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つながりをより深く豊かなものにしたかった

――『はためき』はodolにとって2年8カ月ぶり、4枚目のアルバムになります。収録されている全9曲のうち7曲は去年までに発表済みのものですが、一つのアルバムの流れの中で聴くことで、これまでの楽曲にも新たな気づきが得られる、そんな作品として仕上がっていると感じました。今回、アルバムを制作する上で意識していたことありますか?

森山 おっしゃっていただいたように『はためき』を作ろうと思った段階で曲はほとんど出揃っていたんですけど、アルバムとして無理やりまとめるようなことはしたくないと思っていました。別にまとめなくてもいいわけですし、そもそもアルバムを作ることを先に考えて曲を作ってきたわけではありません。でも、まとめる理由として一つ共通項みたいなものが見つかったら、それを作品にできるかなとは考えていました。

――その共通項が見つかったということでしょうか?

森山 そうですね。この2年8カ月でずっと考えてきたことや、作ってきた曲を振り返ったときに、人間関係や社会など、コミュニティーのことを歌っている曲も多かったし、僕たち自身もそういうことに向き合っていた時期でした。それとこの1年はコロナが重なったことで、社会のこと、人との距離感というのをどうしても考えざるをえなかった。その部分が全体を通した共通項としてまずあるなと思ったんです。それを見つけることが出来たので、糸と糸との折り重なりが一枚の布となるイメージを社会のように例えつつ、それが風に揺れ動いているさまをアルバムタイトルに込めました。これも無理やり意味を付け加えたというよりは、その中から見つけ出した言葉が“はためき”だったんです。

▲森山公稀

――今作はタイアップ曲も多く収録されていますが、曲作りにおいて変化はありましたか?

森山 タイアップの曲は特に変化がありましたね。これまでもodolのメンバーだけじゃなくて、マネージャーや会社の方など、関わってくださる方はたくさんいました。でも、「ここのセクションはいらないんじゃないか」とか、「この歌詞はもうちょっとこういうふうがいいかな」とか、楽曲に対する具体的な意見をメンバーと同じように外部の人とする機会は少なかったです。タイアップはタイアップ先の作品が第一にあります。そこに「どうアプローチしていくか」をプロデューサーや監督と話し合います。そこが普段の楽曲制作との大きな違いですが、僕たち自身はすごくポジティブに取り組めました。

――ミゾベさんは作詞の部分で違いはありましたか?

ミゾベ タイアップ先がそもそもどんなものを作ろうとしているのかというのを僕も汲み取るというか、理解してから作っていく。その出発点の違いが大きいですね。その後の作業は、自分一人で作っているときとそこまで大きく変わらないです。もともと自分たちだけで音楽を作っているときは、0から1にする作業を自分たちでやらないと曲ができませんが、依頼をいただく時点でそれが発生しているので、そこが一番の違いだったと思います。

――楽曲制作では人とのつながりをより意識したとおっしゃっていましたが、作品のリリース、プロモーションに関して新たに試みたことはありますか?

森山 新たにというか、より推し進めた部分はあります。どのアーティストも同じだと思うのですが、今はなかなかライブができない。僕たちはもともとライブの本数が多いわけではなかったんですけど、やっぱりライブはそこで直接聴いてくれる人とのコミュニケーションがあり、すごく大切な時間でした。そんな今、デジタルに加えてCDというフィジカルなものとしてリリースすることで、このつながりをより深く豊かなものにしていけたらと思っています。そんな取り組みのなかの一つとして、僕たちはライナームービーと呼んでいるんですけど、一曲一曲にライナーノーツの動画バージョンみたいなものを作っています。そういうふうに聴いてくれる人と一緒に、アルバムの収録時間を超えた体験を共有することができないかなと思っていたり。音楽の新しいコミュニケーションの形を模索しながらやっている最中です。

曲作りは余白を残すようにしている

――お二人は「note」などのプラットフォームでも曲に込めた思いなどを記していますが、曲を聴いてくれる人に対して伝えたいと思っていることはなんですか?

