MVとは違うアプローチがしてみたかった
――映画『イカロス 片羽の街』を制作することになった経緯を教えてください。
秦基博(以下、秦) 「イカロス」はできた時から映像的な曲という印象だったので、MVとはまた違うアプローチに挑戦してみたくなり、映画を元にして主題歌を作るのとは逆に、歌を元にして映画を作ってみたら今までにないものが生まれるのではないかと企画が立ち上がりました。
――曲自体はかなり前に完成されていたのですか?
秦 メロディーとサウンドはある程度できていて、歌詞は映画の製作途中に完成しました。楽曲のテーマは「喪失」と決めていたので、監督のみなさんには「喪失」と「再生」をテーマにしたドラマを描いていただきました。
――児山監督はどのような形でオファーを受けられたのですか?
児山隆(以下、児山) 「秦さんの楽曲を元にしたオリジナルのストーリーを作っていただけませんか」とお声をかけていただきました。偶然ですが、個人的にここ1年くらい「人生は喪失の連続」と考えることがあったので、「喪失」はいずれどこかで作品に取り入れたいと思っていた要素でした。そう思っていたところに、ストレートなテーマをいただき、思い切り向き合うことになりました。
――監督同士で話し合いをすることはありましたか?
児山 特にはなかったですね。お互いに干渉し合わずにそれぞれの作品を作るために、プロデューサーさんの配慮もあったかと思います。
――ライバル心みたいなものはありましたか?
児山 「俺みたいなものが勝手に入ってきて秦さんが作った世界を汚しちゃいけない」と、作品に取り組むのが精一杯で、そんな感情は生まれませんでした。まあ、勝手に入ったのではなく、呼ばれたんですけどね(笑)。
――秦さんは、ご自分の曲から3つの作品が生まれたことをどう思いましたか?
秦 驚きました。「ここまで違う作品が生まれてくるのか」と新鮮な感覚でした。
――映画は児山監督の『トイレのハナコ』で始まり、『豚知気人生』(枝優花監督)、『十年と永遠』(中川龍太郎監督)の順番で、スムーズに繋がっていきます。もともと順番は決まっていましたか?
児山 プロデューサーの皆さんで、監督のキャラクターを考えて順番を決めていたようですが、最終的には脚本が上がったタイミングで変更されたようです。