「予定調和」の展開にならない面白さがある作品

――今作の脚本を読んだ最初の印象を教えてください。

笠間淳(以下、笠間) まずは時代物の設定であるというのと、僕の演じた雷蔵が示現流(※じげんりゅう:剣術の流派の一つ)の使い手の武士であるということで、僕の中では「武士としての感覚」みたいなものを大事にしたいと思いました。

――武士であることを意識して、何か役づくりをされたのですか?

笠間 はじめは、武士ならではの生き様を大事にしようと思っていました。たとえば、命を賭けた戦いに臨む時に必要以上に熱くならない、みたいな。普通であればどうしたって熱くなってしまうと思うんですけど、彼らって自分の信念と命を天秤にかけたら、いくらでも信念のほうが命より重くなってしまうんですよね。そういう美学を持って生きている。当然、雷蔵もそうした武士の一人ですから、命のやり取りをする場面ではあえて心を込めないようにしよう、という気持ちで演じていました。

――命に替えて信念を貫くというのは、いかにも武士らしいですね。

笠間 ただ、そんな雷蔵もリベンジャーとの関わりや武士として生きていたならば絶対に出会わなかったであろう人たちの姿を見て、ちょっとずつ考えが変わっていくんですよね。命を大切にしている人や、人の命が軽く扱われている様子を目の当たりにして、それまで持っていた自分の信念に疑問や葛藤が生まれた。そこから雷蔵は、徐々に自分の内なる感情をさらけ出していくようになるんです。なので、武士としての心持ちから考えや態度が変化していく様子を、かなりデリケートに演じた感覚があります。

――物語が進むごとに、雷蔵の感情が揺れ動いている様子がよく伝わりました。

笠間 ありがとうございます。この作品はほぼ一話完結型で進んでいくんですが、一話ごとに雷蔵の気持ちが少しずつ変わっていくところと、その変化もまたのちに彼自身を苦しめていくことになる……、そういったところは見どころの一つだと思いますね。

――見どころでいうと、アクションシーンも非常に迫力があって驚きました。

笠間 そこも役づくりでこだわったところです。たとえば剣を下ろす際に発する声であるとか、息をする間であるとか、そういう細かい部分も含めて音響監督さんと一緒に突き詰めながらつくり込みました。武道というのはある意味で精神世界ですし、雷蔵のように示現流の達人ともなれば、僕たち一般人では予想もつかない領域。だから、実際の示現流の使い手の方の映像を参考にしながら、できるだけリアルなアクションを追い求めたつもりです。

――良い意味で、アニメ的ではないリアルさですよね。

笠間 そうなんです。決して美化しないというか。アニメらしく「ハッ!」とか言ってカッコよく描くこともできるんでしょうけど、それだとやっぱり嘘があるんですよね。それよりも示現流本来の「キェーーッ!」みたいな声(※示現流では戦う際に激しい掛け声を上げるのが特徴)をそのまま描き出すことで、逆にそっちのほうがカッコ良い!と観ている方に思ってもらえるようにしたい、というのが僕の中の目標でもありました。

――監督とはどのようなお話をされたのですか?

笠間 監督からは収録の前に「武士である雷蔵は、当時のヒエラルキーでトップにいるような存在。自分の生き方をただ貫いていれば良かった彼が仲間に裏切られ、そこから人間として何を大事にしていくのか、というのを考えてほしい」と言われました。僕自身、演技を通して雷蔵と対話していく中で、「もうそろそろ感情を表に出しても良いよな?」と踏み込んでみても、「いや、まだ俺はそうはならない」と雷蔵から突っぱねられてしまうことも多くて。それまでに彼自身の背負ってきたものが重い鎧となって、彼の心を縛りつけていたんでしょうね。簡単には心を開いてくれないんです。そうした複雑な葛藤があるからこそ、予定調和の展開にならないというか。人間の心の変化という非常に繊細な部分をアニメで表現するのは、やってみてとても難しかったです。