“ありのままの自分でいられる人と場所を大切にしたい”という思いに共感

――新曲「CHERRY PIE」は、ドラマ「今夜すきやきだよ」のオープニングテーマとして初めて書き下ろしをされたそうですね。

甲田まひる(以下、甲田) いつもは曲を作ってからテーマを決めることが多いのですが、今回はドラマのオープニングということで自分の内面以外の要素もあり、ストーリーに共感できる部分も多かったので作っていて楽しかったです。

――原作の漫画は、第26回手塚治虫文化賞新生賞を受賞していますが、読んだ時の印象を教えてください。

甲田 仕事はできるけど家事全般が苦手で結婚願望が強い「あいこ」と、家事は好きで得意だけど、仕事はスランプ気味で恋愛に興味がない「ともこ」という、得意なことも悩むポイントも違う二人が、お互いにできることを補い合って生活するストーリーが新鮮でした。主人公はアラサーで、私よりも上の年代の話だし、共同生活を経験したこともないけど、「自分をありのままでいさせてくれる人の存在や場所を大切にしたい」というのは、世代に関係なく誰もが共感できることだなと思ったので、「CHERRY PIE」にはその思いを込めました。

――曲はどのように制作されたのですか?

甲田 「CHERRY PIE」というタイトルが先にできて、次にサビが決まりました。タイトルは、本当に好きなものを前にすると自然に頬が赤らんでしまうことがあると思いますが、二人の嘘がつけない純粋な思いを頬の色とチェリーの赤い色に見立てました。ドラマのタイトルが“すきやき”で、曲名はお菓子ですが(笑)。漫画のエピソードとリンクさせて、あいこがともこに不得意ながらも料理をしてあげるシチュエーションをベースに歌詞を作っていきました。

――歌詞に寄り添った曲調もかわいらしいです。

甲田 ドラマが明るいトーンで、主人公の二人はそれぞれ悩みながらも最終的には「こうしたい」と決断した道に進むので、ストーリーに寄せて明るいトラックや、キャッチ―なメロディで、アップテンポで前向きになれる曲にしました。

――前作の3rdデジタルEP「Snowdome」でタッグを組んだSUNNY BOYさんがアレンジを担当されています。そもそも、「Snowdome」でSUNNY BOYさんにアレンジを依頼したのはなぜですか?

甲田 1stデジタルEPの「California」は、自分がやってきたジャズやヒップホップといった音楽的要素を曲に落とし込んだ自己紹介的な作品でしたが、16歳くらいのころから「ポップソングが歌いたい」と思うようになり、「Snowdome」でより自分のやりたい楽曲を実現するために、安室奈美恵さんやBTSさんなど、国内外のメジャーで活躍しているアーティストの楽曲に携わっているSUNNY BOYさんにアレンジをオファーしたんです。

――「CHERRY PIE」でのSUNNY BOYさんのアレンジはいかがでしたか?

甲田 前回はゼロからの作業をお願いしましたが、今回はメロディとコードとビートをある程度自分で作って、それをもとにしてSUNNY BOYさんがデータを貼り替えたり、パソコンで音色だけクオリティーの高いものに変えたり、最後の大サビの部分を組み立てたりしました。前作と同様、私のアイデアやニュアンスを「こういうことだよね」と汲んでいただけて、すごくスムーズで楽しい作業でした。

――連続で共同作業をするとニュアンスも伝わりやすいですよね。

甲田 はい。最初にやった時とは空気感も違うし、SUNNY BOYさんにも「作っていてすごく楽しい」と仰っていただけました。SUNNY BOYさんは、すごくおちゃめな方で、即興で作ったふざけた歌詞をメロディにのせて歌い始めたりするんです。私も乗って、二人して止まらなくなっちゃったりしたこともありました(笑)。

――「Snowdome」の時より歌い方が明るくなった印象です。

甲田 「Snowdome」は、バラードを歌うために息を多めにして、しっとりした感じの表現を意識したので、そうかもしれません。

――「Snowdome」のカップリング曲「SECM (Sausage Egg & Cheese Muffin)」はゴリゴリのヒップホップで、「CHERRY PIE」はもっとポップですが、振り幅は意識しましたか?

甲田 振り幅はあまり意識していませんが、常に小さくまとまらないように意識しています。