人生のどのタイミングで出会うかで、受け取り方が変わる作品

――今作に出演するにあたって、オーディションから参加されたと伺いました。

岡本玲(以下、岡本) はい。もともと外山文治監督の『ソワレ』という作品が好きで、外山監督のワークショップオーディションがあると知り、ぜひチャレンジしてみようと。作品の基となる題材については事前に聞いていたんですが、その時に私が感じたのは「一定の距離を保ちながらも、見過ごしてしまいがちな何かを、優しく包み込むような作品」になるのではと。そんな作品を一体どんな人がつくるんだろう?という興味もありました。監督のパーソナルな部分は必ず作品にも反映されるから、ワークショップを通してその人柄に触れてみたいと思ったんです。

――実際に参加してみて、いかがでしたか?

岡本 外山監督は、独特な優しさを持った方だと感じました。それと、参加者の皆さんの年齢がバラバラだったのは興味深かったですね。若い方からシニアの方まで本当に幅広くいて。一人ひとりが何かを賭けてここに来ている、そんなピリピリ感がありながらも、お互いをしっかり尊重し合っているというか、とても純度の高い空間でした。

――ワークショップで特に印象に残っていることを教えてください。

岡本 演技の経験値は人それぞれだったんですが、たとえばシニアの方で演技経験がそれほどない役者さんでも、演技以外の部分で重ねてきた人生経験というか、刻んできた年輪みたいなものがありますよね。そういった人間としての深みを見せつけられる瞬間が多かったです。こちらがいくら用意した演技プランをぶつけても、いざ合わせた時にそれを上回るパワーで押し返されてしまう、そんな風に感じた方がたくさんいらして。そういった皆さんと濃密な時間を一緒に過ごす経験がこれまでなかったので、参加してみて本当に得るものが多かったですね。

――現場の雰囲気はいかがでしたか?

岡本 皆さんとてもフランクで、フラットで、仲が良くて。必要以上に気を遣い合うこともなかったですし、何にもカテゴライズされない風通しの良い現場でした。どんなキャリアでもどんな年齢でも、みんなが自由に声を上げて意見できる現場を目指していたんですが、その通りの空間になっていたように思います。お互いにリスペクトし合っていましたね。

――最初に本作のお話を聞いた時の気持ちを教えてください。

岡本 脚本をいただいた時に、この作品のモチーフになっている⾼齢者売春クラブの摘発事件というものが実際にあったというのを、監督から聞きました。でも私は、そうした事件が過去に起こっていた事実を何も知らなくて。そのこと自体もショックでしたし、ショックを受けている自分にも何か嫌悪感というか、自分の社会に対する興味の薄さを痛感させられた、というのが最初の印象です。でも自分のような人ってたくさんいると思うし、知識として知らない人もいるはずだからこそ、届けるべき作品だと思いました。

――この映画を世に出していく必要性を感じたのですね。

岡本 はい。誤解を恐れずに言うと、間口の狭い作品なのかなと思います。でも、それを目撃してもらうことによって、その後で見える景色がちょっと違った色を持ってくれたらうれしいなって。観る方の生き方だったり、思想だったり、あるいは人生のどのタイミングでこの作品と出会うかによって受け取り方は変わる気がするし、もしかしたら不快感を覚える方も中にはいるかもしれない。でも、それでも良いと思っています。どんなことでもいいので、何かを感じ取っていただきたいです。