過去の経歴とは関係ない、今のちひろさんの魅力を見てほしい
――出演映画『ちひろさん』はコミックが原作です。事前に原作は読まれましたか?
豊嶋花(以下、豊嶋) 読みました。ちひろさんに出会った周りの人たちが変わっていくのが素敵だなと思いました。周りの人が自由になって、心を開放したりできるようになっていくのがすごいなぁと。ちひろさんを演じる有村架純さんご自身もすごく素敵な方で、周りを惹き込む力があるところは共通するんだろうなと思いました。
――作中では何度も食事シーンがありましたが、実際に食べていたのでしょうか?
豊嶋 はい。ただ私は食べることが大好きなんですが、悩みを抱えるオカジを演じている時は、本来なら美味しいだろうなという食べ物でも、あまり美味しく感じなかったんです。ちょっと無味に感じるというか、笑顔になれないところがあって。ただ小学生のマコト(嶋田鉄太)と一緒に食べたおにぎりは、美味しいと感じられて印象的でした。
――それだけ役に入り込めていたんですね。おにぎりを握るシーンもありましたが、普段も自分で料理は作られたりするのでしょうか?
豊嶋 最近は忙しくてできていないんですが、一時期は母に負担をかけたくなくて、高校に持っていくお弁当を自分で作っていました。
――オカジは友達に本音を言えない女子高生ですが、豊嶋さん自身と共感するところはありますか?
豊嶋 私はやりたいことは言えるんですが、やりたくないことはあまり言えない。わりとイエスマンなんです(笑)。そういった部分ではオカジに共感できます。ただ私の場合は時にリーダーシップを発揮するというか、「次こうしようよ」と積極的に言うことはあります。
――ロケ地は静岡県だったそうですが、演技に影響した部分はありましたか?
豊嶋 のこのこ(※作中の弁当屋「のこのこ弁当」)のロケ地は、本当の商店街だったんです。リアルな風景を切り取った感じがすごくあって、演技しやすかったです。
――撮影の季節はいつでしたか?
豊嶋 3月です。寒かったですが、思い返せば素敵な経験だったなと思います。
――今泉力哉監督の演出はいかがでしたか?
豊嶋 上手く「リアル」を切り取る監督で、アドリブのシーンをたくさん使ってくださいました。マコトとじゃれあっているシーンもそうですし、おにぎりを食べているシーンもワンカット分10秒ぐらいずっとアドリブで。マコトと一緒に外から2階に住んでいるちひろさんを呼ぶシーンも全てアドリブなんですけど、それもそのまま。演技を演技とせず、リアルとして切り取るのがさすがだなと思いました。
――今泉監督は長回しを多用するので、いつもとは違った緊張感があると言う役者さんも多いです。
豊嶋 私は逆に、楽しくできました。わりと演技については任せてくださって、たまに入る指示も的確で、とても分かりやすかったです。
――特に印象的なシーンは?
豊嶋 ちひろさんのおかげで変化した人たちが屋上に集まる長回しのシーンは、すごく楽しかった思い出です。撮影の方法的に、「自分の番で失敗したらどうしよう」という緊張感はありましたが(笑)。
――ティーンに向けて、『ちひろさん』の見どころを教えてください。
豊嶋 作品の題材としては「主人公が元風俗嬢」と聞くとインパクトがあると思いますが、あまり先入観を持たないで観てほしいです。過去に何をしていたかとかは関係なく、今のちひろさんが魅力的なのでそれを見逃さないでもらいたいなと。作中で描かれている学校でのオカジの友達関係も、すごくリアルで共感できると思います。