Interviewer:Takahiro Iguchi