リストカットが辛い現実を生き延びるための行為であるならば否定はしない

――フリーライターとして活動されるようになって、スケジュールの組み立てや時間配分など大変ではありませんでしたか?

姫野 すごく大変でした。初めの頃は、まだ会社員時代の生活時間が身体に沁みついていたので、朝6時半に起きて仕事をして、取材がなければ夕方5時に終わるというルーティンでやっていくことができたのですが、次第に時間がずれていきました。

――様々なジャンルの仕事をこなしていく中で、特にどういう仕事にやりがいを感じましたか?

姫野 駆け出しの頃は楽しさを感じる余裕もなく、「稼がなきゃ」という想いだけで請けた仕事を必死にこなしていました。ライターとして活動するようになって2年ほど経った頃に、自らの性被害をモチーフにした映画『ら』の水井真希監督に取材する機会があったんです。それ以来、社会問題に関わる仕事を積極的にやってみたいと思うようになりました。

――発達障害をテーマとして扱うようになったきっかけは何だったのでしょうか?

姫野 ライターとして安定してきた頃に、テレビでたまたま発達障害が話題になっていて興味を持ちました。私自身も就活のSPIテストで数学が全くできなかった時以来、自分の発達障害の可能性を疑っていたので、それならば当事者を取材してみようと思ったんです。

――ご自身も発達障害と診断されたときはどう思われましたか?

姫野 指を使わないと計算できないことや、疲れやすくて会社員が続かなかったことに納得がいきました。苦手なことはやらないという決心ができて、むしろ安心しました。同時に、今までどう頑張ってもできないことを叱ってきた親に対して少し腹が立ちました(笑)。

――違和感を抱いても心療内科を受診するのはハードルが高く感じますよね。

姫野 そうですね。学生だと親の扶養に入っているので、病院に通っていることを隠すことができません。私も大学生の頃は心療内科に通っていることが親にバレて、「そんなところに行く必要はない」と言われてしまいました。

――病院に行きたくても行けない子はどうすれば良いと思いますか?

姫野 学校にスクールカウンセラーがいる場合は、まずその先生のところへ行ってみるのも良いかもしれません。私の場合は、友達に相談しました。メンタルヘルスの問題は、基本的に他者の介入がないと改善が難しいと思います。本や映画もきっかけになり得るかもしれませんが、今の時代ですとSNSで自分の好きな著名人の発言や生き方を見て真似をするということも一つの手ではないでしょうか。

――学生生活や家庭環境に悩む中高生におすすめの本がありましたら教えてください。

姫野 『「自分のために生きていける」ということ』(斎藤学/だいわ文庫)と、『共依存かもしれない――他人やモノで自分を満たそうとする人たち』(ケイ・マリー・ポーターフィールド/大月書店)です。この2冊を読んで以来、親の言う通りにならなくても良いんだと思えるようになりました。私は大人になってから読んだのですが、中高生の頃に読んでいれば良かったなと思います。

――最後に、生きづらさを感じるティーン世代の読者にメッセージをお願いします。

姫野 生きづらさを感じたら、身近に相談できる人がいる場合はぜひ相談してみてください。私は、リストカットという行為を推奨しているわけではありませんが、それが辛い現実を生き延びるための行為であるならば、否定はしません。私も中高時代は辛いことがたくさんありましたが、学校のクラスという閉鎖的な場所から出れば楽しいことがたくさん待っています。大学生活に期待して、なんとか乗り切ってください。今回のエッセイでは、ティーンの皆さんはまだ知ることがない大人の生きづらさも書いています。大人になったらどういう種類の生きづらさがあるのかも本書を通して知ってもらえたらと思います。

Information

『生きづらさにまみれて』
著者:姫野桂
発売日:2021年6月16日(水)
価格:1,500円+税
発行:晶文社

公式サイト

姫野桂(ひめの けい)

フリーライター

1987年生まれ。宮崎県宮崎市出身。日本女子大学日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。卒業後に一般企業に就職し、25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やWEBなどで執筆。専門は社会問題や生きづらさ。著書に『私達は生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン』。

Photographer:Masahiko Matsuzawa,Interviewer:Yukina Ohtani