アーティストのふかわには気を遣う

――2021年2月にファーストシングル「夏も冬も」をリリースしてから、2年ぶりのシングルになります。

ふかわりょう(以下、ふかわ) 1曲目をリリースして満たされたのか、その後、ういんたぁ~すの活動が話題になることがなく、怖くて言えませんでしたが、心のどこかで次回があればと思っていました。

三村マサカズ(以下、三村) 俺らはアーティストじゃないから、音楽のことは忘れちゃうんだよね。

大竹一樹(以下、大竹) そもそも次を作らなきゃという感覚がないんです。そういうシステムがないから。

三村 スタッフに言われて、「あ、そういえばやってないね」ぐらいの感覚。

――YouTube「さまぁ~ずチャンネル」にふかわさんがゲストでいらした時もそういう話題にはならないのですね。

三村 ゲストの時は芸人のふかわだから。

大竹 ネタを言ってスッキリして帰っていっちゃうんですよ(笑)。

三村 曲の話になると、ふかわはアーティストという立ち位置になるから、気を遣って気軽に言えなくなる。

大竹 頑固なふかわが登場するんです。

ふかわ 自覚はないんですけど、前回はお二人に相当気を遣わせてしまっていたようです(笑)。ある意味、ういんたぁ~すの活動は、さまぁ~ずさんお二人による、末っ子の僕に対する思いやりの時間なんです。

三村 なぜか末っ子に気を遣うというね(笑)。

――改めてデビュー曲「夏も冬も」を聴いた時の印象を教えてください。

三村 メロディーがすごく良かったし、語りの部分もあって「ああ、いいじゃない」と思いましたね。

大竹 でも頑固だから、語りのところも一切直させてくれなかった。「俺の語りだ!」って言ってもダメ。「何でも言ってください」って言われたから言ったのに「でも、それは」って丸め込みに来る(笑)。だから、ふかわが計算した通りにやりました。

ふかわ (笑)。多数決ではいいものができないという一般論があるとしても、あの時の私の独裁ぶりは酷かったですね。そういう意味で2曲目のチャンスを与えていただけたことは本当にうれしかったですし、今回はA案がダメならB案、それでもダメならC案と、皆さんの意見を聞きながら作り上げていこうと思いました。

三村 今回の曲も「A案とB案、両方聴かせてよ」と言ったらまた頑固が出て。「そういうんじゃないです。A案がダメだったら捨てます」って。

大竹 2案同時に作ると分散しちゃうみたいです。「こんな感じになりたくないから、ひとつの案に自分の100%をあてたい」と言われました。

――作品へのこだわりが強すぎる故に我を忘れてしまうのですか?

ふかわ お二人を前にして言うのもアレですが、さまぁ~ず愛が私を頑固にさせるんです。

――最初に提案したA案は「脱力中年」という曲でした。

ふかわ 残念ながら却下されましたが、あれはあれでいつかスキマスイッチさんのところに持っていってご提案したいと思ってます(笑)。

大竹 「脱力中年」は内容を我々に寄せすぎていましたね。

三村 自分の本には『ひとりで生きると決めたんだ』という詩的なタイトルが考えられるのに「脱力中年」って(笑)。パロディーだとしても、もうちょっと何とかなるんじゃないの?と期待値を込めました。

ふかわ さまぁ~ずさんは、ワードセンスが研ぎ澄まされているからライブの音楽のコーナーで歌う歌詞のセンスもすごいんですよ。「もしかしたら何か言われるかもしれないな」と思うような箇所は、案の定「違うぞ」と指摘を受けました。

――ブレスト(※ブレインストーミング)ではどんな意見を出されましたか?

大竹 世間の印象もそうですけど、ふかわはマニアック寄りだし、『ひとりで生きると決めたんだ』という本を出すような奴は世の中に媚びないから、「世間寄りにしてほしい」という注文だけはしました。

三村 八代亜紀さんの「舟唄」にある「沖のカモメ~」みたいに、急に流れが変わるところがほしいとリクエストしました(笑)。

大竹 「舟唄」は、あの部分の聴き待ちみたいなところもあるからね(笑)。

ふかわ ブレストを通じて、40代と50代では、見える景色、感じるものが違うんだなと実感できたので、次の案に行きやすかったですね。そういう意味で「脱力中年」は通過点として必要な曲でした。

――B案の「楽しく生きると決めたんだ」を聴いた時はどんな印象でした。

大竹 全然違う曲でした。でも、ストレートに「これいいね」って言っちゃうと、ふかわのスイッチが入っちゃうから、「いじる可能性はありますよ」くらいの「いいね」を出しました(笑)。

――これまで手掛けたふかわさんの路線とは違う楽曲ですよね。

ふかわ 自分も参加しているものだったりするので、お二人にいろいろ引き出してもらったところはありますね。

三村 初めてですよ、「これ違うから」って蹴られたの(笑)。

大竹 「世間に合わせたいい曲を作りたいなら僕に注文しないでください。すごい人いっぱいいますから」って自分で言っている奴なのに、ネタでは一貫して世間のあるあるネタをやってるんですよ!(笑)

三村 不思議なキャラクターで、意味が分からない。