世界が終わるときに後悔する人生は嫌だ

──公開前から大きな注目を集めている『金の国 水の国』ですが、ズバリ見所を教えていただけますか?

渡邉こと乃(以下、渡邉) お話の面白さと映像美ですかね。原作は人気のある漫画なんです。とはいっても、原作を知らなくても十分楽しめるような異国情緒あふれるファンタジー作品に仕上がっています。イスラム圏を連想させるモザイク模様のイスラム建築物が出てきますし、一方で南アジア風の建物も出てくる。環境も文化も違う2つの国家の話なので、そのあたりが映像として魅力的になるよう、美術さんにすごく細かいところまで描いてもらいました。

──本当に見事な映像美でした。

渡邉 あとは音楽にも注目していただきたいです。曲を書いてくださったのは、今をときめくEvan Callさん! ありがたいことに通常の映画の倍くらい曲を書いていただきましたし、作品のキャラクターの心情に寄り添うようなサウンドになっているのが本当に素敵で。映像と音楽のユニゾン感が高い作品なので、いろんな角度から世界観に浸っていただければと思います。

──作品を通じて訴えたかったメッセージはありますか?

渡邉 それはまずストーリーを軽く説明したほうがいいかもしれないですね。物語に登場するサーラ(声:浜辺美波)とナランバヤル(声:賀来賢人)は、平穏な日々を守りたいと願っているんです。だけど災難に見舞われたことで、2人は夫婦のふりをすることになる。お互いの国は敵対しているため、様々な人物の思惑が交錯する中、若い2人は前に進む……というのが全体の流れ。最終的には多幸感が得られる作品ではあるけど、本当にいろんな要素が絡んでいまして。決して「恋愛ものだから別に観なくていいや」とは考えないでほしいんですよ。

──確かにこの作品において、恋愛はひとつの要素に過ぎないですよね。

渡邉 他の岩本ナオ先生の作品もそうなんですが、どちらかというと「人はどう生きるべきか?」といったテーマに主題が置かれているんですね。キャラクターも全員が個性的なので、「社会で人はどんな思いを抱えているのか?」「その中で自分はどうするべきなのか?」といった面も見つめられる作品じゃないかと思っています。

──特に若い世代は人生観にも少なからず影響を受けるかもしれない。

渡邉 それはあると思います。私、中学生のときに「新世紀エヴァンゲリオン」(以下、エヴァ)の洗礼を受けたんですよ。猛烈に影響を受けました。当時は今ほどオタクに市民権がなかったこともあって、わりと鬱屈とした学生時代を送っていましたね(笑)。やっぱりアニメに限らず10代の頃に出会った作品って、自分の人生を変える大きなきっかけになりますよ。

──多感で感受性も豊かな時期ですからね。

渡邉 エヴァにハマっていたのと同じ頃、姉が買ってきたファッション雑誌に安野モヨコさんの『ジェリー イン ザ メリィゴーラウンド』という漫画が載っていたんですよ。その序盤で「3年後に世の中の人はみんな死んでしまう。だから思い立ったら行動しなきゃ!」みたいな場面があるんです。それを読んだとき、「その通りだ!」って共鳴したんですよね。自分が好きなことをやらなきゃ、世界が終わるときに絶対に後悔するぞと思って。その気持ちがあったからこそ、結果的に私は今の職業に就いたという面が大きいですし。

──庵野秀明&安野モヨコ夫妻から多大な影響を受けてきたわけですか。

渡邉 本当に(笑)。今回の映画『金の国 水の国』に話を戻すと、観る人によって刺さるセリフや心に響く場面は違ってくると思うんですよ。魅力的な登場人物がたくさん出てきますからね。あるいは観るタイミングによっても感じ方は違ってくるかもしれない。「今日はこの人に共感できるな」とか。いろんな解釈ができる作品であることは間違いないので、若い方には特に観ていただきたいですね。