ミゾベ 曲に対してプラスの感情になるのか、マイナスの感情になるのか、人それぞれると思うんですけど、その感情とか受け取り方を限定したくないです。聴く人みんなにバックグラウンドがあるから、「この曲はこういうものだ」と限定するのではなく、一人ひとりが想像力を働かせて各々の解釈で受け取ってほしいという思いがあります。「note」に書いてあるのは僕が思ったこと、森山が思ったこと、他のメンバーが思ったことでしかないので、捉え方は人それぞれだと思っています。

――考えるきっかけになればと。

ミゾベ 曲を作るときも余白を残して作ろうとしています。むしろ世の中の流れも含めて、考え方が限定的になってしまうのが怖いなという部分もあります。それはアルバムを作ったり、話し合いを重ねたりして、ここ数年で言葉にすることができました。

――odolさんのふだんの楽曲制作についてもお話を伺いたいのですが、作詞作曲はどのような流れなんですか?

森山 先に僕が曲を作って、そのメロディをもとにミゾベが歌詞をつけていきます。

――ミゾベさんはそのメロディから想像を膨らませていく。

ミゾベ 森山のデモはピアノの旋律だけとかラフなものではなく、ほぼ完成に近くて、あとは歌が入ればリリースできるくらいの完成度のものをあげてきます。僕はそこに歌が入った状態のものを想像して、徐々に形にしていく。そうして半分くらい歌詞が組みあがった段階で、実際に家で仮歌を録音したりして、この方向で違わないかと森山と意思疎通しながら作業を進めていきます。

――森山さんはミゾベさんから「この方向性でどう?」と歌詞を出されたとき、「違うかな」と思うことはあるんですか?

森山 「全然違うよ」っていうほどの強い判断はできないですね。僕も正解が見えているわけではないから。でも、感覚的に違和感があるときとか、こう仕上げたいなと思っていた方向性とあまりにも違うときは、ミゾベの中ではできていたものを一回取っ払ってもらって、また作り直すということもあります。逆に、最初に書いてもらったものが直すことなく歌詞になっている場合もある。そのときも「絶対これがいい!」というよりも、だんだんと腑に落ちてくる感じです。

大学時代に出たFUJI ROCKで初めての手ごたえ

――ここで話を変えて、お二人の学生時代のことをお聞きしたいと思います。お二人とも福岡県出身ですが、出会いはいつになりますか?

ミゾベ 中学2年生のときです。

森山 クラスが一緒になったんです。

――そのときからお互い音楽には目覚めていたんですか?

森山 僕はピアノを習っていたくらいで。その時点では音楽をやっていこうとかは全然思ってなかったですね。ミゾベも音楽をやっていたというわけではなくて。普通の友達グループの一員として昼休みにふざけていたような仲です(笑)。

ミゾベ 僕がサッカー部で森山がバレー部だったんですけど、高校に入ったらバンドをやりたいなと思っていました。サッカーでは実力的に自己実現するには難しいなと気づいていたので(笑)。それで周りを見渡したときに、「森山、ピアノ弾けるじゃん」と思って、誘ったんです。

――ミゾベさんから森山さんはピアノが弾けるから一緒にバンドが組めたら、という話が出ましたが、森山さんはミゾベさんの歌や作詞の才能などを感じていたんですか?

森山 歌声を聴いた記憶はないけど……。カラオケとかには行ってたかな?

ミゾベ 行きましたね。当時のことを思い返すと下手だったなとは思うんですけど、森山は優しさからなのか、僕の歌を聴いて「衝撃を受けた」と言ってました(笑)。

森山 そうだっけ(笑)。

ミゾベ これは今でも覚えてます(笑)。その後、2年くらいはへこたれそうになっても、森山の言葉をモチベーションにしてたので(笑)。

▲ミゾベリョウ

――森山さんのその言葉がなかったら、今のミゾベさんはなかったかもしれないと(笑)。その当時聴いていた音楽も共通していたんですか?

