急性骨髄性白血病と闘う主人公を体当たりで演じた映画『いちばん逢いたいひと』

――今回、映画初主演でしたが、最初にお話を聞いた時はどういうお気持ちでしたか?

倉野尾成美(以下、倉野尾) 最初は「え?本当ですか?」という感じでした。驚きのほうが大きかったですね。でも、やりたかったことの一つだったので、すぐに「出てみたい」と思いました。

――主演のプレッシャーはありましたか?

倉野尾 先にキャストのお名前を聞いて、こんなすごい方々と共演するんだと。「私で大丈夫ですか?」という気持ちになりました(笑)。

――作品のトーンは明るい展開ですが、重いテーマを扱っています。急性骨髄性白血病と闘う主人公を演じることについてはいかがでしたか?

倉野尾 難しい役柄でしたが、作品を通して伝えたいメッセージがすぐに分かったので、何とかそれが伝わるような演技を心がけました。

――プロデューサーの堀ともこさんが本作品にかける思いを事前に聞かれたそうですが、どんなお話でしたか?

倉野尾 堀さんは撮影現場でも常に付き添ってくださいました。最初の本読みの時に「全部ではないけれど、私と私の娘が体験した実話です」と聞かされて、本当に長い時間お話を伺い、堀さんの熱い思いをすごく感じました。「自分もこの役を通じてその思いを伝えられれば」と思い、気が引き締まりました。

――その一方でコメディー要素の強いシーンも多かったですが、脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか?

倉野尾 ヒューマンドラマの中に「え?」って思うくらい面白いシーンがあって。おどけたシーンでは「どう演じたらいいんだろう?」と疑問に思うほど、色々な描写がありました。難病ものはどうしてもシリアスになりがちですが、監督の丈さんが「あまり重くなり過ぎないように作りたい」と仰っていて、「素のままで演じていいよ」と言ってくださいました。

――主人公の楓は屈託のない前向きな性格の女性ですが、演じてみてご自身と共通する部分や共感できる部分はありますか?

倉野尾 みんなそうだと思いますが「支えられて生きている」という部分は、楓ちゃんも私も同じだと感じました。でも楓は常に心の奥でそれを感じていて、クライマックスのシーンのセリフでもその気持ちがストレートに溢れています。なので私も「人からつないでもらったものを、また人につなげる」という感覚で演じました。「支えられて生きている」とは誰もが思うことですけど、それを楓は誰より深く感じていて、そこは意識して演じたところです。

――子ども時代の楓を演じた田中千空さんと会う機会はありましたか?

倉野尾 本読みの時くらいです。撮影現場では千空ちゃんのシーンが終わると入れ替わりで私が本番ということが多くて。でも、本読みでは圧倒されました。セリフを読むだけで「ああ、こういう感情で演じるんだ」と伝わって、立ち会えて良かったです。

――同じ楓を演じる上で、お互いに役に寄せ合うことは意識しましたか?

倉野尾 実は「ここはこうしようね」という話はしておらず、お互いに寄せていく感じでした。でも、どちらかといえば私のほうが刺激を受けていると思います。千空ちゃんが演じてくれた子ども時代の楓のキャラクターをうまくつなげなければと思いました。

――画面からも楽しさが伝わってきましたが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

倉野尾 監督の丈さんがすごく面白い方で、もちろん監督の顔を見せる時もありますが、現場の空気をとても明るくしてくださいました。初日こそ「映画監督って怖い人かな」と思って、人となりも分からないので探り探りでしたが、撮影の間にどんどん人柄が分かり、リラックスして撮影に臨めました。

――監督ご自身も演者として本作に出演されていますが、演出方法は分かりやすかったですか?

倉野尾 そうですね。私が役者としてまだまだ未熟で「どう演じたらいいんだろう?」って思っている時に、それを察してアドバイスをくださることが多かったです。私が聞きに行く前に丁寧に教えてくださり、全体をよく見ていらっしゃるなと思いました。