監督が望む「感情的な莉奈」をそのまま演じた
――映画『生きててごめんなさい』では、黒羽麻璃央さんが演じる園田修一と傷つけ合いながらお互いと向き合っていくヒロイン・清川莉奈を演じています。脚本を読んだ印象はいかがでしたか?
穂志もえか(以下、穂志) 最初に脚本を読んだ時はオーディションの前でまだ第2稿くらいでしたが、すごく魅力的な内容だったので「私がやるべき役!」と強く思いました。脚本としては、そこから肉付けされ、最終的には盛りだくさんな内容になりました。
――最初の脚本とはどう変わりましたか?
穂志 莉奈が修一から受ける当てつけの内容も変わり、物語の結末が希望の見えるものに変わりました。
――冒頭はコメディタッチでしたが、途中から一気にシリアスな展開になります。二人の関係に理解できる部分はありましたか?
穂志 映画なのでデフォルメされている部分はありますが、似たようなことを感じたことがあります。二人の関係の根底にある「共依存」と、煙たがられがちな「莉奈の存在」が、この作品で監督が描きたかったポイントだと感じました。“病んでいる”二人の関係は一筋縄ではいきませんが、お互いに認め合うというのが大事なんでしょうね。
――穂志さんが演じる莉奈は、喋り方や立ち居振る舞いなどにリアリティがあってゾクゾクしました。
穂志 撮影前に、監督とたくさん擦り合わせをさせていただいたので、撮影時には莉奈と自分の境目がないような状態になっていきました。心を丸裸にして、カメラの前に立っているだけに近い状態で臨んだので、演技とはいえ、みんなの前でこんなに泣きわめいて大丈夫かなと、少し恥ずかしい気持ちもありました(笑)。
――演じていくうちに次第に莉奈に同化していったのですか?
穂志 最初に監督が「感情的でいい。それが莉奈だ!」とおっしゃっていたので、徐々にというよりわりとすぐに同化していたと思います。「こんなに感情を発散させるような芝居をしていたら観客がおいてきぼりになるんじゃないか、莉奈のことを嫌いになっちゃうんじゃないかな」という気持ちもよぎりましたが、監督が「それでいい」とおっしゃってくださったので「私は莉奈の一番の味方!」という気持ちで撮影中は突っ走りました。完成した作品を観た今「やっぱり嫌われちゃうかも……」と感じているところです(笑)。
――莉奈の面倒な部分も生々しく描かれていますからね。
穂志 映画で描かれていない「なんで莉奈がこうなってしまったのか」という莉奈の人格の根本的な部分について監督とたくさん話し合って、その結果として演じた内容なので私はよく理解していますが、映画を観た方たちには、莉奈の表面だけを観て「この人苦手……」と感じてほしくないです。「莉奈がなぜこんな子になったのか」と想像力を働かせて観てもらえるとうれしいです。「どこに行っても浮いてしまう、なんで私ばっかりこんなに失敗するんだろう」と、感じることが莉奈は多いと思うのですが、それは私も全く同じです。シンパシーを感じる要素が多いので、余計に莉奈を嫌いになってほしくないのかもしれません。