森山 してなかったですね。好きな音楽も共有してなかったし。そのころはスガシカオさんをよく聴いていて、バンドという形態自体にはあまり興味がなかったし、音楽をやっていく気持ちもなかった。バンドに誘われてからは自分も曲を作るようになって、調べていくうちに好きな音楽が見つかっていく感じでした。

――その後、お二人は別々の高校に進学されますが、それぞれ音楽系の部活に入ったりされたのでしょうか?

ミゾベ 僕は学校に軽音部みたいなものがなかったので、入らずというか。

森山 僕も最初は「ミゾベとバンドをやるから」と思って入っていなかったです。高校の途中から軽音部に顔を出したり、同世代の人とバンドを組んでみたりしました。

ミゾベ 当時は「軽音部に入ったら森山が取られる!」と思っていたので、「入るな!」と言ってました(笑)。ただ、森山はそのときからストイックで、「軽音部に入ったらそこでも練習できるから」みたいに説得されたんです。

森山 そのときはバンド活動が無性に楽しかった時代で、コピーも含めていろいろなバンドを組んでましたね。

――ミゾベさんも同じように同世代の方とバンドを組んでいたんですか?

ミゾベ 先輩とコピーバンドみたいなものを組んでいました。

――そのときからポジションはボーカルですか?

ミゾベ そうですね。ボーカルがやりたくてバンドをやっていたので。今思うとかなり豪胆ですけど(笑)。

――現在のバンドメンバーに出会うのはいつになるんですか?

ミゾベ 僕が大学進学で森山よりも一年先に東京に来たときに、「森山ってやつが後からくるから、一緒にバンドやろうぜ」って、いろいろ声をかけていきました。

――メンバーが固まったときには目指していく場所や方向性なども決まっていたんですか?

森山 そこまで決まっていなかったですね。最初はとにかくバンドを続けたかっただけです。

――将来については考えていたことはありますか?

ミゾベ 僕はふつうに就職するんだろうなと思っていました。兼業という形でバンド活動をしている方もいっぱいいたから。でも、あまり将来のことは考えてなかったかもしれないです。単純に考えたくなかったんだとは思うんですけど。ライフステージが変わるとそれまでの価値観が根底からひっくり返ってしまう気がして。それを想像すると怖かったんだと思います。

森山 僕は藝大に行ったんですけど、そうしようと決めたのが高校3年生になってからでした。その後、浪人もさせてもらっているなかで、「藝大に行くなら音楽を続けよう」と決めていました。もちろん今のような形でやっていくところまで具体的には見えてなかったですけどね。それでも音楽がその時点で自分の中で一番続けてきたことだったし、大学まで行かせてもらうなら、これを仕事にしようかなと漠然と思っていました。

――お互いが改めてバンドとしての将来を考えたのは大学卒業の段階に入ってからでしょうか?

森山 その前に、2014年にodolを組んでから初めての夏に「FUJI ROCK FESTIVAL’14 ROOKIE A GO-GO」に出させてもらったんです。そのときが初めて「バンドでやっていけるかも」と感じた瞬間というか。

ミゾベ うん。

森山 大学1、2年生だったんですけど、怖いものなしというか、無敵状態だったので(笑)。そんな中で「FUJI ROCK」のライブが決まったりして、「やっぱりね」みたいな(笑)。

ミゾベ 20歳でしたからね(笑)。

森山 そういう感じで「これはいける」と思っていたんですけど、当然そこから挫折というか、プロの世界を目の当たりにしながら現実的なことも考えていくんです。最終的に決めないといけないとなったのは、周りが音楽をやめて就職していくタイミングだったかなと思うんですけど……僕らは大学にけっこう居座っていて(笑)。

ミゾベ 休学もしていたからね。そのせいか、いまだに卒業できなかった夢を見ます(笑)。

それぞれの受け取り方でライブを楽しんでほしい

――7月に兵庫県で開催される「ROKKO SUN MUSIC 2021」に出演が決定しています。久々の有観客での野外フェスになりますが、どういったライブにしたいですか?

森山 これも先ほどの話と一緒で、僕たちは楽しみ方や過ごし方を限定したくないんです。ライブもそこにただ居場所があることが大事だと思っていて、聴いてくれる人が、その人なりに楽しんでもらえるように、僕たちも僕たちなりに楽しんでいきたいなと考えています。

ミゾベ これはodolとしてどんなライブを作りたいかという部分で話し合いを重ねた結果です。だから聴いてくれる皆さん、それぞれの受け取り方で楽しんでいただけたらと思います。

――最後になりますが、人間関係や進路、将来のことで思い悩んでしまうことが多い若い世代に向けて、お二人からメッセージをいただきたいです。

森山 最近、僕の周りで転職や結婚など、人生の中で大きな選択をする友人が多いんです。そしてそれを後悔してしまうときがあるという話もよく聞きます。僕もそうですけど、「就職した方がよかったかな」と思ったこともあるし、選ばなかった道のことを想像して不安になることがよくあります。10代の方もいろいろなタイミングで同じようなことが起こると思うんですけど、自分がよく考えてその選択肢を選んだのであればそれを楽しむだけで、間違っているということは絶対にないと思っています。自分が選んだことなら、すべてが正しい選択肢だから、それを強く伝えたいなと思います。

ミゾベ ……30秒だけ考えさせてもらってもいいですか?

森山 今けっこう時間あったけど(笑)。

ミゾベ いや、(森山の言葉を)ちゃんと受け止めてたから(笑)。

森山 でも、10代といっても結局僕たちも日々悩んでることは変わらなくて。僕もそのころからずっと同じようなことで悩んでるなって思うから。だから、先輩としてというよりも同志としてのアドバイスです。

ミゾベ 10代の自分のことを思い出していたんですけど、自分のこと全部が大好きって思っている人は少ないんじゃないかな。自分の「こういうところが嫌だ」とか、「こういうところが好きだ」というところを繰り返しながら生きて、なりたい自分になれるように努力していくと思うんです。その繰り返しのなかで、自分のことが好きじゃないと不安になったときは、周りの人のことを想像してほしいです。今、自分は大好きな人たちと付き合ったり関わり合ったりしている、そのつながりがあるのは今の自分がいるから。そういうふうに考えていくと自分自身も愛せようになるのかなと思います。

Information

4th Album『はためき』
2021年6月9日(水)リリース

・CD:紙ジャケット仕様 / ¥3,080 (税抜価格¥2,800)
・配信:各ストリーミングサービス / ダウンロード

【収録内容】
1. 小さなことをひとつ (※radikoブランドムービーオリジナルソング)
2. 未来
3. 眺め
4. 身体 (※アース製薬「温泡」TVCMソング)
5. 虹の端 (Rearrange)
6. 瞬間 (※映画「サヨナラまでの30分」劇中曲セルフカバー)
7. かたちのないもの (※UCC BLACK無糖「#この気持ちは無添加です」キャンペーンソング)
8. 独り
9. 歩む日々に (※森永乳業コーポレートムービーオリジナルソング)

odol

アーティスト

福岡出身のミゾベリョウ(Vo.)、森山公稀(Pf./Syn.)を中心に、井上拓哉(Guitar)、Shaikh Sofian(Bass)、垣守翔真(Drums)で2014年に東京にて結成した5人組。ジャンルを意識せず、自由にアレンジされる楽曲には独自の先進性とポピュラリティが混在し、新しい楽曲をリリースする度にodolらしさを更新している。近年は、アース製薬「温泡」、映画「サヨナラまでの30分」、UCC BLACK無糖、radikoなど、様々な企業やクリエイターからオファーを受け、立て続けに書き下ろし楽曲を提供している。東京藝術大学出身の森山公稀が全楽曲の作曲を担当。ソロ名義でも舞台や映像作品の劇伴、また他アーティストへの楽曲提供、プロデュースなども行なっている。

Photographer:Toshimasa Takeda,Interviewer:Tetsu Takahashi